【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

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34話  アーバン

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 ◇ ◆ ◇  アーバン

 母上は少し歪んでいる。
 考え方もそして……表情も。

 精神的におかしくなっているのだろう。

 お金に常に追われているからなのか、それともお金に溺れているからなのか。

 兄貴のことも支離滅裂でよくわからない。

 訪れたのはどこの伯爵家の執事なのか。

 本当に兄貴が生きているのか。

 兄貴の死亡保証金や遺族給付金がどうなっているのか。

 今まで母上が全てお金の管理はしていたので内容がよくわからない。

 母上が疲れて眠ってしまっている間に俺は執務室に行き手当たり次第書類をかき集めた。

 何か手掛かりはないのか。調べ始めたら父上が疲れて帰って来た。


「お金は借りて来た。この屋敷が売れたらすぐに返済する約束になっている。三年ほど前にも借りに妻が来たらしい。その時は一年後に返済されたと言っていた。それからもちょくちょく借りにくるからもう貸さないと断ったらしい」

「母上は他にも借金があるようです。さらに兄貴のことですが…………」

 俺が今聞いた話を父上にすると真っ青な顔をして驚いていた。


「エドワードが生きている?あいつはそれなのに追い返した?生きているのに給付金を受け取っているのか?」

 突然過ぎて、頭の中で情報を処理しきれなくなっているようだ。

「父上、今調べられることを調べています。友人に騎士団の事務方がいるので兄貴のことも探ってみます」

「もうここまで来たら全て隠すことはできないだろう。だが、ラフェにはすまないことをしたな。家を追い出して……エドワードが生きていることも知らずに暮らしてるんだろうな」

「俺たちは今の生活を大切するあまりラフェとアルバードを犠牲にしてしまいました。気にはなっていても場所を知っていてもなにもしてやれなかった」

「アーバンはアーバンなりに動いていただろう?」

「ラフェが仕事を貰っている洋服屋に騎士団のの制服を作るように手配したのはお前だろう?」

「ご存知だったのですか?」

「突然仕立て屋が変わったからな、流石に調べさせてもらった。だがラフェの作る制服はとても着心地が良く動きやすいと評判だ。裁縫が得意な子だったがあんなに上手に仕立てられるとは思わなかったよ」

「俺はラフェの裁縫の才能を知っていましたから、友人に紹介しただけです、あれはラフェの実力です」

 俺と父上はそれからしばらくは仕事をしながら借金の返済に忙しかった。

 とりあえず目の前にある大きな問題を一つ終わらせて、次は兄貴のことを調べ始めた。








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