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番外編 ラフェ①
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アルバードが一人王都へ旅立った。
そして今わたしの隣にはグレン様がいる。
いつもにこにこ笑いわたしの頭を撫でてくれる。
本当は彼といて嬉しい……はずなのにわたしの心は晴れない。大切なアルバードがそばにいない。
もうそれだけで寂しくて……
「子離れしなきゃいけないのに、まだまだ出来ない」
落ち込んでジャンに話しかける。
ジャンはアルバードに懐いていた。ジャンだって寂しそうなのにわたしが落ち込んでいるとペロペロと頬を舐めてくる。
「もうくすぐったいわ」
「わんわん!」
「夏休みには帰ってくるって言ってたわ。それまで二人で待ってようね」
「ラフェ、俺だってアルがいなくて寂しいんだ。犬と二人で待つんじゃなくて俺も入れろ!」
「だってグレン様は王都へ行くことが度々あるじゃない。その時アルに会ってるんでしょう?」
「おーー、アルの奴、騎士見習いが忙しいみたいで朝も放課後も毎日騎士団の鍛錬に参加してるらしい。この領地に帰ってきた頃には立派な騎士になってると思う」
「ジャンわたし達もアルに会いたいわよね?」
「だけど王都には行かないんだろう?」
「……うん、一度でも会いに行ったらもう離れたくないと思ってしまうもの」
「俺のライバルは永遠にアルかな」
「わたしとアルの愛は簡単には失くならないわ」
「俺とアルとの友情だって永遠だ」
二人で笑いながら話をしてアルのいない寂しさを紛らわして過ごした。
時が流れアルバードが13歳になった時、アーバンから連絡が入った。
いつかはと覚悟していた。
エドワードとオズワルド様とアルバードが会ってしまうこと。
王都にいれば会ってしまう機会は増える。エドワードは、今は公爵家の騎士として働いていると聞いていた。アルバードは王宮騎士団の見習いなので接点は少ないとはいえ、やはり同じ騎士を目指せば出会う確率は高い。
それに2歳年下のオズワルド様とアルバードはいずれ同じ学校に通うことになるかもしれない。貴族の多い学校ではあるけど、平民も通うことはできる。
エドワードはとても優秀だった。アルバードもわたしに似ずに父親にそっくり。顔ももちろんだけど頭も良くて性格も穏やかで優しい。
多分オズワルド様も優秀な子に育っているだろう。
だから王都にいれば三人は何処かで会ってしまうだろう。わたし自身はアルバードに詳しくは説明はしていない。
だけどアルバードは聡い子なので聞かなくても周りの話を耳にして、ある程度分かってはいたみたいだった。
わたしの気持ちはもう関係ない。
アルバードももう13歳。あと2年経てば成人として働くこともできる。
騎士にもなれるし文官見習いとして働くこともできる。もちろん高等部に行き勉強をすることもできる。
貴族子息達は高等部へ行く人の方が多いけど、騎士になりたい人は成人になるとそのまま騎士の道を進む人も多い。
特に次男や三男のように家督を継げないものはやはり早くから騎士になり生活の基盤を作る人が多い。
エドワードもアーバンもそして二人の父親もそうして騎士を目指したのだ、
アルバードは逐一学校でのことや騎士見習いのことを手紙に書いて教えてくれる。
だけどエドワードのことは書けなかったみたい。
何故アーバンが?それはエドワードに聞いたらしい。
◆ ◆ ◆ エドワード
アーバンを誘い、夕食を食べようと食堂へ向かった。
オズワルドは俺の父と家でゆっくりと過ごしていた。
「アーバン、今日街中で破落戸に絡まれていた男の子達を助けたんだ」
俺はアーバンに酒を勧め、互いに酒を飲んだ。
飲まないと話せなかった。
「へぇ、で?どうしたの?」
「あっ、あ、あ、うん、まぁ三人だったんで簡単にやっつけたんだが……その男の子が俺にそっくりだった」
「アルに会ってしまったんだ」
アーバンはなんとも言えない顔をしていた。
「…………遠くからは何度も見かけた。何度も見ていた……いつも気づかないフリをしていつも会わないように避けてきた……」
俺はアルバードの顔を知っていた。
アーバンはちょくちょく叔父として会っているのは知っていたけど、俺自身は敢えてアーバンに尋ねたことはなかった。
ーーーどんな子なんだ?
ーーー素直そうだけど………
ーーー独りで王都に来て寂しくないのか?
