【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

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54話

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 ◆ ◆ ◆  エドワード

「やはり商会が怪しい薬を売っているのか?」

 全く気が付かなかった。

 この商会はシャーリーのお気に入りの店で、隣国から我が領地に出店してきた。

 シャーリーはここで薬はもちろん化粧品なども買っている。

 特に問題はないと思っていたし、シャーリーの機嫌が良くなるのならそれでいいと思っていた。
 きちんと税金も納めるし、悪い評判も聞かない。

 だがそれは考えてみたら書面上のことで俺自身が見た訳でも調べた訳でもなかった。

 今頃になって、決まった客にだけ少しずつ怪しい薬を売っていたと気がつくなんて。

 薬は麻薬だった。ただ強いものではなく軽い症状でたくさん使わなければ体が軽くなり薬品として使っても問題ない成分らしい。
 その成分の薬を普通より増やした薬は、少しずつ手放せなくなる。

 そんな薬が領地で中毒者が少しずつ増えてきた。

 俺が整備を進めた新しい公園で、疲れた様に蹲る男。その姿は異常に見える。

 服装は仕立てのいい生地でそれなりにお金を持っていそうな人なのに、疲れ切って服はヨレヨレになって涎を垂らして蹲っている姿に、道ゆく人たちは避けて遠目で見ていた。

 俺はその男に声をかけて、街の警備隊に頼み診療所へ連れて行くようにしてもらった。

「大丈夫ですか」

「………あっ………あっ………へへへっ」
 目は虚で涎を垂らしながらヘラヘラと笑っていた。
 警備隊に両腕を支えられフラフラしながら馬車に乗せられた。



 街の中を歩くとそんなことが度々あった。

 俺自身も商会に直接顔を出したが、怪しいところはなかった。

「コスナー様ようこそいらっしゃいました。何か必要なものがありますか?お疲れでしたらこちらの薬はどうですか?よく効きますよ」

 そう言って勧められたのは瓶に入った緑色の液だった。

「これは?」

「よもぎやとうもろこしのひげなどを煎じたものです。疲れなどに効きます。あと何が入っているかは企業秘密ですがこの国では使われていない薬草からできています」

 俺は眉を寄せてじっとその液体を見つめた。

「ご心配ならわたしが少し飲んで見せましょう」
 そう言うと店主が瓶を持ちコップに少量の液を注ぎ目の前でぐいっと飲み干した。

「ふー、味はあまり美味しいとは言えないのですが効果はとても効くと評判なんです」

「わかった、ではそれを買おう」

「ありがとうございます」ニヤッと笑い店主がお金を受け取った。

 金額的には少し高額だが、金がある者ならこれくらいの値段なら買うかもしれない。


 持って帰ったその液体を、薬師に調べてもらった。その結果、この国にはない薬草だが、本には他国の薬草として載っていると言っていた。

 薬師もなかなか手に入らないが欲しいと思っていた薬草だと少し興奮していた。

「そんなに珍しいのか?」

「薬師なら喉から手が出るほど欲しがると思います。これがそんな安い値段で買えるなんて!わたしも買いに行きます!」

 街中で酷い姿で蹲る男を何人も見ている。しかしそれがこの商会と繋がらない。

 俺は何か見落としているのか。

 みんなどうやって買って手に入れているのだろう。

 細かい入手の仕方がわからないでいた。

 そんなイライラした状態が続く中、ジミーの報告書が上がってきた。

 俺はその報告書を震える手で静かに読んだ。








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