82 / 146
82話
しおりを挟む
◇ ◆ ◇ アーバン
急いで王都に戻った俺はラフェの家へ向かったがやはりそこには誰もいなかった。
「まだ釈放されてはいないのか」
騎士隊の建物へと向かい自分が騎士団所属だと説明したが会わせてもらえない。
「ラフェが我が子を殺すわけがない、父親が仕事中亡くなって必死でお腹の子供を守り産んで育てているんだ」
警備隊の友人に直談判した。
そいつは警備隊の第一部隊の副隊長をしている、それなりに力はあるはずだ。
しかし、俺の話を聞くと困った顔をした。
「アーバン、俺では力になれない。今回の事件は俺たち低位貴族の力では何も出来ない。
ある程度力のある貴族が関わってる、だからお前の義姉だったラフェさんは捕まっても一切事情聴取もないし、建物の奥の収容部屋に入れられてそのままにされているんだ。
外に出すのは簡単には出来ないだろう」
「その貴族とは誰なんだ?まさか……コスナー伯爵?」
「それはあの例の薬が売られている場所の領主だろう?」
「違うのか?」
「悪いが答えられない。俺もまだ家族がいる、悪いが自分の身は守りたいからな」
「首を縦か横に振ってくれるだけでいい」
答えは…………
◆ ◇ ◆ グレン
アルが元気になってきて笑顔を取り戻し始めた頃、コスナー領で動いてくれている騎士団の副隊長から報告がきた。
俺もアルの事件を王都で調べて、向こうの事件と照らし合わせている。
薬は同じだが、向こうはサリナル商会が主犯だとわかっている。
だがこっちはジミーというコスナー伯爵のところの執事見習いが行なった犯行だが未だに口を割ろうとしないらしい。
ただ、向こうの事件は………
コスナー伯爵の娘のシャーリー夫人の男の友人達の軽い遊びから始まったことがわかった。
元々麻薬としてではなく疲れた時に元気になれる強壮剤として売られていた薬。
それを男達は多量に飲めば麻薬として使え、“楽しくなる”ことを知った。
少量なら薬としても使われていたが、それをたくさん一気に飲めば麻薬になってしまう怖い薬。
それをたまたま店主と仲良くなったシャーリーの友人であるワイルズがいつでも買えればいいなと思い、コスナー領の領主の娘であるシャーリーをうまいこと騙して出店させたらしい。
シャーリーにはいい化粧品や薬を扱う商会だと言っていたらしい。だからシャーリーも商品を気に入って快諾した。
もちろん実際取り扱っている商品は皆安心して使えるものばかりだった。
この麻薬をコスナー領で売り始めるまでは。
ワイルズは店主に儲け話があると勧めた。店主は最初は驚き断ったらしい。
店主は確かに大量に飲めば体に負担がかかり中毒になることはわかっていた。だからこそ慎重に売っていた。
身元がきちんとした人からの紹介ではないと売らないし、量も適正量しか売っていなかった。
それが麻薬として売り出したのは、実家の大商会と言われるところへ、少しでも追いつき追い越したいと思っていたからだった。
兄と意見が合わず独立したがやはり比べられればまだまだ力不足で売り上げは足元にも及ばない。
焦っていたところに転がり込んできたおいしい話、何度か良心もあり断った。……が、少しだけならと……甘い心が誘惑に負けてしまい売り始めた店主。
初めはもちろん口が堅い人を選んで売っていた。
はずが……気がつけば売り上げがかなり上がってくればあと少しあと少しと、客が増えてきた。そうなればワイルズ達も店主を脅してさらに利益を貪った。
その結果……コスナー領はたくさんの麻薬中毒患者が増えていった。
平民にはお金がかからないように少ない量を飲み続けらように売った。
気がつけば毎日飲まなければ落ち着かない中毒患者になっていった人達が増えることになった。
お金があり、薬を楽しみ、たくさんの量を飲んでいた人は完全な麻薬の中毒患者になっていた。
ワイルズ達は店主が怖くなって止めようとするのを
「今更自分だけ逃げられると思うな、俺たちはバレていないから逃げられるがあんたは表立って売ってるんだ、逃げられるわけがないだろう。だから悪い噂は俺たちの親が陰で揉み消してくれる、安心して薬を売ってくれ」
と言ったらしい。
シャーリー夫人の男の友人達は貴族という地位を使い、金を握らせコスナー領の警備隊を黙認させていたらしい。
店主は亡くなった姉の孫が自分が売った薬で死にかけていたことを知ってさすがにショックを受けていた。
「この薬をまさか3歳の子供に使うなんて」
「考えれば有り得ることでしょう?」
副隊長は冷たく店主を見下ろした。
「わたしは……いい薬を作り人々に広めていたつもりが……いつの間にか人を苦しめる薬を作り、自身が金に目が眩んで溺れてしまったんですね」
店主は今捕まってはいるが、患者達に解毒するための薬を薬師達と共に作る作業に追われているらしい。
そして……シャーリーの男友達は今次々に捕まっている。
突然大金が入り羽振りが良くなった男達は、さらに遊びまくっていたため簡単に足がついたらしい。
急いで王都に戻った俺はラフェの家へ向かったがやはりそこには誰もいなかった。
「まだ釈放されてはいないのか」
騎士隊の建物へと向かい自分が騎士団所属だと説明したが会わせてもらえない。
「ラフェが我が子を殺すわけがない、父親が仕事中亡くなって必死でお腹の子供を守り産んで育てているんだ」
警備隊の友人に直談判した。
そいつは警備隊の第一部隊の副隊長をしている、それなりに力はあるはずだ。
しかし、俺の話を聞くと困った顔をした。
「アーバン、俺では力になれない。今回の事件は俺たち低位貴族の力では何も出来ない。
ある程度力のある貴族が関わってる、だからお前の義姉だったラフェさんは捕まっても一切事情聴取もないし、建物の奥の収容部屋に入れられてそのままにされているんだ。
外に出すのは簡単には出来ないだろう」
「その貴族とは誰なんだ?まさか……コスナー伯爵?」
「それはあの例の薬が売られている場所の領主だろう?」
「違うのか?」
「悪いが答えられない。俺もまだ家族がいる、悪いが自分の身は守りたいからな」
「首を縦か横に振ってくれるだけでいい」
答えは…………
◆ ◇ ◆ グレン
アルが元気になってきて笑顔を取り戻し始めた頃、コスナー領で動いてくれている騎士団の副隊長から報告がきた。
俺もアルの事件を王都で調べて、向こうの事件と照らし合わせている。
薬は同じだが、向こうはサリナル商会が主犯だとわかっている。
だがこっちはジミーというコスナー伯爵のところの執事見習いが行なった犯行だが未だに口を割ろうとしないらしい。
ただ、向こうの事件は………
コスナー伯爵の娘のシャーリー夫人の男の友人達の軽い遊びから始まったことがわかった。
元々麻薬としてではなく疲れた時に元気になれる強壮剤として売られていた薬。
それを男達は多量に飲めば麻薬として使え、“楽しくなる”ことを知った。
少量なら薬としても使われていたが、それをたくさん一気に飲めば麻薬になってしまう怖い薬。
それをたまたま店主と仲良くなったシャーリーの友人であるワイルズがいつでも買えればいいなと思い、コスナー領の領主の娘であるシャーリーをうまいこと騙して出店させたらしい。
シャーリーにはいい化粧品や薬を扱う商会だと言っていたらしい。だからシャーリーも商品を気に入って快諾した。
もちろん実際取り扱っている商品は皆安心して使えるものばかりだった。
この麻薬をコスナー領で売り始めるまでは。
ワイルズは店主に儲け話があると勧めた。店主は最初は驚き断ったらしい。
店主は確かに大量に飲めば体に負担がかかり中毒になることはわかっていた。だからこそ慎重に売っていた。
身元がきちんとした人からの紹介ではないと売らないし、量も適正量しか売っていなかった。
それが麻薬として売り出したのは、実家の大商会と言われるところへ、少しでも追いつき追い越したいと思っていたからだった。
兄と意見が合わず独立したがやはり比べられればまだまだ力不足で売り上げは足元にも及ばない。
焦っていたところに転がり込んできたおいしい話、何度か良心もあり断った。……が、少しだけならと……甘い心が誘惑に負けてしまい売り始めた店主。
初めはもちろん口が堅い人を選んで売っていた。
はずが……気がつけば売り上げがかなり上がってくればあと少しあと少しと、客が増えてきた。そうなればワイルズ達も店主を脅してさらに利益を貪った。
その結果……コスナー領はたくさんの麻薬中毒患者が増えていった。
平民にはお金がかからないように少ない量を飲み続けらように売った。
気がつけば毎日飲まなければ落ち着かない中毒患者になっていった人達が増えることになった。
お金があり、薬を楽しみ、たくさんの量を飲んでいた人は完全な麻薬の中毒患者になっていた。
ワイルズ達は店主が怖くなって止めようとするのを
「今更自分だけ逃げられると思うな、俺たちはバレていないから逃げられるがあんたは表立って売ってるんだ、逃げられるわけがないだろう。だから悪い噂は俺たちの親が陰で揉み消してくれる、安心して薬を売ってくれ」
と言ったらしい。
シャーリー夫人の男の友人達は貴族という地位を使い、金を握らせコスナー領の警備隊を黙認させていたらしい。
店主は亡くなった姉の孫が自分が売った薬で死にかけていたことを知ってさすがにショックを受けていた。
「この薬をまさか3歳の子供に使うなんて」
「考えれば有り得ることでしょう?」
副隊長は冷たく店主を見下ろした。
「わたしは……いい薬を作り人々に広めていたつもりが……いつの間にか人を苦しめる薬を作り、自身が金に目が眩んで溺れてしまったんですね」
店主は今捕まってはいるが、患者達に解毒するための薬を薬師達と共に作る作業に追われているらしい。
そして……シャーリーの男友達は今次々に捕まっている。
突然大金が入り羽振りが良くなった男達は、さらに遊びまくっていたため簡単に足がついたらしい。
48
お気に入りに追加
3,823
あなたにおすすめの小説
大好きなあなたを忘れる方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。
魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。
登場人物
・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。
・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。
・イーライ 学園の園芸員。
クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。
・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。
・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。
・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。
・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。
・マイロ 17歳、メリベルの友人。
魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。
魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。
ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

愛してくれない婚約者なら要りません
ネコ
恋愛
伯爵令嬢リリアナは、幼い頃から周囲の期待に応える「完璧なお嬢様」を演じていた。ところが名目上の婚約者である王太子は、聖女と呼ばれる平民の少女に夢中でリリアナを顧みない。そんな彼に尽くす日々に限界を感じたリリアナは、ある日突然「婚約を破棄しましょう」と言い放つ。甘く見ていた王太子と聖女は彼女の本当の力に気づくのが遅すぎた。

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。
MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。
記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。
旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。
屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。
旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。
記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ?
それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…?
小説家になろう様に掲載済みです。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる