【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

たろ

文字の大きさ
上 下
14 / 48

14話

しおりを挟む
 最近ミラーネ様がシルヴィオ殿下とよく二人でいる姿を見かけるようになった。

 ミラーネ様は庶民だった。

 それが聖女の力を発現されたからと神官長様の養女となり学園に編入してきた。

 とても明るくて誰とでも仲良くなれるお方。わたしとは正反対の人だと思う。

 ポール様にお怒りで一旦は側近から外すと言った殿下もミラーネ様の執り成しでまた元に戻された。

 今までなら殿下のすぐそばにいたポール様だけど少し後ろからみんなについていくような感じで遠慮気味でそばにいる。

 色々と陰で噂されているのを本人も耳にしてとても居心地が悪そう。それでも殿下から離れないのは伯爵家としては第二王子の側近から外されては困ると親からの圧がかかっているようだ。

 そんな様子を少し遠巻きに見ているとポール様と目があった。

 今までは蔑むように見ていたポール様だったけど今は憎しみを込めて睨まれる。

 思わず目を背けたくなるくらいの憎悪を感じる。彼にとっては全てわたしのせいなのだろう。

 そんな彼の視線にミラーネ様が何故かいつも気がつく。ポール様にミラーネ様が耳打ちをするとポール様はわたしを睨むのをやめる。

 プイッと無視をして違う方へと視線を移すポール様、それを見てなぜか微笑むミラーネ様。

 わたしへ視線を向けると満足そうに美しい笑みを浮かべるのだ。

 わたしが固まって動けない姿が滑稽で可笑しいのか、それともいつもビクビクしている公爵令嬢が面白いのか。

「シルヴィオ殿下ぁ」

 わたしに見せつけるように殿下の腕に手を絡ませて甘えて「ねぇ早く行きましょう」とわたしを一瞥する。

 わたしはそんな彼らを少し離れたところで見送る。

 そして……


「アイシャ嬢?」

 ほら、わたしの肩を優しく叩く。

 ユリウス殿下はわたしが困った時に声をかけてくれる。

 どこで見ているのかしら?

 そう思うくらい。

 ユリウス殿下はあまり側近や取り巻きと過ごさない。

 一人で行動とはいかないけど、数人と静かに過ごされる。

 わたしと同じ歳の14歳なのに、まだ婚約者のいないユリウス殿下。

 三男にもなるとそこまで焦っていないのかもしれない。
 うん、多分、陛下は他国への婿入りも視野に入れているのかもしれない。

 所詮王子も王太子以外はコマでしかないもの。

 わたしとの婚約だって公爵家の力を取り込みたい陛下と、王族との関係を強固にしたいお父様の考えが一致したからだもの。

 わたしに断れない理由を幼い頃わざと言ったのもわたしを脅すため。

 お父様はわたしを大切にしてくれる、愛してくれる。でも公爵家の当主であり家門を一番大切にしている。そう、娘のわたしなんかより公爵家の繁栄が、一族の当主として一番大切なんだとお父様のそばにいればわかる。

 わたしもまた使い捨てのコマで必要なくなれば捨てられるのだろう。

 それは何故か決定なのだと思ってしまう。

 そんなことわからないのに。これからの未来、わたしがどうなるのかなんて誰もわからないのに、不思議にお父様はわたしではなく公爵家を選ぶのだと確信している。

 そしてシルヴィオ殿下とミラーネ様の愛はこれから育まれていくのだろう。

 ユリウス殿下は、表情のないわたしの顔を困ったように覗き込んだ。

「ねぇ?アイシャ嬢?君、もしかして兄上が好きなの?もしかして……傷ついているの?」

 ーーわたしがシルヴィオ殿下を?

 ユリウス殿下は何を言っているのかしら?

 わたしはいつも意地悪で怖いシルヴィオ殿下が苦手なの。わたしには優しく微笑んでなんてくれない。

 ミラーネ様とどんなに仲良くされていてもわたしの心に何も響かないし、何も思わない。

 そう、傷ついてなんかいないわ。

「そんな顔するなよ」
 ユリウス殿下がそっとわたしの顔に手を近づけた。

「……な、なに?」

「泣いてるの、気づいてないの?」

ーーわたしが?泣いてる?どうして?



しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。

ふまさ
恋愛
 伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。 「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」  正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。 「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」 「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」  オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。  けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。  ──そう。  何もわかっていないのは、パットだけだった。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

処理中です...