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23話
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またいつもの日々に戻っていた。
少し離れた場所からシルヴィオ様やミラーネ様達のグループの姿をチラリと見て目線を逸らす。
ほんの少し前までは駆け足でシルヴィオ様のところへ向かって挨拶をしていた。
でも今のわたしは少しだけ遠慮気味で、中等部の友達と過ごしていた。
たまにユリウス殿下が心配してわたしに声をかけてくださる。
「アイシャ嬢、気にするな。兄上は君のことをちゃんと大切にしているから、大丈夫だよ」
「ええ、二人でいる時はとても優しくしてくださっているわ。ご友人といる時は、シルヴィオ様にはシルヴィオ様の世界があるからお邪魔したくないの」
ちょっと無理な言い訳だとわかってはいるけどそう言わないと自分が惨めなんだもの。
それに最近ほんの少しだけ困ったことが起きている。
わたしの席の机の引き出しに、なぜか虫が入っていたり、鞄の中を誰かが触ったのでは?という形跡があったり………時には確かに持ってきたはずの提出しなければならない宿題が消えていたりと……
教室なんて誰でも入ってこれる場所だから……誰がしたかなんてわからない。
ただ……最近、わたしを見てクスクス笑う人がいることに気がついた。
目の前で笑われているわけではない。でも遠巻きに笑われていることがわかる。
わたしの友人達は皆幼い頃からの仲良しでそんなわたしを心配して出来るだけいたしよにいてくれる。
特にいちばんの仲良しのシェリーはとても憤慨しているようで。
「アイシャはもう少し怒ってもいいと思うの。困っているなら婚約者のシルヴィオ殿下に相談してみたら?」
「うーんでも、まだ嫌がらせとははっきりしていないし、それに、そんなことでお手を煩わせたくないの」
「アイシャは最近の噂を知らないからそんなことが言えるのよ」
「噂?」
わたしの周りはみんな気を遣ってくれるし優しい人ばかり。そんな話をわたしに聞かせようとする人はいない。
だから噂には多分疎いと思う。
シェリーだって本当は話したくなかったみたい。
だけど「知らないことの方が残酷だということもあると思うの」と、話す決心をしてわたしに伝えてくれた。
「アイシャは、シルヴィオ殿下と仲良くしている聖女のミラーネ様に嫉妬して嫌がらせをしているらしい」
シェリーは一旦話をやめてわたしをみた。
そして「ごめんね」と言ってから言いにくそうにまた話を続けた。
「それに対して殿下はアイシャのことをとても不愉快に感じていて、あなたの関係はもう拗れていると聞いたわ」
「わたしがミラーネ様に嫉妬?嫌がらせ?」
どうしてそんなことに?
確かに二人の仲の良い姿を見るのは辛い。すぐに目を背けてしまうのも確かだわ。
だけどだからと言って嫉妬に駆られミラーネ様に何かしようなんて思ったことはない。
それに……わたしの方が誰かに嫌がらせをされているのに………
「だからね、シルヴィオ殿下に本当のことを伝えたほうがいいと思うの。このままでは殿下にも勘違いされてしまうわ」
「…………シルヴィオ様はわたしのことをそんなふうに思っているのかな……いつもお会いした時はそんなそぶりを見せないわ。とてもお優しくていつもと変わらない態度だもの」
今度シルヴィオ様と話し合おう。
わたしは決心をした。
その夜、屋敷に久しぶりにわたしが寝る前の早い時間にお父様がお帰りになった。
執事長のマークがわたしの部屋に来て「旦那様がお呼びです」と呼びに来た。
「お父様が?何かしら?」
マークはどんな用事なのかわからないみたいでわたしはなんとなく嫌な予感がしてお父様の執務室へと向かった。
お父様の執務室に入ると、お父様は頭に手を置き「はあー」と大きな溜息をついているところだった。
少し離れた場所からシルヴィオ様やミラーネ様達のグループの姿をチラリと見て目線を逸らす。
ほんの少し前までは駆け足でシルヴィオ様のところへ向かって挨拶をしていた。
でも今のわたしは少しだけ遠慮気味で、中等部の友達と過ごしていた。
たまにユリウス殿下が心配してわたしに声をかけてくださる。
「アイシャ嬢、気にするな。兄上は君のことをちゃんと大切にしているから、大丈夫だよ」
「ええ、二人でいる時はとても優しくしてくださっているわ。ご友人といる時は、シルヴィオ様にはシルヴィオ様の世界があるからお邪魔したくないの」
ちょっと無理な言い訳だとわかってはいるけどそう言わないと自分が惨めなんだもの。
それに最近ほんの少しだけ困ったことが起きている。
わたしの席の机の引き出しに、なぜか虫が入っていたり、鞄の中を誰かが触ったのでは?という形跡があったり………時には確かに持ってきたはずの提出しなければならない宿題が消えていたりと……
教室なんて誰でも入ってこれる場所だから……誰がしたかなんてわからない。
ただ……最近、わたしを見てクスクス笑う人がいることに気がついた。
目の前で笑われているわけではない。でも遠巻きに笑われていることがわかる。
わたしの友人達は皆幼い頃からの仲良しでそんなわたしを心配して出来るだけいたしよにいてくれる。
特にいちばんの仲良しのシェリーはとても憤慨しているようで。
「アイシャはもう少し怒ってもいいと思うの。困っているなら婚約者のシルヴィオ殿下に相談してみたら?」
「うーんでも、まだ嫌がらせとははっきりしていないし、それに、そんなことでお手を煩わせたくないの」
「アイシャは最近の噂を知らないからそんなことが言えるのよ」
「噂?」
わたしの周りはみんな気を遣ってくれるし優しい人ばかり。そんな話をわたしに聞かせようとする人はいない。
だから噂には多分疎いと思う。
シェリーだって本当は話したくなかったみたい。
だけど「知らないことの方が残酷だということもあると思うの」と、話す決心をしてわたしに伝えてくれた。
「アイシャは、シルヴィオ殿下と仲良くしている聖女のミラーネ様に嫉妬して嫌がらせをしているらしい」
シェリーは一旦話をやめてわたしをみた。
そして「ごめんね」と言ってから言いにくそうにまた話を続けた。
「それに対して殿下はアイシャのことをとても不愉快に感じていて、あなたの関係はもう拗れていると聞いたわ」
「わたしがミラーネ様に嫉妬?嫌がらせ?」
どうしてそんなことに?
確かに二人の仲の良い姿を見るのは辛い。すぐに目を背けてしまうのも確かだわ。
だけどだからと言って嫉妬に駆られミラーネ様に何かしようなんて思ったことはない。
それに……わたしの方が誰かに嫌がらせをされているのに………
「だからね、シルヴィオ殿下に本当のことを伝えたほうがいいと思うの。このままでは殿下にも勘違いされてしまうわ」
「…………シルヴィオ様はわたしのことをそんなふうに思っているのかな……いつもお会いした時はそんなそぶりを見せないわ。とてもお優しくていつもと変わらない態度だもの」
今度シルヴィオ様と話し合おう。
わたしは決心をした。
その夜、屋敷に久しぶりにわたしが寝る前の早い時間にお父様がお帰りになった。
執事長のマークがわたしの部屋に来て「旦那様がお呼びです」と呼びに来た。
「お父様が?何かしら?」
マークはどんな用事なのかわからないみたいでわたしはなんとなく嫌な予感がしてお父様の執務室へと向かった。
お父様の執務室に入ると、お父様は頭に手を置き「はあー」と大きな溜息をついているところだった。
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