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番外編 ラフェ④
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目の前にいたのはエドワード。
もう14年も会っていないのに、すぐにわかった。やはり今でもアルバードに似ていた。
記憶の中のエドワードより少し老けているけど変わらず綺麗な顔で、落ち着いた雰囲気があった。
ーーーああ、わたしが覚えているエドワードはもういないのね。
わたしの声に反応することはなかった。
「どうぞ」と椅子を置いて目の前から去って後ろの方に控えていた。
「エドワードと知り合いなのかしら?」
アストロ公爵夫人はわたしを興味ありげに見つめた。
なんと答えようか逡巡していたら、夫人が勝手に話し出した。
「彼はもともと王立騎士団の出身なの……色々あって今は公爵家の騎士団で副団長として働いてくれているのよ」
「………そうですか」
震える声で返事をした。
「………ああ、そうね。……………うん、思い出したわ、貴女が………」
アストロ公爵夫人はわたしの顔を見て納得したように頷くと
「まさかこんな形で再会するなんて……ごめんなさいね、動揺しているわよね?」
何も言わないのに理解してしまったようだ。
エドワードの経歴は雇い主なので知っているだろう。ただ、わたしが前妻だったとは思っていなかったようだ。
「すぐにわたくしも向こうへ行くわ。エドワード、他の人と護衛を代わってくれるかしら?」
頭を下げてエドワードはこの場から離れようとした。
ーーーここで終わらせていいの?
終わったことだけど、わたし達は一度も会わずに関係を終わらせてしまった。
それでいいと思っていた……だけど、いつか会ってしまったらどうしよう。
アルバードが父親であるエドワードに会いたがったらわたしはどうすればいいのだろう。
いつも本当はどうすればいいのか答えを探していた。
◆ ◆ ◆ エドワード
オズワルドを孤児院から引き取って再び一緒に暮らせるようになった。
アーバンやアーバンの奥さんのアルテがオズワルドを育てるのに協力してくれた。
おかげでオズワルドは素直で明るい子に育ってくれた。ときおり母親のシャーリーに虐待された所為なのか眠っている時に突然泣き出したりすることもあったが、大きくなるにつれ今ではそんなこともなかったかのように元気に過ごしている。
オズワルドも学校に通い、手が離れ父上と三人暮らしが始まった。アーバンは……何故か元妻のラフェの住んでいた家を借りて暮らしている。
理由は近所の人たちがとても良い人で空き家だったから。と言われれば苦笑いするしかなかった。
もう俺には遠い存在のラフェ。何も言う資格はない。
俺は公爵家の騎士団の入団試験を受けて今はアストロ公爵家の副団長として責任のある仕事をしている。
アストロ公爵は、俺の素性を全て知った上で雇ってくれた。
『息子のためにも早く全ての借金を返さないといけないな』
そう言って俺を雇ってくれた。
簡単に返せない金額だったけど、公爵家での給金は王立騎士団で働いていた時よりも多く、贅沢さえしなければ返済しながらも十分食べていけるようになった。
これならオズワルドにしっかりと教育させてあげることが出来る。
そして必死で働いて信用を得た俺は副団長になり今は主に公爵夫人の護衛として働いていた。
まさかここでラフェに会うとは思ってもみなかった。
風の噂でラフェがグレン・ノーズ子爵と結婚したことは聞いていた。
今夜出席しているだろうとは思っていた。ほとんどの名だたる貴族は参加しているから。
夜会の会場ですれ違うことはあるかもしれない。だが俺は一介の護衛騎士でしかない。少し離れた場所で主人を見守るだけなので顔を合わせることはないと思っていた。
なのに公爵夫人はラフェのドレスに興味を持ち話しかけた。
ラフェは月日が経ってもなお美しいままだった。少し頼りなく見えて守ってあげたくなる容姿は庇護欲をそそる。そう思っていると本当の彼女は芯はしっかりしていて少し頑固で、意地っ張りで甘えることが苦手。
年下のラフェに俺はずっと惹かれていた。結婚してからもずっとどんどん好きになって、一生共にするんだと思っていた。
あの事故さえなければ……
いや、俺の選択が全て間違っていた。俺は記憶をなくした時に、ラフェを捨ててしまったのだ。
そんなことを考えながら、ラフェに気づかれないように離れて公爵夫人の護衛をしていた。
まさか公爵夫人に、椅子を持ってきて欲しいと言われるとは思っていなかった。
『エドワード』
久しぶりに聞くラフェが俺の名を呼ぶ声。
大の大人が泣きそうになった。
一言でも声を発すれば、自分でも何を言うかわからない。
『どうぞ』と椅子を差し出すのが精一杯だった。
公爵夫人がそばにいてくれてよかった。いなければ俺は仕事を忘れてラフェの前で跪いて詫びる言葉を言い続けていたと思う。
今更言い訳なんて出来ない。
それにラフェは今妊娠しているようだ。幸せに暮らしているんだろう。
もうその姿を見れただけで十分だった。
その時、公爵夫人が俺の名を呼んだ。
「すぐにわたくしも向こうへ行くわ。エドワード、他の人と護衛を代わってくれるかしら?」
頭を下げて俺はこの場から離れようとした。
◇ ◇ ◇ ラフェ
「あ………待ってください……公爵夫人、話を話をさせてもらえないでしょうか?出来れば……お近くに公爵夫人にいていただけると助かるのですが……」
公爵夫人に懇願すると快く引き受けてくれた。
「もちろんよ、わたくしが偶然とはいえ二人を再会させてしまったのだから立ち合わせていただくわ」
その言葉にホッとして久しぶりにエドワードに視線を向けた。
もう14年も会っていないのに、すぐにわかった。やはり今でもアルバードに似ていた。
記憶の中のエドワードより少し老けているけど変わらず綺麗な顔で、落ち着いた雰囲気があった。
ーーーああ、わたしが覚えているエドワードはもういないのね。
わたしの声に反応することはなかった。
「どうぞ」と椅子を置いて目の前から去って後ろの方に控えていた。
「エドワードと知り合いなのかしら?」
アストロ公爵夫人はわたしを興味ありげに見つめた。
なんと答えようか逡巡していたら、夫人が勝手に話し出した。
「彼はもともと王立騎士団の出身なの……色々あって今は公爵家の騎士団で副団長として働いてくれているのよ」
「………そうですか」
震える声で返事をした。
「………ああ、そうね。……………うん、思い出したわ、貴女が………」
アストロ公爵夫人はわたしの顔を見て納得したように頷くと
「まさかこんな形で再会するなんて……ごめんなさいね、動揺しているわよね?」
何も言わないのに理解してしまったようだ。
エドワードの経歴は雇い主なので知っているだろう。ただ、わたしが前妻だったとは思っていなかったようだ。
「すぐにわたくしも向こうへ行くわ。エドワード、他の人と護衛を代わってくれるかしら?」
頭を下げてエドワードはこの場から離れようとした。
ーーーここで終わらせていいの?
