24 / 48
24話
しおりを挟む
「お父様?」
思わずいきなり声をかけてしまった。
「アイシャ………」
お父様はわたしの顔を見ると苦笑いの顔を浮かべた。
いや、本人は笑っているつもりなのかもしれない。
だって話す声はとても優しい。
「今日、陛下に呼ばれた」
「……国王陛下?………ですか?」
突然のお父様の言葉にどう返事をすれば良いのかわからなかった。
「ああ……………」
お父様はその先を話すのを躊躇った。
ーー何か悪いこと?
聞くのが怖い。でも、多分、わたしのことなのだろう。
「今度ソラリア帝国から公爵一家が来られるこは知っているだろう?」
「はい、シルヴィオ様の婚約者として晩餐会に出席する予定です。あと公爵家の領地の水運関連の視察のお供をお父様とすることになっておりますよね?」
水運関連とは、海のそばにある公爵家の領地は船舶により旅客・貨物の輸送を行う事業行っている。
大きな船舶をいくつも持っているため他国はうちと事業を提携したいと欲していると聞いている。
わたしがシルヴィオ様と婚約できたのも公爵家である、お父様が財務大臣であることはもちろんだけど、水運関連の事業を喉から手が出るほど欲しているというのもある。
公爵家の跡取りであるわたしと結婚した相手はその公爵家の財産全てを自分のものにできるのだから。
お父様は元々王族への忠誠心が強くて、王族との姻戚関係になれることをとても強く望んでいた。結婚によって生じる姻戚関係をどちらもが自己に有利に結びつけようとする思惑がある。
でもソラリア帝国とわたしが一体どう結びつくのかしら?
「………お前にはソラリア帝国へしばらく行ってもらうことになりそうだ」
「わたしが?でも……あと一年半で16歳になります。シルヴィオ様との結婚も視野に入れて今、公爵家のことや王子妃としての勉強をしているところです……間に合わなくなりませんか?」
どうしてそんな話になるのかしら?
「これは……シルヴィオ殿下から出た話なんだ」
「シルヴィオ様が?」
「アイシャにソラリア帝国へ行ってもっと学んでほしいと願っているんだ。ソラリア帝国は経済がグロス国よりも発展している。確かにうちの公爵家は水運関連事業では他国には負けていない。だが国の経済力ではまだまだ他国には及ばない」
「……でも14歳の小娘でしかないわたしがソラリア帝国に行って何を学べばいいのでしょう?」
意味がわからない。わたしが行くことに何かあるの?
「………………聖女であるミラーネ様が神託を賜ったらしい……」
「えっ?ミラーネ様?神託って……わたしがソラリア帝国へ行くのはシルヴィオ様が言い出したのでは?」
頭が混乱する。
何を言ってるのかよくわからない。
「……………ミラーネ様とシルヴィオ様の結婚が決まった……お前はこの国にいると邪魔になる……だからシルヴィオ殿下がお前をソラリア帝国へ留学するようにと陛下に願い出たんだ」
「わ、わ、わたし………えっ?どうして?だって、シルヴィオ様と婚約しているのはわたしなのに……解消されたなんて聞いていないわ」
あっ……シャーリーがわたしがミラーネ様に嫌がらせをしていると噂が広まっていると言ってた……
シルヴィオ様もそれを信じているかもしれないと……シルヴィオ様はわたしとの関係に不満を持っていたの?
もう愛想を尽かしてるとか?
手が震えて目に涙が溢れるのに止めることができない。
「ミラーネ様は聖女様で、陛下のご病気を治療されていま快方に向かっているんだ。ミラーネ様がいなければ陛下をお救いすることもできない。神託を受けてお二人が結ばれる。そこにお前は邪魔なんだ。ソラリア帝国はお前の留学を受け入れてくれるらしい」
「わたしは……邪魔……」
何も考えたくない。わたしは崩れるように床に座り込み、声を出して泣いた。
お父様は話をしてスッキリしたのか、部屋を出て行った。
お父様にとって王家と姻戚関係を結ぶことができなくなって不要となったわたしに愛情すらないのだろうか。
思わずいきなり声をかけてしまった。
「アイシャ………」
お父様はわたしの顔を見ると苦笑いの顔を浮かべた。
いや、本人は笑っているつもりなのかもしれない。
だって話す声はとても優しい。
「今日、陛下に呼ばれた」
「……国王陛下?………ですか?」
突然のお父様の言葉にどう返事をすれば良いのかわからなかった。
「ああ……………」
お父様はその先を話すのを躊躇った。
ーー何か悪いこと?
