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4話

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 ギルと二人で歩きながら話した。

 お父様のことやお母様の最近の話。マチルダやブルダのこと。シャルトー国の今。

 手紙でのやり取りはしていてもなかなか帰国することはなく、ギルの話は懐かしくて楽しい。

 たくさんの官舎がある敷地に着いた。
 この辺なんだけど……

 わたし自身はもちろんイアン様の家にはきたことはない。
 ただ護衛任務として別の人をこの近くまで送迎したことはある。

 彼がオリソン国へ来てからまだ一度も話したことはなかった。終わった恋に振り返らないと決めていた。

 だから頭を下げる程度の挨拶はしても仲良く話すことはない。

 彼はどこへ行っても目立つ人。そしてどこにいてもモテる人。
 常に近くに女性がいる。イアン様本人がそうしているわけではないのだとわかる。仕事上女性が近くにいるだけなのだろう。
 それでも女性達は彼の隣を虎視眈々と狙っているのがわかる。

 たぶんわたし自身が彼の姿をいつの間にか探しているのだろう。彼の姿を見つけると目が追っているから、そんなところを見てしまう。

 ーーほんと、わたしのしつこさに自分でも呆れてしまう。
 ………まだわたしは恋の終わらせ方を知らない。

そんなことを考えているとギルが大きな声で
「あ、オリエ様たぶんここだよ。俺が2年間住む家。オリソン国って思った以上に街並みが綺麗だし官舎も綺麗だね」
と官舎の家を見てワクワクしているようだった。

「うん、一度大きな争いで国がボロボロになったけど新しい国としてまた立ち上がった強い国なの」

「うん、だから俺この国に来てみたかったんだ。絶対価値観変わると思って」

「シャルトー国は長い歴史がある国だから、オリソン国の考え方は新鮮だと思うわ。だけど受け入れ難いところもあるかもしれないわ。でもそれぞれのいいところ悪いところを知ることはこれから騎士として生きていために必要かもしれないわね」

真面目な話をしていたのにギルったら
「あ、やっぱりここだ!イアン様~」
 ギルは扉をドンドンと叩いた。

「お前何してたんだ!遅いぞ!こっちはお前の変な荷物出さないといけなくて大変だったんだ………へっ?」

 イアン様は扉を開けるとギルにいきなり文句を言い始めた。そして途中でわたしの姿に気がついて、かなり驚いて固まってしまった。

「遅くなってすみません。わたしと会っていました。ギルがまさかイアン様のお宅に居候すると思っていませんでした。ご迷惑をお掛けいたします」

「へへ、オリエ様と会ってたんだ。ついでに挨拶してくれるって言うんで連れてきた。嬉しいでしょう?」


「お、お前、先に言っておけよ!俺にだって心の準備がいるんだから!オリエ…殿、ひさしぶり?です」

「イアン様、何変な挨拶をしてるの?オリエ様、汚いところだけど早く入ってください。俺お土産買ってきたんです」

 わたしは玄関の前で帰る予定だったのに気がつけば中に入りソファに座っていた。

「どうぞ」
 イアン様が淹れてくださった紅茶をいただく。

「美味しい」

「そう?この茶葉はアルク国の友人が送ってきてくれたんだ。俺が紅茶が好きだからと言って。彼女の実家の領地は茶葉の生産をしていて美味しいと有名らしくてね」

「あっ、そ、そうなんですね」

 わたしはどう返事をしたらいいのかわからなくて少し困った顔をしていたようだ。
「あっ」と言う顔をした。

 元妻に友人とは言え女性の話をしたのは不味かったと思ったらしい。

 少しぎこちないなんとも言えない空気の中で
「オリエ様!お土産です!イアン様が勝手に袋から出してたんだ!」
 イアン様に文句を言いながら持ってきたのは木彫りの変な置物だった。

「ふふ、これはギル特製?」

「さすがオリエ様!わかってくれる!俺が彫った兎なんだ」

「ええ?兎?ふふ、ギルから貰った木彫りの作品これで何個目かしら?」

「うーん、8個?」

「実家に6個、こっちに送ってくれたのが4個、これを合わせたら11個かしら?」

「へへ、そんなに増えたんだ?」

「うん、でももう置くところがないから良かったら実家のわたしの部屋にあとは送ってくれると嬉しいわ」

「わかった、今度からそうするよ」

 イアン様は「あの変な木彫りが11個?俺なら要らない」とギルに聞こえないように呟いていた。

 うん、わたしも流石に増えて困っている。
 要らないとは言えないのでこれだけ部屋に飾ってあとは実家に送ろうと考えている。

 ギルのおかげでイアン様との会話もぎこちないながらなんとか終わることができた。









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