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31話 シルヴィオ編
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アイシャがもうすぐソラリア帝国へ旅立つ。
ミラーネはそのことを知らずに最近姿を現さないアイシャに対して不満を漏らす。
「アイシャ様はシルヴィオを愛していなかったのかしら?あんなに仲が良かったのに、ね?」
ミラーネは今は俺が自分のことを好きになっていると思っている。
この女はどれだけ人の心を弄ぶんだ。
前世でも俺の心を操って、アーシャを愛していたのにミランダ(ミラーネ)に無理やり気持ちを向けさせて、俺はミランダを最後まで愛して死んでいった。
今の正常な俺ならわかる。
ミランダのことなんて愛していない。なのに俺はずっとミランダを愛し続けた。
アーシャが死んだ時も何も感じなかった。
今世でアイシャと再び出会ってからもやはりアイシャに対して愛を感じない。なのにどこか心の奥でアイシャを求めていた。
どんなに可愛らしく擦り寄って来てもミラーネに対して嫌悪感しか感じない。いや、早く殺してやりたい。
みんなの魔法がミラーネを殺せば簡単に解けてしまうならすぐにでも殺してやるのに。
多分簡単には解けない。
『青い薔薇』精霊がアーシャと共に作り出した奇跡の花。この花のおかげで魔法が俺も解けた。
ならばミラーネに青い薔薇をプレゼントすればいいのか?
俺はミラーネにプレゼントとして青い薔薇を渡している。
本当なら魔法にかかった者達に青い薔薇を渡すのが一番だが青い薔薇は誰にでもあげるわけにはいかない。王家が管理する貴重な薔薇。
ミラーネは何も知らずに「素敵な薔薇をありがとう」と微笑んで喜んで受け取ってくれる。
ミラーネが閉じ込めている精霊達が作った薔薇とは知らずに。
アイシャについては公爵家の屋敷に数人使用人として俺の手の内の者が働いている。
そこからの報告で、軟禁状態のままだと報告を受けていた。
魔法にかかり俺のことを愛している。
ほんの少し前まで俺のことを怖がり嫌がっていたのに。
あと少し………
そう思っていたのに。
ソラリア帝国から思ったより早く公爵一家が来ることになった。
本来なら婚約者だったアイシャも彼らと親睦を兼ねて会う予定になっていた。
婚約が解消されたり新たな婚約を結ぶことになったことや、神託が降りたことで国内がバタバタしているのもあり、ソラリア帝国からの視察は来年に伸びるはずだった。
そして婚約者になったミラーネもそれに合わせてソラリア語を勉強することになっていた。
「シルヴィオ、わたし、ソラリア語はほとんど話せないのだけど、挨拶くらいは向こうの言葉で話したいと思っているの」
ミラーネがそう言って、ソラリア語を今必死で覚えているのをなんとも言えない気持ちでみている。
アイシャはとても頑張ってソラリア語を覚えていた。学校の帰り一緒に馬車に乗り城へと向かう時、楽しそうに学校のことや登城してどんなことをしているのか話してくれた。
魔法にかかって俺のことを愛してくれていたあの日々。
ニセモノでもそこに愛はあった。ニセモノでもかけがえのない日々だった。
ミラーネがどんなに美しく俺に寄り添い甘えてきても、もう愛することはないし、気持ち悪いと感じてしまう。彼女の頑張りも冷めた目でしか見ることができない。
それでも愛しているフリをするために愛を囁き、彼女の唇にキスを落とす。
ミラーネは愛を確かめようとするかのように何度も俺からのキスをねだる。
視察に訪れたノエルを俺の部屋に案内する。
そしてノエルにすぐに事情を話した。
彼には俺の話を手紙で伝えてはいた。
アイシャを保護してもらうためだった。
でも実際にミラーネを見るまでは信じられない話だと思っていたらしい。
俺の口から話を聞いて、ミラーネを見て、そして俺の周りの澱んだ空気を感じ取り、ノエルは『僕がアイシャ嬢を守ればいいんだね?』と訊かれたので「頼む」と答えた。
俺が守りたい。でも、彼女を裏切り殺した俺が守ることはできない。
他人に頼むのもおかしい話だが、ノエルなら頼める。
ノエルもまた精霊に愛された愛し子だから。
「シルヴィオ、あのミラーネ様。魂が黒く染まって体から禍々しい悪気を出してるよ」
「ああ、そばにいるだけで気持ち悪くなる。でも俺は彼女を愛していることになっているから気づかないフリをしてるんだ」
「ミラーネ様にはあまり関わり合いたくないね。とても闇が深いね」
ノエルがここまで眉根を寄せて顔を顰める姿を俺は初めて見たかもしれない。
ミラーネはそのことを知らずに最近姿を現さないアイシャに対して不満を漏らす。
「アイシャ様はシルヴィオを愛していなかったのかしら?あんなに仲が良かったのに、ね?」
ミラーネは今は俺が自分のことを好きになっていると思っている。
この女はどれだけ人の心を弄ぶんだ。
前世でも俺の心を操って、アーシャを愛していたのにミランダ(ミラーネ)に無理やり気持ちを向けさせて、俺はミランダを最後まで愛して死んでいった。
今の正常な俺ならわかる。
ミランダのことなんて愛していない。なのに俺はずっとミランダを愛し続けた。
アーシャが死んだ時も何も感じなかった。
今世でアイシャと再び出会ってからもやはりアイシャに対して愛を感じない。なのにどこか心の奥でアイシャを求めていた。
どんなに可愛らしく擦り寄って来てもミラーネに対して嫌悪感しか感じない。いや、早く殺してやりたい。
みんなの魔法がミラーネを殺せば簡単に解けてしまうならすぐにでも殺してやるのに。
多分簡単には解けない。
『青い薔薇』精霊がアーシャと共に作り出した奇跡の花。この花のおかげで魔法が俺も解けた。
ならばミラーネに青い薔薇をプレゼントすればいいのか?
