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48話 ラフェ
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◇ ◇ ◇ ラフェ
馬車で連れて来たアルバード。
急ぎ客室用の部屋に連れて行かれた。
アルバードは熱で意識朦朧としていた。
お医者様が待機してくれていて「みんなしばらく出ていてください」と言われて廊下で待っていた。
顔を知っている執事さんが
「隣の部屋でお待ちください、お茶でも用意しますから」と言ってくださった。
「ごめんなさい、ご迷惑なのはわかっています。でもここで待たせてください」
隣の部屋でゆっくり待つなんて出来ない。
熱で苦しんでいるのにわたしだけのんびりとなんて……
「ラフェ様、お気持ちはわかりますが貴女のお顔は真っ青です、それに睡眠も取れていないのでしょう?」
「アルバードは……苦しんでいるんです……わたしだけ寛ぐなんて出来ません!」
「アルバード様が意識を取り戻した時にそんな顔をしていたら逆に心配しますよ?今はお医者様に任せてお待ちください」
執事さんに隣の部屋へ連れて行かれた。
ソファに座らされると温かい紅茶が出された。
ミルクとたっぷりの蜂蜜が入った甘い紅茶はなんだか胸の奥までポカポカしてきて、関係のないわたしを受け入れてくれたこの屋敷の人達に感謝の気持ちが湧いてきて涙がポロポロ溢れ出した。
「うっ……ひっ……」
「ラフェ様、よく頑張りました。今は少しだけここでお眠りください」
わたしは疲れて眠ってしまっていた。
「ラフェ様、起きてください」
「あっ……すみません、眠ってしまっていたみたいです」
「先ほど診察が終わりました。お医者様からお話があります」
執事さんの顔がなんだか浮かない顔をしていた。嫌な予感がする。
「アルは?どうなったの?」
「少しお待ちください、アルバード様は今まだ治療中です。先にお医者様からのお話しを聞いてください」
「……はい」
お医者様が部屋に入ってきた。
「アルバードは大丈夫なのでしょうか?」
「高熱の原因は……はっきりとは言えませんが最近隣国から入ってきた薬物による症状ではないかと思われます」
「薬物?アルバードがですか?」
「はい、このことは国の方へ報告しないといけません。一応母親である貴女も取り調べられることになると思います」
「わたしが?取り調べ?アルバードのそばを離れないといけないのですか?」
「あんな小さな子供があんな危険な薬物を接種してしまったことは、母親の責任を問われます。もしかしたら貴女が飲ませたかもしれないと疑うことも出来ます」
「わたしがアルを殺そうとしたと言うのですか?絶対にあり得ません!!」
「すみません、医者としては疑わざるを得ません。今から貴女は警備隊に連れられて取り調べが行われることになります」
「アルに、アルに会わせてください。ほんの少しでいいのです、顔を見てからでは駄目でしょうか?」
「決まりなのです、もし犯人ならアルバード君を危険な目に遭わせることになりかねません。このまま連行されることになります」
わたしは首を横に振った。
「お願いです、一目でいいのです」
「アルバード君はまだ危険な状態です。このまま放っておけば死んでいたでしょう。ここに連れてきたからなんとか助けることができるかもしれません。でもまだ予断を許さない状態なのです」
「嘘……助かるんじゃないのですか?どうして?やだ、アル、アル、アルに会いたい、もしかしたら死ぬかもしれない??そんな馬鹿な話あるわけないじゃないですか!!」
嘘だ、信じない、わたしが代わりに死ぬから、アルを助けて!!!
