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16話
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ミラーネ様が最近よくわたしの前に現れる。
いつもは殿下達と楽しそうに話しているのに。
わたしが一人になると、ふとそばに寄ってくる。
「アイシャ様?おひとりで何をしているの?」
可愛らしいお顔でクスッと笑うとわたしに話しかけてくる。
何をしているって……見ればわかると思う。
『ひとりで昼食のサンドイッチを食べながらのんびりと本を読んでいるところです』
と言いたいのだけど、彼女の方が一応年上なので、困った顔をしながらも微笑んで見せた。
今日はお友達が用事があって一緒に食事をとれないので一人で人気の無い裏庭でゆっくり過ごしていた。
みんな先生に呼ばれて追試中なの。先生ったらいきなりテストをするんだもの。
「うわっ、やられたぁ!」
「アイシャ様、どうして満点なの?」
「ああ、もう最悪!お昼休みが……」
令嬢らしからぬみんなの叫び声に苦笑しながら、「頑張って」と伝えひとりでのんびり昼食中。
わたしは割と一人で過ごすのも嫌いでは無い。一人っ子だからか慣れてしまってへんに気を遣われるより楽でいい。
「のんびりしているところですわ」
本を膝の上に置いてミラーネ様に視線を向けた。
「ミラーネ様、何か御用でしょうか?態々こんな場所に来られるくらいですから」
少しの嫌味を混ぜて返事をしてみた。
14歳の小娘に何の用があるのかしら?ここは高等部の人たちは足を踏み入れない場所。
中等部の教室側なので高等部からは遠い。
「いつも寂しそうにしているから気になったの。アイシャ様はシルヴィオ様の婚約者なのに学校でお二人がいる姿をあまりみないから。ふふっ」
シルヴィオ…様……お名前を呼ぶ許可をいただいているのね。ミラーネ様は。
そしてミラーネ様はそれをわたしにわかるように言っている。
うーん……でも……別に殿下に対しては婚約者ではあるけど婚約者でしかない。
そこにそれ以上の気持ちはない。どちらかと言うと怖いし、できれば関わり合いたく無い。
不思議なくらい体が心が拒絶してしまう。
「ご心配をしていただきありがとうございます」
ニコリと微笑めばミラーネ様はご不満のようで。
「ハアー、あなたって何を言われても表情ひとつ変えないのね?お人形さんがピッタリね」
「…………」
ーーよく言われる言葉……わたしにだって感情はあるのに。
「あなたはいつも同じね。公爵令嬢という地位でたくさんの人に愛される………でもどうして今回は殿下を愛さないの?」
「えっ?」
その言葉に目を見開いてしまった。
わたしが殿下を苦手としていることは誰も知らないはず。だって誰にも言っていないもの。学校でお会いしないのは、高等部の殿下にはたくさんの友人達がそばにいるから。会えば挨拶くらいはするし、必要があれば会話もしている。
周りの人に悟られることはないはず。だってわたしの表情はあまり動かさないようにしているもの。
「何を驚いているの?アイシャ様は無意識に殿下を避けているわ、それに目が全く熱を持っていないもの。あんなに大好きだったのに、ふふふっ、やっぱり忘れられないのかしら?」
何を言っているのかよくわからない。
わたしが殿下をどうしても好きになれない。心が拒絶してしまう原因をこの人は知っているみたいに話してくる。
「普段感情を殺しているあなたも流石に動揺しているみたいね、ああ、楽しいわ。ねぇ、でもあなたは殿下を愛さないと面白くないと思わない?思い出して?大好きでいつも殿下を純粋な気持ちで見ていた頃を。二人で見つめあって仲良くしていた頃を。わたし二人のあの姿が大好きだったわ。だから壊してあげたの。
今回もあなたが痛ぶられて苦しんで死んでいく姿を見たいの。さっさと殿下を好きになりなさい」
ーーいや…………えっ?なに?これは……
何故か頭の中に彼女の言葉と同じ景色が流れてきた。
わたしなのにわたしではない女の子が、殿下なのに殿下ではない人と、見つめ合い仲良く過ごす姿が………そしてミラーネ様ではないミラーネ様によく似た人と、殿下が愛し合っている姿が。
そう、お二人がベッドで仲良く裸で過ごす姿をわたしは呆然と立って見せられていた。
そして………………忘れていた一番辛い思い出が………
嫌だ、いやだ、イヤダ…………
どうしてこんなことをされるの?
わたしは何故牢に入れられてこんな酷い目に遭わされなければいけないの?
ーーお父様……助けて………
何度も何度も助けを呼んだのに………
わたしはそのままその場に倒れてしまった。
「さあ、今回もあなたには苦しんでもらわなきゃ。せっかくみんな生まれ変わったのよ?ここからまた始まるの。
精霊達、あんた達今回は出番はないわ。黙ってみんな檻に入っていなさい。少しでも檻に触れたらみんな焼け死ぬのよ?」
いつもは殿下達と楽しそうに話しているのに。
わたしが一人になると、ふとそばに寄ってくる。
「アイシャ様?おひとりで何をしているの?」
可愛らしいお顔でクスッと笑うとわたしに話しかけてくる。
何をしているって……見ればわかると思う。
『ひとりで昼食のサンドイッチを食べながらのんびりと本を読んでいるところです』
と言いたいのだけど、彼女の方が一応年上なので、困った顔をしながらも微笑んで見せた。
今日はお友達が用事があって一緒に食事をとれないので一人で人気の無い裏庭でゆっくり過ごしていた。
みんな先生に呼ばれて追試中なの。先生ったらいきなりテストをするんだもの。
「うわっ、やられたぁ!」
「アイシャ様、どうして満点なの?」
「ああ、もう最悪!お昼休みが……」
令嬢らしからぬみんなの叫び声に苦笑しながら、「頑張って」と伝えひとりでのんびり昼食中。
わたしは割と一人で過ごすのも嫌いでは無い。一人っ子だからか慣れてしまってへんに気を遣われるより楽でいい。
「のんびりしているところですわ」
本を膝の上に置いてミラーネ様に視線を向けた。
「ミラーネ様、何か御用でしょうか?態々こんな場所に来られるくらいですから」
少しの嫌味を混ぜて返事をしてみた。
14歳の小娘に何の用があるのかしら?ここは高等部の人たちは足を踏み入れない場所。
中等部の教室側なので高等部からは遠い。
「いつも寂しそうにしているから気になったの。アイシャ様はシルヴィオ様の婚約者なのに学校でお二人がいる姿をあまりみないから。ふふっ」
シルヴィオ…様……お名前を呼ぶ許可をいただいているのね。ミラーネ様は。
そしてミラーネ様はそれをわたしにわかるように言っている。
うーん……でも……別に殿下に対しては婚約者ではあるけど婚約者でしかない。
そこにそれ以上の気持ちはない。どちらかと言うと怖いし、できれば関わり合いたく無い。
不思議なくらい体が心が拒絶してしまう。
「ご心配をしていただきありがとうございます」
ニコリと微笑めばミラーネ様はご不満のようで。
「ハアー、あなたって何を言われても表情ひとつ変えないのね?お人形さんがピッタリね」
「…………」
ーーよく言われる言葉……わたしにだって感情はあるのに。
「あなたはいつも同じね。公爵令嬢という地位でたくさんの人に愛される………でもどうして今回は殿下を愛さないの?」
「えっ?」
その言葉に目を見開いてしまった。
わたしが殿下を苦手としていることは誰も知らないはず。だって誰にも言っていないもの。学校でお会いしないのは、高等部の殿下にはたくさんの友人達がそばにいるから。会えば挨拶くらいはするし、必要があれば会話もしている。
周りの人に悟られることはないはず。だってわたしの表情はあまり動かさないようにしているもの。
「何を驚いているの?アイシャ様は無意識に殿下を避けているわ、それに目が全く熱を持っていないもの。あんなに大好きだったのに、ふふふっ、やっぱり忘れられないのかしら?」
何を言っているのかよくわからない。
わたしが殿下をどうしても好きになれない。心が拒絶してしまう原因をこの人は知っているみたいに話してくる。
「普段感情を殺しているあなたも流石に動揺しているみたいね、ああ、楽しいわ。ねぇ、でもあなたは殿下を愛さないと面白くないと思わない?思い出して?大好きでいつも殿下を純粋な気持ちで見ていた頃を。二人で見つめあって仲良くしていた頃を。わたし二人のあの姿が大好きだったわ。だから壊してあげたの。
今回もあなたが痛ぶられて苦しんで死んでいく姿を見たいの。さっさと殿下を好きになりなさい」
ーーいや…………えっ?なに?これは……
何故か頭の中に彼女の言葉と同じ景色が流れてきた。
わたしなのにわたしではない女の子が、殿下なのに殿下ではない人と、見つめ合い仲良く過ごす姿が………そしてミラーネ様ではないミラーネ様によく似た人と、殿下が愛し合っている姿が。
そう、お二人がベッドで仲良く裸で過ごす姿をわたしは呆然と立って見せられていた。
そして………………忘れていた一番辛い思い出が………
嫌だ、いやだ、イヤダ…………
どうしてこんなことをされるの?
わたしは何故牢に入れられてこんな酷い目に遭わされなければいけないの?
ーーお父様……助けて………
何度も何度も助けを呼んだのに………
わたしはそのままその場に倒れてしまった。
「さあ、今回もあなたには苦しんでもらわなきゃ。せっかくみんな生まれ変わったのよ?ここからまた始まるの。
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