聞くのが怖い。でも、多分、わたしのことなのだろう。
「今度ソラリア帝国から公爵一家が来られるこは知っているだろう?」
「はい、シルヴィオ様の婚約者として晩餐会に出席する予定です。あと公爵家の領地の水運関連の視察のお供をお父様とすることになっておりますよね?」
水運関連とは、海のそばにある公爵家の領地は船舶により旅客・貨物の輸送を行う事業行っている。
大きな船舶をいくつも持っているため他国はうちと事業を提携したいと欲していると聞いている。
わたしがシルヴィオ様と婚約できたのも公爵家である、お父様が財務大臣であることはもちろんだけど、水運関連の事業を喉から手が出るほど欲しているというのもある。
公爵家の跡取りであるわたしと結婚した相手はその公爵家の財産全てを自分のものにできるのだから。
お父様は元々王族への忠誠心が強くて、王族との姻戚関係になれることをとても強く望んでいた。結婚によって生じる姻戚関係をどちらもが自己に有利に結びつけようとする思惑がある。
でもソラリア帝国とわたしが一体どう結びつくのかしら?
「………お前にはソラリア帝国へしばらく行ってもらうことになりそうだ」
「わたしが?でも……あと一年半で16歳になります。シルヴィオ様との結婚も視野に入れて今、公爵家のことや王子妃としての勉強をしているところです……間に合わなくなりませんか?」
どうしてそんな話になるのかしら?
「これは……シルヴィオ殿下から出た話なんだ」
「シルヴィオ様が?」
「アイシャにソラリア帝国へ行ってもっと学んでほしいと願っているんだ。ソラリア帝国は経済がグロス国よりも発展している。確かにうちの公爵家は水運関連事業では他国には負けていない。だが国の経済力ではまだまだ他国には及ばない」
「……でも14歳の小娘でしかないわたしがソラリア帝国に行って何を学べばいいのでしょう?」
意味がわからない。わたしが行くことに何かあるの?
「………………聖女であるミラーネ様が神託を賜ったらしい……」
「えっ?ミラーネ様?神託って……わたしがソラリア帝国へ行くのはシルヴィオ様が言い出したのでは?」
頭が混乱する。
何を言ってるのかよくわからない。
「……………ミラーネ様とシルヴィオ様の結婚が決まった……お前はこの国にいると邪魔になる……だからシルヴィオ殿下がお前をソラリア帝国へ留学するようにと陛下に願い出たんだ」
「わ、わ、わたし………えっ?どうして?だって、シルヴィオ様と婚約しているのはわたしなのに……解消されたなんて聞いていないわ」
あっ……シャーリーがわたしがミラーネ様に嫌がらせをしていると噂が広まっていると言ってた……
シルヴィオ様もそれを信じているかもしれないと……シルヴィオ様はわたしとの関係に不満を持っていたの?
もう愛想を尽かしてるとか?
手が震えて目に涙が溢れるのに止めることができない。
「ミラーネ様は聖女様で、陛下のご病気を治療されていま快方に向かっているんだ。ミラーネ様がいなければ陛下をお救いすることもできない。神託を受けてお二人が結ばれる。そこにお前は邪魔なんだ。ソラリア帝国はお前の留学を受け入れてくれるらしい」
「わたしは……邪魔……」
何も考えたくない。わたしは崩れるように床に座り込み、声を出して泣いた。
お父様は話をしてスッキリしたのか、部屋を出て行った。
お父様にとって王家と姻戚関係を結ぶことができなくなって不要となったわたしに愛情すらないのだろうか。
1,043
お気に入りに追加
2,452
あなたにおすすめの小説
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。


貴方の運命になれなくて
豆狸
恋愛
運命の相手を見つめ続ける王太子ヨアニスの姿に、彼の婚約者であるスクリヴァ公爵令嬢リディアは身を引くことを決めた。
ところが婚約を解消した後で、ヨアニスの運命の相手プセマが毒に倒れ──
「……君がそんなに私を愛していたとは知らなかったよ」
「え?」
「プセマは毒で死んだよ。ああ、驚いたような顔をしなくてもいい。君は知っていたんだろう? プセマに毒を飲ませたのは君なんだから!」

悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる