【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

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72話

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 ◆ ◆ ◆  エドワード


 ジミーが小さな子供に薬を飲ませて殺そうとした?

「薬はジミーが商会から買ったのですか?それとも商会の誰かに頼まれてその子を?そんな小さな子供を何故狙ったのですか?」

「貴方は記憶がないと聞いております」

 これは隠しても仕方がない。別に悪いことをしたわけではない。だから正直に話すことにした。

「はい、そうです。以前のことは何も覚えておりません……ジミーにはわたしの記憶がなくなる前のことを調べて欲しいと頼み王都へ行ってもらったのです」

「以前のことは何かご存知なのですか?」

「………わたしは王立騎士団に所属していたらしいのです。そして辺境伯領の近くでの戦いの時に子供を庇って川に流されて記憶をなくしたと、わたしを知っている人に聞きました」

「それ以外のことは?」
 この副隊長に自分のプライベートなことをどこまで話すべきなのか。だが商会を領地に引き入れたのも、ジミーを王都へやったのも俺だ。

「わたしは今妻と息子がいます。ただ以前のわたしはエドワード・バイザーという名前だったそうです。そして両親や弟……妻…もいたそうです。なのでいまどうなっているのか、自分の過去を含め知りたくてジミーに調べてもらうように頼みました」

「その妻には息子がいることはご存知のようですね?」

 俺が妻で言い淀んだ事が分かったようだ。
 そう俺には記憶を失う前の妻との間に子供がいるらしい。ただ一度も会ったことがなく、俺が行方不明になってから産まれたとアダムさんが教えてくれた。

 だか詳しいことはわからない。アダムさんも詳しくは知らないと言っていた。だから調べたいと思ったんだ。

「………知っています」

「そうですか……薬で殺されかけた子供の名前は………アルバードくんと言います、素直で明るくてとても可愛い男の子です。お母さんが大好きで本当に仲の良い親子です。あの二人が何をしたというのでしょう?
 何故殺されなければいけない?
 何故母親が殺人犯で捕まっているんだ?
 何故なんでしょう?」

 副隊長は俺を睨みつけた。

 ア、ルバード?
 それは俺の息子だと言う子供の名前?

 まさか?……そんな……

 俺の顔色が変わったことが分かった副隊長はさらに続けた。

「俺はグレン様と一緒によくアルと会っていました。俺達の顔を見ると舌ったらずな話し方でいつもニコニコ笑いながら駆け寄って来て抱きついて来ました。
 近所の人たちに愛され、貧しい中二人は必死で生きていたんです。俺たちは偶然知り合い彼女達を知った者達は二人の生活を陰ながら応援していました」

「………何故その子は狙われたんでしょう?」
 俺は震える口を無理やり動かしながら聞いた。

「俺たちが知りたいんです。ジミーを今取り調べているのですが一言も話そうとしません。貴方は何かご存知ありませんか?」

 副隊長が俺の顔をじっと見つめた。


 俺は首を横に振った。

「わかりません……ジミーが俺を恨んでいるのなら、苦しめたいのなら、息子のオズワルドの方が手っ取り早いと思います」

「そうですね……ジミーのことは今からしっかりと調べ上げるつもりです。
 それから、この商会は貴方の妻であるシャーリー・コスナー夫人からの要望だったと聞いておりますが奥様にも一度こちらに来ていただきお話を聞かせていただきたいと思っております」

「妻には関係ないと思いますが?」

 何故シャーリーを取り調べないといけない?妻は確かに商会の客でこの領地に出店させたいと言い出したが……何か企んだりしたりわけではない。

「妻の友人の子爵の次男であるワイルズ殿からの紹介でサリナル商会を知ったんです」

「はい、ワイルズ殿にももちろん話を聞くつもりでお願いしております」
 俺の顔を副隊長はまたじっと見た。何か言いたそうに考えているようだった。

「失礼ですが、貴方は生真面目で領主代理としても頑張ってこられたようですが……一番大事なことを見ようとせず目を逸らしていませんか?」

「はっ?何を言ってるんですか?」

「失礼を承知で言っております。もう一度周りをよく見て考えてみてください。目を逸らさずに、お願いします」

 そして副隊長は部屋を退出した。

 俺はわからなくなった。

 信頼していたジミーが子供を殺そうとしたこと。それも俺の息子?実感が全く湧かないがオズワルドとは別のもう一人の息子。

 副隊長はその息子のことをよく知っているようだった。

 どんな子なんだろう。
 まだ生きてはいるようだ。

 だが死にかけていると聞いた。

 俺は屋敷に帰り仕事をしなければいけないのに、『アルバード』のことが気になり仕事が捗らなかった。

 オズワルドが「とおしゃま」とシャーリーと会いに執務室に顔を出した。

 その時俺はどんな顔をしたのだろうか。
 笑顔で二人と話せたのだろうか。
 何を話したのだろうか。

 ぼんやりしていた。
 ここにあるはずの幸せが色褪せていくのが分かった。








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