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24話
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「お父様?」
思わずいきなり声をかけてしまった。
「アイシャ………」
お父様はわたしの顔を見ると苦笑いの顔を浮かべた。
いや、本人は笑っているつもりなのかもしれない。
だって話す声はとても優しい。
「今日、陛下に呼ばれた」
「……国王陛下?………ですか?」
突然のお父様の言葉にどう返事をすれば良いのかわからなかった。
「ああ……………」
お父様はその先を話すのを躊躇った。
ーー何か悪いこと?
聞くのが怖い。でも、多分、わたしのことなのだろう。
「今度ソラリア帝国から公爵一家が来られるこは知っているだろう?」
「はい、シルヴィオ様の婚約者として晩餐会に出席する予定です。あと公爵家の領地の水運関連の視察のお供をお父様とすることになっておりますよね?」
水運関連とは、海のそばにある公爵家の領地は船舶により旅客・貨物の輸送を行う事業行っている。
大きな船舶をいくつも持っているため他国はうちと事業を提携したいと欲していると聞いている。
わたしがシルヴィオ様と婚約できたのも公爵家である、お父様が財務大臣であることはもちろんだけど、水運関連の事業を喉から手が出るほど欲しているというのもある。
公爵家の跡取りであるわたしと結婚した相手はその公爵家の財産全てを自分のものにできるのだから。
お父様は元々王族への忠誠心が強くて、王族との姻戚関係になれることをとても強く望んでいた。結婚によって生じる姻戚関係をどちらもが自己に有利に結びつけようとする思惑がある。
でもソラリア帝国とわたしが一体どう結びつくのかしら?
「………お前にはソラリア帝国へしばらく行ってもらうことになりそうだ」
「わたしが?でも……あと一年半で16歳になります。シルヴィオ様との結婚も視野に入れて今、公爵家のことや王子妃としての勉強をしているところです……間に合わなくなりませんか?」
どうしてそんな話になるのかしら?
「これは……シルヴィオ殿下から出た話なんだ」
「シルヴィオ様が?」
「アイシャにソラリア帝国へ行ってもっと学んでほしいと願っているんだ。ソラリア帝国は経済がグロス国よりも発展している。確かにうちの公爵家は水運関連事業では他国には負けていない。だが国の経済力ではまだまだ他国には及ばない」
「……でも14歳の小娘でしかないわたしがソラリア帝国に行って何を学べばいいのでしょう?」
意味がわからない。わたしが行くことに何かあるの?
「………………聖女であるミラーネ様が神託を賜ったらしい……」
「えっ?ミラーネ様?神託って……わたしがソラリア帝国へ行くのはシルヴィオ様が言い出したのでは?」
頭が混乱する。
何を言ってるのかよくわからない。
「……………ミラーネ様とシルヴィオ様の結婚が決まった……お前はこの国にいると邪魔になる……だからシルヴィオ殿下がお前をソラリア帝国へ留学するようにと陛下に願い出たんだ」
「わ、わ、わたし………えっ?どうして?だって、シルヴィオ様と婚約しているのはわたしなのに……解消されたなんて聞いていないわ」
あっ……シャーリーがわたしがミラーネ様に嫌がらせをしていると噂が広まっていると言ってた……
シルヴィオ様もそれを信じているかもしれないと……シルヴィオ様はわたしとの関係に不満を持っていたの?
もう愛想を尽かしてるとか?
手が震えて目に涙が溢れるのに止めることができない。
「ミラーネ様は聖女様で、陛下のご病気を治療されていま快方に向かっているんだ。ミラーネ様がいなければ陛下をお救いすることもできない。神託を受けてお二人が結ばれる。そこにお前は邪魔なんだ。ソラリア帝国はお前の留学を受け入れてくれるらしい」
「わたしは……邪魔……」
何も考えたくない。わたしは崩れるように床に座り込み、声を出して泣いた。
お父様は話をしてスッキリしたのか、部屋を出て行った。
お父様にとって王家と姻戚関係を結ぶことができなくなって不要となったわたしに愛情すらないのだろうか。
思わずいきなり声をかけてしまった。
「アイシャ………」
お父様はわたしの顔を見ると苦笑いの顔を浮かべた。
いや、本人は笑っているつもりなのかもしれない。
だって話す声はとても優しい。
「今日、陛下に呼ばれた」
「……国王陛下?………ですか?」
突然のお父様の言葉にどう返事をすれば良いのかわからなかった。
「ああ……………」
お父様はその先を話すのを躊躇った。
ーー何か悪いこと?
