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第二部: 君の面影を求め往く - 第一章: 南の端の開拓村にて
第十四話: ダイニング、僕の姉と妹
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冒険者一行【草刈りの大鎌】の射手さんが僕の両肩に手を置き懇々と語りかけてくる。
「いいか、坊! それじゃダメなんだ! 俺にも上下に四人いるから気持ちはよっく分かる! けどな、奴らを同じ人間だと思っちゃなんねえ! 獣だ! 俺たちを食い物にする獣だと思え!!」
「いや、それは流石に言い過ぎなのでは――」
「へ、へへっ、今はまだ分かんなくても大丈夫だ。けど、覚えとくんだ。必ず分かるときが来る! 姉だの妹だのっつう生き物のヤバさがな!」
宴たけなわ、ぼちぼち僕の腹は膨れてきている。
同席する冒険者の皆さんはと言えば、すっかり酒が回っていた。
見れば、もう葡萄酒のピッチャーは空なのだが、ウェイター役のノブさんが追加を持ってくる気配がない……まぁ、これ以上、酔わせるのはまずいという判断だろう。
「す、すまねえなっ。こいつ、酒癖が良くなくってよ」
「おい、射手! 落ち着け。ひっく……俺が聞いてやるからガキに絡むな」
「だってよぉ……俺は坊が不憫でよぉ……オーイオイオぉぉ……」
斥候さんと戦士さんに腕を取られ、僕から引き離された射手さんは何故か泣き出してしまう。
「そこ! うるさいですわよ! ショーゴ、黙らせなさい! じゃなくてシェガロ!」
「クリス……。もういちいち言い直さないでショーゴって呼んだら?」
「それはちっちゃい子の言葉だもん! ですわ! あとクリスって呼ばないでちょうだい」
「クリスタ姉さんにママの真似は無理だと思うよ? 普通に喋れば良いのに」
「ふん! デビュタントまでにお嬢さまっぽくなっとかないと社交界でナメられちゃいますもの」
「まだあと四年もあるんだから――」
「もう四年しかないのよ!」
この国では、貴族の令嬢は数え年の十六歳から社交界デビューすることになっている。
それに先駆け、新たに十五歳となる新参令嬢――デビュタントのお披露目会を兼ねた大舞踏会【綻蕾の舞踏会】が、毎年の暮れ頃、王城で大々的に催されるのだ。
奇しくも姉クリスが十五歳となる四年後は、我がエルキル男爵家が貴族義務を免除されている期間の終わる年であり、また同時に我が領地の開拓支援が打ち切られる年にも当たっていた。
そのため、その年の【綻蕾の舞踏会】は、クリスだけでなく我が家の貴族デビューにも係わる、極めて重要な催しとなることが予想されているのだ。
『それまでに支援なしでやっていける領地にしておかないとまずいしな』
「お城に着ていく服なんて持ってないから新しく作らないとだし、どれだけお金が掛かるのやら。礼儀作法なんかより、そっちの方が問題だよ。ああ、困った、困った……」
「困った……じゃ済まねぇんですのよ! ド恥かくのは私なんですからね!」
「いや、語尾や名前の呼び方より先に改めるべき点はたくさんあるよね、姉さんの言葉遣いには」
そんな話をしていると、酔い覚ましの氷水を運んできたノブさんから声を掛けられる。
「クリスタ嬢、シェガロ坊、旦那たちがお呼びだぜ」
奥のダイニングスペースへ視線をやれば、グラスを手にするマティオロ氏と目が合った。
そろそろ冒険者を労う宴の席もお開きとなる頃合いか。
あとはいつも通りの家族の団欒を少し……といった流れかな。
「坊ーん! 頑張れ! 負けるんじゃねえぞぉお!」
「バッカ! 黙れ、お前! 酔いすぎだぞっ」
かなり出来上がってしまっている冒険者三人をリビングに残し、僕とクリスは席を立つ。
