異世界で遥か高嶺へと手を伸ばす 「シールディザイアー」

プロエトス

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第二部: 君の面影を求め往く - 第一章: 南の端の開拓村にて

◆設定集: モンスター紹介(第二部・弱)

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 例によって、マニア向けの設定集となっています。長めです。

 名前の表記は◆ 異世界語での呼称 /直訳気味な地球語名(シェガロ命名) ◆です。

 モンスターのランク付け――脅威度の目安は以下の通り。
 雑級: 子どもが遊び半分で対処できる生き物。もちろん、絶対安全というわけではないが。
 初級: 健康な大人であれば危険はほぼ無いだろうレベル。小型の野生動物など。
 下級: ある程度の戦闘力と武装が必要となる。一般人では死傷を覚悟しなければならない。
 中級: 兵士や狩人かりゅうどでもおいそれとは手を出せない冒険者案件のモンスター。
 上級: 町や村は壊滅しかねない。基本的に軍隊派遣。熟練の冒険者一行パーティーでも複数で当たる。
 特級: もはや天災。ヘタに手を出さず、速やかに避難し、通り過ぎるのを待つのが吉。

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◆ メリ /スライム (アメーバの親玉) ◆

 特徴:
 数センチから大きくても三十センチほど、止まった状態ではゆるい粘液質の団子を思わせるが、薄く広がったり、細く伸びたり、動けば形は一定しない。体色は様々、基本的に原色に近い。

 主な能力:
 腐食性の粘体により触れた物――小さな物は内部に包み込む――を徐々に溶解吸収してしまう。
 しかし、動きは極めて鈍く、物を溶かす速度も遅い。ネズミ一匹を溶かしきるのに数日かり。
 人が素手で触れても「ピリピリして割りと痛い」程度のダメージしか受けない。

 解説:
 極端な気候でなければ世界中どこにでも棲息せいそくしている不定形の雑級モンスター。
 壁や天井にも張り付き、狭い場所でも水中でも侵入、ありとあらゆる場所に出没することから、貴重品を損なわれてしまう被害が日常的に起こされている。
 一方で、大抵の有機物を跡形もなく溶かすため、廃棄物処理などに有効利用もされている。
 性質は臆病なため、動く物に対して自分から近付いていくことはない。

「トイレやゴミ捨て場を綺麗にしてくれるんだ。子どもたちが小遣い稼ぎに捕まえてくるよ」
『雨季の盛りには、本当にそこら中にいるよな』
「家の中に出られると困るから、虫けは欠かさないようにしないと」

 登場回(言及のみ): 第一部 閑話「世界の果てを目指し 後編 @冒険者たち」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8936826


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


◆ メリータナ /スライミースネイル(豊作マキマキ) ◆

 特徴:
 陸棲の貝、いわゆるカタツムリのたぐいである。
 直径六十センチもある巨大な殻の形状はジャンボタニシに似る。色は薄いピンク――桜色。
 浅葱色あさぎいろをした軟体は粘度が高く、やや不定形で前項のアメーバの親玉に類似している。

 主な能力:
 広がって覆い被されば、数時間ほどで大抵の物は溶解吸収してしまう。
 皮膚に触れれば強酸性の薬品と同様、瞬く間に赤くただれることとなる。

 解説:
 温暖な気候の森林地帯であれば、どこにでも棲息せいそくする巨大な巻貝型の初級モンスター。
 能力はそれなりに危険だが、極めて動きが鈍いため、一般人であっても討伐は可能。

 殻からほじくり出し、塩に漬け込むことで完全に無害化させることができる。
 大草原サバナで暮らす原住民の間では、古くから雨季の始まりを告げる縁起物として盛んに食され、その際、残った殻は灰にして草原にかれていた。

 しかし、シェガロによって貝殻を高品質な石灰肥料として利用できることが判明。
 現在のエルキル領では、毎年、休耕地の土壌改良に役立てられている。

「どうしようかと思ってたんだよね。海は遠いし、ここいらの川には貝がいないみたいだし」
『肥料として有名だからな、貝殻は。近場で手に入って良かった』

 登場回(言及のみ): 第二部 第一章 第十七話「真夜中の夢と雷鳴」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8961306


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


◆ ナシャック /デザートローカスト(イナゴ) ◆

 特徴:
 とりたてて変わったところもないバッタ類の昆虫。
 胴体に対して羽根と後ろ脚が大きめ。大きさは四から六センチほど。灰褐色。

 主な能力:
 風に乗って最大で数千メートル上空まで跳び上がり、一日で数百キロ進むこともある移動力。
 一日当たり、自分の体重と同じ量――二グラムほどのエサを喰う。
 植物性であれば大抵の物を食い荒らし、動物性でも繊維質せんいしつならばかじる。よく共食いする。
 触れたり噛まれたりした程度ではおかされないが、食性上、体内に毒素を溜め込むことが多い。