聞くのが怖い。でも、多分、わたしのことなのだろう。
「今度ソラリア帝国から公爵一家が来られるこは知っているだろう?」
「はい、シルヴィオ様の婚約者として晩餐会に出席する予定です。あと公爵家の領地の水運関連の視察のお供をお父様とすることになっておりますよね?」
水運関連とは、海のそばにある公爵家の領地は船舶により旅客・貨物の輸送を行う事業行っている。
大きな船舶をいくつも持っているため他国はうちと事業を提携したいと欲していると聞いている。
わたしがシルヴィオ様と婚約できたのも公爵家である、お父様が財務大臣であることはもちろんだけど、水運関連の事業を喉から手が出るほど欲しているというのもある。
公爵家の跡取りであるわたしと結婚した相手はその公爵家の財産全てを自分のものにできるのだから。
お父様は元々王族への忠誠心が強くて、王族との姻戚関係になれることをとても強く望んでいた。結婚によって生じる姻戚関係をどちらもが自己に有利に結びつけようとする思惑がある。
でもソラリア帝国とわたしが一体どう結びつくのかしら?
「………お前にはソラリア帝国へしばらく行ってもらうことになりそうだ」
「わたしが?でも……あと一年半で16歳になります。シルヴィオ様との結婚も視野に入れて今、公爵家のことや王子妃としての勉強をしているところです……間に合わなくなりませんか?」
どうしてそんな話になるのかしら?
「これは……シルヴィオ殿下から出た話なんだ」
「シルヴィオ様が?」
「アイシャにソラリア帝国へ行ってもっと学んでほしいと願っているんだ。ソラリア帝国は経済がグロス国よりも発展している。確かにうちの公爵家は水運関連事業では他国には負けていない。だが国の経済力ではまだまだ他国には及ばない」
「……でも14歳の小娘でしかないわたしがソラリア帝国に行って何を学べばいいのでしょう?」
意味がわからない。わたしが行くことに何かあるの?
「………………聖女であるミラーネ様が神託を賜ったらしい……」
「えっ?ミラーネ様?神託って……わたしがソラリア帝国へ行くのはシルヴィオ様が言い出したのでは?」
頭が混乱する。
何を言ってるのかよくわからない。
「……………ミラーネ様とシルヴィオ様の結婚が決まった……お前はこの国にいると邪魔になる……だからシルヴィオ殿下がお前をソラリア帝国へ留学するようにと陛下に願い出たんだ」
「わ、わ、わたし………えっ?どうして?だって、シルヴィオ様と婚約しているのはわたしなのに……解消されたなんて聞いていないわ」
あっ……シャーリーがわたしがミラーネ様に嫌がらせをしていると噂が広まっていると言ってた……
シルヴィオ様もそれを信じているかもしれないと……シルヴィオ様はわたしとの関係に不満を持っていたの?
もう愛想を尽かしてるとか?
手が震えて目に涙が溢れるのに止めることができない。
「ミラーネ様は聖女様で、陛下のご病気を治療されていま快方に向かっているんだ。ミラーネ様がいなければ陛下をお救いすることもできない。神託を受けてお二人が結ばれる。そこにお前は邪魔なんだ。ソラリア帝国はお前の留学を受け入れてくれるらしい」
「わたしは……邪魔……」
何も考えたくない。わたしは崩れるように床に座り込み、声を出して泣いた。
お父様は話をしてスッキリしたのか、部屋を出て行った。
お父様にとって王家と姻戚関係を結ぶことができなくなって不要となったわたしに愛情すらないのだろうか。
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