俺はミラーネにプレゼントとして青い薔薇を渡している。
本当なら魔法にかかった者達に青い薔薇を渡すのが一番だが青い薔薇は誰にでもあげるわけにはいかない。王家が管理する貴重な薔薇。
ミラーネは何も知らずに「素敵な薔薇をありがとう」と微笑んで喜んで受け取ってくれる。
ミラーネが閉じ込めている精霊達が作った薔薇とは知らずに。
アイシャについては公爵家の屋敷に数人使用人として俺の手の内の者が働いている。
そこからの報告で、軟禁状態のままだと報告を受けていた。
魔法にかかり俺のことを愛している。
ほんの少し前まで俺のことを怖がり嫌がっていたのに。
あと少し………
そう思っていたのに。
ソラリア帝国から思ったより早く公爵一家が来ることになった。
本来なら婚約者だったアイシャも彼らと親睦を兼ねて会う予定になっていた。
婚約が解消されたり新たな婚約を結ぶことになったことや、神託が降りたことで国内がバタバタしているのもあり、ソラリア帝国からの視察は来年に伸びるはずだった。
そして婚約者になったミラーネもそれに合わせてソラリア語を勉強することになっていた。
「シルヴィオ、わたし、ソラリア語はほとんど話せないのだけど、挨拶くらいは向こうの言葉で話したいと思っているの」
ミラーネがそう言って、ソラリア語を今必死で覚えているのをなんとも言えない気持ちでみている。
アイシャはとても頑張ってソラリア語を覚えていた。学校の帰り一緒に馬車に乗り城へと向かう時、楽しそうに学校のことや登城してどんなことをしているのか話してくれた。
魔法にかかって俺のことを愛してくれていたあの日々。
ニセモノでもそこに愛はあった。ニセモノでもかけがえのない日々だった。
ミラーネがどんなに美しく俺に寄り添い甘えてきても、もう愛することはないし、気持ち悪いと感じてしまう。彼女の頑張りも冷めた目でしか見ることができない。
それでも愛しているフリをするために愛を囁き、彼女の唇にキスを落とす。
ミラーネは愛を確かめようとするかのように何度も俺からのキスをねだる。
視察に訪れたノエルを俺の部屋に案内する。
そしてノエルにすぐに事情を話した。
彼には俺の話を手紙で伝えてはいた。
アイシャを保護してもらうためだった。
でも実際にミラーネを見るまでは信じられない話だと思っていたらしい。
俺の口から話を聞いて、ミラーネを見て、そして俺の周りの澱んだ空気を感じ取り、ノエルは『僕がアイシャ嬢を守ればいいんだね?』と訊かれたので「頼む」と答えた。
俺が守りたい。でも、彼女を裏切り殺した俺が守ることはできない。
他人に頼むのもおかしい話だが、ノエルなら頼める。
ノエルもまた精霊に愛された愛し子だから。
「シルヴィオ、あのミラーネ様。魂が黒く染まって体から禍々しい悪気を出してるよ」
「ああ、そばにいるだけで気持ち悪くなる。でも俺は彼女を愛していることになっているから気づかないフリをしてるんだ」
「ミラーネ様にはあまり関わり合いたくないね。とても闇が深いね」
ノエルがここまで眉根を寄せて顔を顰める姿を俺は初めて見たかもしれない。
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