 解説:
 幼い子どもでも問題なく潰すことができ、モンスターとは見なされない雑級の生物。
 だが、特定条件下で爆発的に増殖し、数百万から数億にも達する群れを形成したとき、並みのモンスターでも匹敵し得ない蝗害こうがいと呼ばれる大災害を引き起こし、人の作った田畑など瞬く間に喰い尽くし、草原や森でさえも数日で禿げ上がらせてゆくこととなる。

 と、まぁ、基本的には現実のサバクトビバッタと大差ないので、詳細はリアルの方でどうぞ。

 ちなみに、本編で蝗害が発生した原因は、遙か南方の砂漠地帯で雨季の降水量が多すぎたため。
 繁茂はんもした草のおかげで大発生するも、数ヶ月後、それでも維持困難なほどに個体数が飽和ほうわし……。

「うーん……やっぱりモンスターではないんだ?」
『そのようだな。どこが雑級なのやら』
「明らかにそんじょそこらの上級モンスター以上の被害を出してくれてるんだけど」

 登場回: 第二部 第一章 第二十話「黙示録もくしろく奈落ならくより来たるもの」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8961310


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


◆ スーバ /バウンスバイター(口裂くちさけボール) ◆

 びっしりと歯が生え揃った大口だけを備える球状の初級モンスター。
 直径二三十にさんじゅっセンチほど、パッと見では巨大トマト、ないし赤いゴムボールといったところ。
 見た目通り、鞠《まり》のように地面を跳ね回り、生き物へと襲い掛かっていく。
 当然、噛みつかれればただでは済まないが、動きは遅く、一般人であっても比較的楽に対処可。
 こう見えて、実は植物のたぐいであり、森林や草原にしばしば群生している。食用には不適。

『食べられればかったのにな』
「食べられたら好かったのにね」

 登場回(言及のみ): 第二部 第一章 第三十二話「探索風景、実入り無し」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8998995


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


◆ ダオセック /ジャイアントテネブリオ(ゴミダマ) ◆

 大草原サバナ全域で非常によく見掛ける甲虫型の初級モンスター。
 姿形は、昆虫のゴミムシダマシを体長二十センチほどに巨大化させたものと言って良い。
 実のところ、数多くの種類がいるのだが、どれも習性や能力にはさしたる違いが見られない。
 共通する特徴は、でかい! にぶい! 硬い!
 枯れ草や苔類・菌類などをエサとしているため、モンスターと言っても基本的には無害。
 安全に討伐できる割りにやや大きめの魔石を持つことから、初級冒険者の間では人気がある。

「たまにやたら格好いい奴がいたりして侮れないよ」
『ちなみに、巨大ゴミムシもいるんだが、まったくの別物なので要注意だ』
「そっちは動きが速くて凶暴肉食の下級モンスターだね。高熱ガスブレスを吐いたり、ちょっと危険」

 登場回: 第二部 第一章 第三十三話「あかい霧を見下ろす幼児」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/8998996


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◆ ランメニープ /バロメッツ(牧羊樹ぼくようじゅ) ◆

 特徴:
 一見すると、地球の遊園地テーマパークにあるようなメリーゴーラウンド。
 地中へ根を張る太い樹木の幹を一本の支柱とし、頭上に艶々つやつやとした木の葉が重なり合うことで大きく広げられた傘を思わせる外観を成している。
 樹高は四メートルほど、天井部の傘は直径五六ごろくメートル以上もある。
 周囲には、幹から伸びる細長く伸縮性のある枝を引紐リードとして生きたヒツジたちが繋がれており、メーメー鳴きながら、ゆっくりと一方向へ歩き続けているが、これらはれっきとした果実である。
 地面から背中までの体高は平均八十センチくらい、黒や灰色の毛皮を持つカラクル種に似る。
 枝一本に一頭、一つの樹には数頭から十数頭が実っている。

 主な能力:
 中央の樹に水と光と肥料さえ与えておけば、果実のヒツジたちは飲まず食わずで成長する。
 食事以外に、排泄や繁殖も行わない。ただし、夜間の睡眠だけはしっかり取る。
 果肉――肉や内臓は動物のヒツジそのもの。果汁――血や乳にも特に違和感はない。
 とは言え、果皮――毛皮を含め、れる素材はどれもあまり高品質とは言えないようだ。

 解説:
 熱帯地域でごくごく稀に見つかる樹木型の初級モンスター。
 大抵は周辺にむ肉食モンスターの餌場となり、ほどなく絶滅してしまうため、かなり希少レア
 本編ではフィールド型ダンジョンに自生していたが、ダンジョン産は世界初の事例となる。
 この地方ではまだ実在すら知られていなかったので当然と言えば当然なのだが。

「ヒツジは年に二回くらい実るみたい」
『春から夏に一頭、夏から秋に一頭という具合だ。あまり果樹を増やせないことを考慮しても、収穫サイクルは悪くないんじゃないか?』
「できることなら品種改良に挑戦してみたいなぁ」

 登場回: 第二部 第一章 第四十二話「希望、シュールでナンセンス」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/869536688/458910885/episode/9023066

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