知りたいことはたくさんあるのに………俺が記憶をなくして彼を切り捨ててしまったから会うことはできない。
当たり前だ、自業自得なんだといつも自分に言い聞かせていた。
それなのにやはり同じ王都にいれば会う機会は増える。
だけどアルバードは俺を見るのは初めてだったようだ。俺を見た時の驚いた顔。焦って目を逸らすのを見て俺も気が付かないように振る舞った。
オズワルドはアルバードの姿に気がついて「あっ」と小さな声が出た。
だけどオズワルドは何も聞かない、何も言わない。
俺が知らんぷりしてアルバードとすれ違った時もオズワルドは俺の手を握り一瞬力を込めたが、何も言わなかった。
そして今わたしの隣にはグレン様がいる。
いつもにこにこ笑いわたしの頭を撫でてくれる。
本当は彼といて嬉しい……はずなのにわたしの心は晴れない。大切なアルバードがそばにいない。
もうそれだけで寂しくて……
「子離れしなきゃいけないのに、まだまだ出来ない」
落ち込んでジャンに話しかける。
ジャンはアルバードに懐いていた。ジャンだって寂しそうなのにわたしが落ち込んでいるとペロペロと頬を舐めてくる。
「もうくすぐったいわ」
「わんわん!」
「夏休みには帰ってくるって言ってたわ。それまで二人で待ってようね」
「ラフェ、俺だってアルがいなくて寂しいんだ。犬と二人で待つんじゃなくて俺も入れろ!」
「だってグレン様は王都へ行くことが度々あるじゃない。その時アルに会ってるんでしょう?」
「おーー、アルの奴、騎士見習いが忙しいみたいで朝も放課後も毎日騎士団の鍛錬に参加してるらしい。この領地に帰ってきた頃には立派な騎士になってると思う」
「ジャンわたし達もアルに会いたいわよね?」
「だけど王都には行かないんだろう?」
「……うん、一度でも会いに行ったらもう離れたくないと思ってしまうもの」
「俺のライバルは永遠にアルかな」
「わたしとアルの愛は簡単には失くならないわ」
「俺とアルとの友情だって永遠だ」
二人で笑いながら話をしてアルのいない寂しさを紛らわして過ごした。
時が流れアルバードが13歳になった時、アーバンから連絡が入った。
いつかはと覚悟していた。
エドワードとオズワルド様とアルバードが会ってしまうこと。
王都にいれば会ってしまう機会は増える。エドワードは、今は公爵家の騎士として働いていると聞いていた。アルバードは王宮騎士団の見習いなので接点は少ないとはいえ、やはり同じ騎士を目指せば出会う確率は高い。
それに2歳年下のオズワルド様とアルバードはいずれ同じ学校に通うことになるかもしれない。貴族の多い学校ではあるけど、平民も通うことはできる。
エドワードはとても優秀だった。アルバードもわたしに似ずに父親にそっくり。顔ももちろんだけど頭も良くて性格も穏やかで優しい。
多分オズワルド様も優秀な子に育っているだろう。
だから王都にいれば三人は何処かで会ってしまうだろう。わたし自身はアルバードに詳しくは説明はしていない。
だけどアルバードは聡い子なので聞かなくても周りの話を耳にして、ある程度分かってはいたみたいだった。
わたしの気持ちはもう関係ない。
アルバードももう13歳。あと2年経てば成人として働くこともできる。
騎士にもなれるし文官見習いとして働くこともできる。もちろん高等部に行き勉強をすることもできる。
貴族子息達は高等部へ行く人の方が多いけど、騎士になりたい人は成人になるとそのまま騎士の道を進む人も多い。
特に次男や三男のように家督を継げないものはやはり早くから騎士になり生活の基盤を作る人が多い。
エドワードもアーバンもそして二人の父親もそうして騎士を目指したのだ、
アルバードは逐一学校でのことや騎士見習いのことを手紙に書いて教えてくれる。
だけどエドワードのことは書けなかったみたい。
何故アーバンが?それはエドワードに聞いたらしい。
◆ ◆ ◆ エドワード
アーバンを誘い、夕食を食べようと食堂へ向かった。
オズワルドは俺の父と家でゆっくりと過ごしていた。
「アーバン、今日街中で破落戸に絡まれていた男の子達を助けたんだ」
俺はアーバンに酒を勧め、互いに酒を飲んだ。
飲まないと話せなかった。
「へぇ、で?どうしたの?」
「あっ、あ、あ、うん、まぁ三人だったんで簡単にやっつけたんだが……その男の子が俺にそっくりだった」
「アルに会ってしまったんだ」
アーバンはなんとも言えない顔をしていた。
「…………遠くからは何度も見かけた。何度も見ていた……いつも気づかないフリをしていつも会わないように避けてきた……」
俺はアルバードの顔を知っていた。
アーバンはちょくちょく叔父として会っているのは知っていたけど、俺自身は敢えてアーバンに尋ねたことはなかった。
ーーーどんな子なんだ?
ーーー素直そうだけど………
ーーー独りで王都に来て寂しくないのか?
知りたいことはたくさんあるのに………俺が記憶をなくして彼を切り捨ててしまったから会うことはできない。
当たり前だ、自業自得なんだといつも自分に言い聞かせていた。
それなのにやはり同じ王都にいれば会う機会は増える。
だけどアルバードは俺を見るのは初めてだったようだ。俺を見た時の驚いた顔。焦って目を逸らすのを見て俺も気が付かないように振る舞った。
オズワルドはアルバードの姿に気がついて「あっ」と小さな声が出た。
だけどオズワルドは何も聞かない、何も言わない。
俺が知らんぷりしてアルバードとすれ違った時もオズワルドは俺の手を握り一瞬力を込めたが、何も言わなかった。
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