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番外編   アルバード①

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 12歳になった僕は王都の学校に通うようになった。

 アレックス様のタウンハウスから通ったらいいと声を掛けてくださったけど、寮に入ることにした。

 お母さんは今も辺境地で裁縫を教えながら暮らしている。
 お母さんに金銭的な迷惑をかけたくなくて、頑張って特待生として学校に通えるようになった。だから学費は免除、寮費もタダ。

 今までたくさんの愛情をみんなからもらって生きてきた。今度は勉強を頑張って立派になって少しずつでもみんなに返すつもりだ。

 僕が何度もお母さんの背中を押して、やっとグレン様と再婚することになった。
 あんなにお互い愛し合っているのに、ずっと思い合っているのに、なんで二人は結ばれないんだろう。

 ずっと不思議だった。

 グレン様が顔を出しに来るとあんなに嬉しそうな顔をするくせに。帰る時には悲しそうな顔をしていてもそれを隠すように笑って誤魔化す。

 グレン様だっていつも愛おしそうにお母さんを見ている。

『アレックス様、大人ってなんであんなにめんどくさいんだろう?好きならさっさと好きだって言えばいいのに』

『大人だから子供みたいに素直になれないんだ、長い目で見てやれ。いつかくっつくと思うから』

 本当に、やっと二人がくっついた。再婚だから結婚式は挙げないらしい。

 グレン様の屋敷にはお母さんは暮らさないらしい。あそこはグレン様の亡くなった奥様の大切な場所。

 だからグレン様はお母さんの家に住むらしい。

 ちょっと狭いので流石に今のままでは暮らせないので、隣の空き地に新しい家を建てるんだって。

 今の家は裁縫教室としてそのまま残すらしい。

 僕の夏季休暇には出来上がっているからと手紙が来た。ちゃんと僕の部屋もある。楽しみだな。



「アル!お前、平民なんだろう?」

「うん、そうだよ?それが何か?」

「この学校は平民の数が少ないんだ。ほとんど貴族の子供ばかりだ。平気なのか?」

 僕に意地悪をするのかと思っていた伯爵令息のキズリー。
 何故か初めから僕を気に入って仲良くしてくれた。おかげで虐めなんて全くなくて毎日が楽しい学校生活を送れた。

「キズリー、僕学校を卒業したら騎士になりたいんだ。だからいまも騎士見習いとして王城の騎士部隊の鍛錬に通ってるんだ」

「あそこは試験を受けないと入れないところだろう?」

「うん、子供の頃から騎士のみんなとずっと鍛錬してたから剣は割と得意なんだ」

「へぇ、すっげえな!アルって頭もいいのに剣も出来るなんて!俺は勉強が嫌いなんだ」

「キズリーは誰にでも優しいし、明るいし、平民の僕と仲良くなってくれた。最高にいい奴だと思う」

「へへっ、アルってすっごい目立ったから気になったんだ。綺麗な顔をしてるし、頭もいいし、絶対友達になったら楽しそうだなって思ったんだ」

 キズリーのおかげでたくさんの友達が出来た。



 学校が終わり騎士部隊の見習いの子達が集まる鍛錬場で最近よくいろんな人が僕の顔を見にくる。

 理由はわかってる。

 本当の父さんに僕がそっくりだから。
 アーバンおじさんにも僕は似てるけど、父さんとはそっくりらしい。もちろん会ったことはないけど。

 僕達を捨てた人。

 記憶を失くしてしまったとは言え、僕達を選ぶことはなかった。みんな僕にはハッキリと教えてくれない、言葉を濁す。だけど噂で耳にする。

 そんな噂話をある程度聞いて、集めれば大体のことはわかる。
 僕には2歳年下の元貴族の弟がいる。
 一時期は孤児院で暮らしたこともあるらしい。本当の母親に虐待されていたとか。
 今は父さんと二人暮らしをしている。

 小さい頃はアーバンおじさん達も近くに住んでいてみんなに面倒を見てもらって暮らしていたらしい。
 母親は虐待して、弟が孤児院に入ってからその後男の人と外国へ行ってしまったと聞いた。

 僕達は父さんに捨てられたけど、弟は母親に捨てられた。

 それを知ってなんだかすっごく大人になるのが嫌になった。大人達は好きに生きていいかもしれない。だけど子供はなんの力もなくて大人に振り回されても何も出来ない。

 僕はずっと弟が気になって仕方がない。そして僕を捨てた父さんのことも。

 鏡を見ると僕に似ていると言うからなんとなく想像してしまう。どんな顔をしているのだろう。
 怖いのかな。優しいのかな。
 弟はどんな子なんだろう。

 会いたい……そう思ったらお母さんは悲しむよね……
 やっとグレン様と幸せになったのに。僕が波風立てるなんていけないことだよね。

 ずっとそう思って過ごしていた。

 だけど……本当に偶然だけど出会ってしまったんだ。



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