二人でダイニングの大きなテーブルの方へ向かうと、母トゥーニヤがジェルザさんとの会話を一時中断し、僕たちに空いている椅子を勧めてきた。
「ふふ、二人とも、もうお腹はいっぱいかしら? 一緒にデザートをいただきましょう」
「もしかしてお菓子っ!? やった! すごい! すごい!」
「「しゅごい!」」
うちではめったに食べられないお菓子が出ると聞き、姉妹たちのテンションが一気に上がる。
かく言う僕も、特に甘党でないにも拘わらず、期待に思わず口元がほころぶのを感じる。
そんな子どもたちの姿を眺め、母トゥーニヤの微笑みが深まった。
食事中のため、いつも彼女が身に付けているベールが今は外されており、四人も子を持つとはにわかに信じられない少女のように可憐な素顔と光り輝く銀髪もさらされている。
両側を挟む双子たち、その隣に座ったクリスと並べば、美人四姉妹として通じそうだ。
「あまいおかし?」
「やわらかいおかし?」
「うふふ、どんなお菓子かしらね~」
こちら側の女子どもが盛り上がっていくのに対し、テーブルの反対側は静かな様子だ。
父マティオロは、冒険者の魔術師さんと神術師さんを相手に酒を酌み交わしている。
三人とも口数は少なく、ちびちびスローペース、もう割りと酔っているのかも知れない。
母の相手から解放されたジェルザさんも気付けばそちらへ加わっていた。
――カチャカチャ。
僅かな後、横手奥のキッチンルームから一人の中年女性がのっそりと姿を見せた。
住み込みで家事をしてもらっている、我が家で唯一人のお手伝いさんである。
あまり見た目に特徴がない普通のおばさんといった印象だが、今朝のメニューを見てもらえば分かるように料理の腕は抜群、他の家事に関しても隙がない、言葉通りのハウスキーパーだ。
彼女はたくさんの小皿が載せられた銀色のお盆を両手で持ち、ゆっくりと運んできた。
そして、僕たち一人一人に前に小皿を一つずつ置いていく。
「……チョコだ」
「「わぁ! あま~い豆だぁ!」」
マティオロ氏と酒を飲んでいた神術師さんが俄に呟き、妹たちが歓声を上げる。
一つの小皿に三個ずつ入っているのは、チョコレート色をした二三センチほどの球体だった。
これまでにも何度か食べたことがあるので知っている。
煎ったヒヨコ豆にほんのり甘い花の蜜を絡め、爽やかなハーブとココアの粉をまぶした菓子だ。
『確かに、質素な生活の中だと、こういう甘味にはテンション上がるよな』
「うん、僕、これ好きなんだ」
と、手を伸ばそうとした瞬間!
――ひょい! ひょひょい!
いきなり伸びてきた手により、一瞬で三個のチョコ玉がさらわれていってしまう。
ノブさんやジェルザさんの不意打ちにさえ咄嗟に反応できた僕の目にも止まらぬ早業!?
それは隣でしれっとした顔をしているクリスと、いつの間にかテーブルの下に潜り込んでいた双子の妹ラッカとルッカの仕業だった。
暫し呆然と手を虚空に彷徨わせ……。
「……え? クリス、ねえ……僕の分だよ?」
「なんのことかしら? さくさく、もぐもぐ」
「ラッカ、ルッカ……それ、お兄ちゃんの……だよ?」
「「しょーご、もうたべたったの? はやーい! くすくすっ」」
強盗事件が起きたのはたった今。ですが、あくまで被害者の証言でしかなく、目撃者は一人もいませんでした。こりゃ、ちょっと立証は難しいでしょうねぇ。諦めるしかないんじゃ? まぁ、僕はそこまで甘い物が好きってわけじゃないですし、無ければ無いでも構わないんですけど……は、ははっ……。
そこへ、スッと小皿が差し出されてきた。
テーブルの向かい側から伸ばされている太い腕とゴツゴツとした手の主は――。
「坊、アタシの分をやるよ! 甘いもんは苦手でね!」
「ジェルザさん……うぅ……ありが……」
――ひょい! ひょひょい!