終わったことだけど、わたし達は一度も会わずに関係を終わらせてしまった。
それでいいと思っていた……だけど、いつか会ってしまったらどうしよう。
アルバードが父親であるエドワードに会いたがったらわたしはどうすればいいのだろう。
いつも本当はどうすればいいのか答えを探していた。
◆ ◆ ◆ エドワード
オズワルドを孤児院から引き取って再び一緒に暮らせるようになった。
アーバンやアーバンの奥さんのアルテがオズワルドを育てるのに協力してくれた。
おかげでオズワルドは素直で明るい子に育ってくれた。ときおり母親のシャーリーに虐待された所為なのか眠っている時に突然泣き出したりすることもあったが、大きくなるにつれ今ではそんなこともなかったかのように元気に過ごしている。
オズワルドも学校に通い、手が離れ父上と三人暮らしが始まった。アーバンは……何故か元妻のラフェの住んでいた家を借りて暮らしている。
理由は近所の人たちがとても良い人で空き家だったから。と言われれば苦笑いするしかなかった。
もう俺には遠い存在のラフェ。何も言う資格はない。
俺は公爵家の騎士団の入団試験を受けて今はアストロ公爵家の副団長として責任のある仕事をしている。
アストロ公爵は、俺の素性を全て知った上で雇ってくれた。
『息子のためにも早く全ての借金を返さないといけないな』
そう言って俺を雇ってくれた。
簡単に返せない金額だったけど、公爵家での給金は王立騎士団で働いていた時よりも多く、贅沢さえしなければ返済しながらも十分食べていけるようになった。
これならオズワルドにしっかりと教育させてあげることが出来る。
そして必死で働いて信用を得た俺は副団長になり今は主に公爵夫人の護衛として働いていた。
まさかここでラフェに会うとは思ってもみなかった。
風の噂でラフェがグレン・ノーズ子爵と結婚したことは聞いていた。
今夜出席しているだろうとは思っていた。ほとんどの名だたる貴族は参加しているから。
夜会の会場ですれ違うことはあるかもしれない。だが俺は一介の護衛騎士でしかない。少し離れた場所で主人を見守るだけなので顔を合わせることはないと思っていた。
なのに公爵夫人はラフェのドレスに興味を持ち話しかけた。
ラフェは月日が経ってもなお美しいままだった。少し頼りなく見えて守ってあげたくなる容姿は庇護欲をそそる。そう思っていると本当の彼女は芯はしっかりしていて少し頑固で、意地っ張りで甘えることが苦手。
年下のラフェに俺はずっと惹かれていた。結婚してからもずっとどんどん好きになって、一生共にするんだと思っていた。
あの事故さえなければ……
いや、俺の選択が全て間違っていた。俺は記憶をなくした時に、ラフェを捨ててしまったのだ。
そんなことを考えながら、ラフェに気づかれないように離れて公爵夫人の護衛をしていた。
まさか公爵夫人に、椅子を持ってきて欲しいと言われるとは思っていなかった。
『エドワード』
久しぶりに聞くラフェが俺の名を呼ぶ声。
大の大人が泣きそうになった。
一言でも声を発すれば、自分でも何を言うかわからない。
『どうぞ』と椅子を差し出すのが精一杯だった。
公爵夫人がそばにいてくれてよかった。いなければ俺は仕事を忘れてラフェの前で跪いて詫びる言葉を言い続けていたと思う。
今更言い訳なんて出来ない。
それにラフェは今妊娠しているようだ。幸せに暮らしているんだろう。
もうその姿を見れただけで十分だった。
その時、公爵夫人が俺の名を呼んだ。
「すぐにわたくしも向こうへ行くわ。エドワード、他の人と護衛を代わってくれるかしら?」
頭を下げて俺はこの場から離れようとした。
◇ ◇ ◇ ラフェ
「あ………待ってください……公爵夫人、話を話をさせてもらえないでしょうか?出来れば……お近くに公爵夫人にいていただけると助かるのですが……」
公爵夫人に懇願すると快く引き受けてくれた。
「もちろんよ、わたくしが偶然とはいえ二人を再会させてしまったのだから立ち合わせていただくわ」
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