わたしは両脇を警備隊に掴まれて引きずられるように屋敷を出て行った。
アルに会いたくてなんとか抵抗したが警備隊の人に「静かにしろ!」と怒鳴られ体を壁にドンっとぶつけられた。
完全に犯人だと思われている。
いつも差し入れしてくれる使用人さんや騎士の人たちは
「そんな乱暴に連れて行かないでください」
「ただの事情聴取でしょう?犯人なわけではないのですから!」
と訴えてくれたがわたしはまるでアルバードを殺そうとした母親のように思われ、冷たい目で警備隊の人たちは見ていた。
アルが死ぬかもしれない。助からないかもしれない。
それなのにそばに居てあげられない。
わたしは引きずられ馬車に無理やり押し込められた。
ただ信じられない現実を受け止めることすら出来なくて、俯いたままずっと床を見つめ続けていた。
馬車で連れて来たアルバード。
急ぎ客室用の部屋に連れて行かれた。
アルバードは熱で意識朦朧としていた。
お医者様が待機してくれていて「みんなしばらく出ていてください」と言われて廊下で待っていた。
顔を知っている執事さんが
「隣の部屋でお待ちください、お茶でも用意しますから」と言ってくださった。
「ごめんなさい、ご迷惑なのはわかっています。でもここで待たせてください」
隣の部屋でゆっくり待つなんて出来ない。
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「ラフェ様、お気持ちはわかりますが貴女のお顔は真っ青です、それに睡眠も取れていないのでしょう?」
「アルバードは……苦しんでいるんです……わたしだけ寛ぐなんて出来ません!」
「アルバード様が意識を取り戻した時にそんな顔をしていたら逆に心配しますよ?今はお医者様に任せてお待ちください」
執事さんに隣の部屋へ連れて行かれた。
ソファに座らされると温かい紅茶が出された。
ミルクとたっぷりの蜂蜜が入った甘い紅茶はなんだか胸の奥までポカポカしてきて、関係のないわたしを受け入れてくれたこの屋敷の人達に感謝の気持ちが湧いてきて涙がポロポロ溢れ出した。
「うっ……ひっ……」
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わたしは疲れて眠ってしまっていた。
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「あっ……すみません、眠ってしまっていたみたいです」
「先ほど診察が終わりました。お医者様からお話があります」
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「アルは?どうなったの?」
「少しお待ちください、アルバード様は今まだ治療中です。先にお医者様からのお話しを聞いてください」
「……はい」
お医者様が部屋に入ってきた。
「アルバードは大丈夫なのでしょうか?」
「高熱の原因は……はっきりとは言えませんが最近隣国から入ってきた薬物による症状ではないかと思われます」
「薬物?アルバードがですか?」
「はい、このことは国の方へ報告しないといけません。一応母親である貴女も取り調べられることになると思います」
「わたしが?取り調べ?アルバードのそばを離れないといけないのですか?」
「あんな小さな子供があんな危険な薬物を接種してしまったことは、母親の責任を問われます。もしかしたら貴女が飲ませたかもしれないと疑うことも出来ます」
「わたしがアルを殺そうとしたと言うのですか?絶対にあり得ません!!」
「すみません、医者としては疑わざるを得ません。今から貴女は警備隊に連れられて取り調べが行われることになります」
「アルに、アルに会わせてください。ほんの少しでいいのです、顔を見てからでは駄目でしょうか?」
「決まりなのです、もし犯人ならアルバード君を危険な目に遭わせることになりかねません。このまま連行されることになります」
わたしは首を横に振った。
「お願いです、一目でいいのです」
「アルバード君はまだ危険な状態です。このまま放っておけば死んでいたでしょう。ここに連れてきたからなんとか助けることができるかもしれません。でもまだ予断を許さない状態なのです」
「嘘……助かるんじゃないのですか?どうして?やだ、アル、アル、アルに会いたい、もしかしたら死ぬかもしれない??そんな馬鹿な話あるわけないじゃないですか!!」
嘘だ、信じない、わたしが代わりに死ぬから、アルを助けて!!!
わたしは両脇を警備隊に掴まれて引きずられるように屋敷を出て行った。
アルに会いたくてなんとか抵抗したが警備隊の人に「静かにしろ!」と怒鳴られ体を壁にドンっとぶつけられた。
完全に犯人だと思われている。
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「そんな乱暴に連れて行かないでください」
「ただの事情聴取でしょう?犯人なわけではないのですから!」
と訴えてくれたがわたしはまるでアルバードを殺そうとした母親のように思われ、冷たい目で警備隊の人たちは見ていた。
アルが死ぬかもしれない。助からないかもしれない。
それなのにそばに居てあげられない。
わたしは引きずられ馬車に無理やり押し込められた。
ただ信じられない現実を受け止めることすら出来なくて、俯いたままずっと床を見つめ続けていた。
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