「…………」
「…………」
「……えっと」
「…………」
「……あの」
「……今のは坊の警戒不足だよ!」
この日、僕はお菓子を一つも食べることができなかった。
「いいか、坊! それじゃダメなんだ! 俺にも上下に四人いるから気持ちはよっく分かる! けどな、奴らを同じ人間だと思っちゃなんねえ! 獣だ! 俺たちを食い物にする獣だと思え!!」
「いや、それは流石に言い過ぎなのでは――」
「へ、へへっ、今はまだ分かんなくても大丈夫だ。けど、覚えとくんだ。必ず分かるときが来る! 姉だの妹だのっつう生き物のヤバさがな!」
宴たけなわ、ぼちぼち僕の腹は膨れてきている。
同席する冒険者の皆さんはと言えば、すっかり酒が回っていた。
見れば、もう葡萄酒のピッチャーは空なのだが、ウェイター役のノブさんが追加を持ってくる気配がない……まぁ、これ以上、酔わせるのはまずいという判断だろう。
「す、すまねえなっ。こいつ、酒癖が良くなくってよ」
「おい、射手! 落ち着け。ひっく……俺が聞いてやるからガキに絡むな」
「だってよぉ……俺は坊が不憫でよぉ……オーイオイオぉぉ……」
斥候さんと戦士さんに腕を取られ、僕から引き離された射手さんは何故か泣き出してしまう。
「そこ! うるさいですわよ! ショーゴ、黙らせなさい! じゃなくてシェガロ!」
「クリス……。もういちいち言い直さないでショーゴって呼んだら?」
「それはちっちゃい子の言葉だもん! ですわ! あとクリスって呼ばないでちょうだい」
「クリスタ姉さんにママの真似は無理だと思うよ? 普通に喋れば良いのに」
「ふん! デビュタントまでにお嬢さまっぽくなっとかないと社交界でナメられちゃいますもの」
「まだあと四年もあるんだから――」
「もう四年しかないのよ!」
この国では、貴族の令嬢は数え年の十六歳から社交界デビューすることになっている。
それに先駆け、新たに十五歳となる新参令嬢――デビュタントのお披露目会を兼ねた大舞踏会【綻蕾の舞踏会】が、毎年の暮れ頃、王城で大々的に催されるのだ。
奇しくも姉クリスが十五歳となる四年後は、我がエルキル男爵家が貴族義務を免除されている期間の終わる年であり、また同時に我が領地の開拓支援が打ち切られる年にも当たっていた。
そのため、その年の【綻蕾の舞踏会】は、クリスだけでなく我が家の貴族デビューにも係わる、極めて重要な催しとなることが予想されているのだ。
『それまでに支援なしでやっていける領地にしておかないとまずいしな』
「お城に着ていく服なんて持ってないから新しく作らないとだし、どれだけお金が掛かるのやら。礼儀作法なんかより、そっちの方が問題だよ。ああ、困った、困った……」
「困った……じゃ済まねぇんですのよ! ド恥かくのは私なんですからね!」
「いや、語尾や名前の呼び方より先に改めるべき点はたくさんあるよね、姉さんの言葉遣いには」
そんな話をしていると、酔い覚ましの氷水を運んできたノブさんから声を掛けられる。
「クリスタ嬢、シェガロ坊、旦那たちがお呼びだぜ」
奥のダイニングスペースへ視線をやれば、グラスを手にするマティオロ氏と目が合った。
そろそろ冒険者を労う宴の席もお開きとなる頃合いか。
あとはいつも通りの家族の団欒を少し……といった流れかな。
「坊ーん! 頑張れ! 負けるんじゃねえぞぉお!」
「バッカ! 黙れ、お前! 酔いすぎだぞっ」
かなり出来上がってしまっている冒険者三人をリビングに残し、僕とクリスは席を立つ。
二人でダイニングの大きなテーブルの方へ向かうと、母トゥーニヤがジェルザさんとの会話を一時中断し、僕たちに空いている椅子を勧めてきた。
「ふふ、二人とも、もうお腹はいっぱいかしら? 一緒にデザートをいただきましょう」
「もしかしてお菓子っ!? やった! すごい! すごい!」
「「しゅごい!」」
うちではめったに食べられないお菓子が出ると聞き、姉妹たちのテンションが一気に上がる。
かく言う僕も、特に甘党でないにも拘わらず、期待に思わず口元がほころぶのを感じる。
そんな子どもたちの姿を眺め、母トゥーニヤの微笑みが深まった。
食事中のため、いつも彼女が身に付けているベールが今は外されており、四人も子を持つとはにわかに信じられない少女のように可憐な素顔と光り輝く銀髪もさらされている。
両側を挟む双子たち、その隣に座ったクリスと並べば、美人四姉妹として通じそうだ。
「あまいおかし?」
「やわらかいおかし?」
「うふふ、どんなお菓子かしらね~」
こちら側の女子どもが盛り上がっていくのに対し、テーブルの反対側は静かな様子だ。
父マティオロは、冒険者の魔術師さんと神術師さんを相手に酒を酌み交わしている。
三人とも口数は少なく、ちびちびスローペース、もう割りと酔っているのかも知れない。
母の相手から解放されたジェルザさんも気付けばそちらへ加わっていた。
――カチャカチャ。
僅かな後、横手奥のキッチンルームから一人の中年女性がのっそりと姿を見せた。
住み込みで家事をしてもらっている、我が家で唯一人のお手伝いさんである。
あまり見た目に特徴がない普通のおばさんといった印象だが、今朝のメニューを見てもらえば分かるように料理の腕は抜群、他の家事に関しても隙がない、言葉通りのハウスキーパーだ。
彼女はたくさんの小皿が載せられた銀色のお盆を両手で持ち、ゆっくりと運んできた。
そして、僕たち一人一人に前に小皿を一つずつ置いていく。
「……チョコだ」
「「わぁ! あま~い豆だぁ!」」
マティオロ氏と酒を飲んでいた神術師さんが俄に呟き、妹たちが歓声を上げる。
一つの小皿に三個ずつ入っているのは、チョコレート色をした二三センチほどの球体だった。
これまでにも何度か食べたことがあるので知っている。
煎ったヒヨコ豆にほんのり甘い花の蜜を絡め、爽やかなハーブとココアの粉をまぶした菓子だ。
『確かに、質素な生活の中だと、こういう甘味にはテンション上がるよな』
「うん、僕、これ好きなんだ」
と、手を伸ばそうとした瞬間!
――ひょい! ひょひょい!
いきなり伸びてきた手により、一瞬で三個のチョコ玉がさらわれていってしまう。
ノブさんやジェルザさんの不意打ちにさえ咄嗟に反応できた僕の目にも止まらぬ早業!?
それは隣でしれっとした顔をしているクリスと、いつの間にかテーブルの下に潜り込んでいた双子の妹ラッカとルッカの仕業だった。
暫し呆然と手を虚空に彷徨わせ……。
「……え? クリス、ねえ……僕の分だよ?」
「なんのことかしら? さくさく、もぐもぐ」
「ラッカ、ルッカ……それ、お兄ちゃんの……だよ?」
「「しょーご、もうたべたったの? はやーい! くすくすっ」」
強盗事件が起きたのはたった今。ですが、あくまで被害者の証言でしかなく、目撃者は一人もいませんでした。こりゃ、ちょっと立証は難しいでしょうねぇ。諦めるしかないんじゃ? まぁ、僕はそこまで甘い物が好きってわけじゃないですし、無ければ無いでも構わないんですけど……は、ははっ……。
そこへ、スッと小皿が差し出されてきた。
テーブルの向かい側から伸ばされている太い腕とゴツゴツとした手の主は――。
「坊、アタシの分をやるよ! 甘いもんは苦手でね!」
「ジェルザさん……うぅ……ありが……」
――ひょい! ひょひょい!
「…………」
「…………」
「……えっと」
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「……あの」
「……今のは坊の警戒不足だよ!」
この日、僕はお菓子を一つも食べることができなかった。
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