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28話
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◆ ◆ ◆ エドワード
「………………エドワード?」
俺の顔を見て突然話しかけてくる男がいた。
「え?俺はリオだけど?」
知らない男は俺とあまり歳が変わらないように思えた。
「あっ……エドワードは行方不明になって死んだんだ…すまない、あまりにも似ていたから」
そう言うとその知らない男は去って行こうとした。
俺は銀行へ融資の話しをしに行く途中だった。
約束の時間までにはまだ少しある。
「待ってください」
その男を引き止めた。
『エドワード』その名は俺の本当の名前かもしれない。そう思ったのに訪ねたら違うと言われた。
だけどこの見知らぬ男はものすごく驚いた顔をして俺を見た。
そして呟いた言葉を聞き逃さなかった。
「生きてる?まさか?」そう言ってから「エドワード?」と呼んだのだった。
いまだに記憶は戻らない。もうそれでいいと思って過ごしていた。
新しいリオとしての人生を歩んでいる。シャーリーは我儘なところもあるが俺のことを愛してくれている。
それだけは本当だとわかるし、そんなシャーリーが俺も好きだしオズワルドのことも可愛くて仕方がない。
俺なりに幸せな暮らしを続けている。
だけど、『エドワード』と言われたら、俺が本当は誰なのか知りたい。
俺はエドワードなのか?違うと聞いていたのに。
「あの、実は記憶がないのです。エドワードという人とわたしは顔が似ているのでしょうか?」
その男は「エドワードとは同級生でした」と言われた。
少しだけ会話をして明日改めて会おうと約束をして別れた。
もしかしたら俺はやはりエドワードなのかもしれない。
何故なら先ほどの男“アダム”さんが教えてくれたエドワードの特徴が俺に類似していた。
語学が堪能で、騎士だった。歳もほぼ同じくらいの26歳、明るめの茶色い髪で少し癖毛があり、瞳の色はコバルト色で身長は高め。
類似しているどころかそっくりだ。
だけど、バイザー家に訪れた時、使用人は俺の顔を見てもなんの反応もなかった。
母親らしき婦人も驚いた顔すら見せず「違う」と言われた。
あの時、俺はシャーリーの護衛として働き、その合間に訪れた。
自分の身元がハッキリしていないこともありシャーリーの護衛としての仕事は辞めていなかった。その後も自分の身元を探しに行こうとしたがなかなか休みがもらえずこの領地について来ていつの間にかシャーリーを愛するようになり結婚していた感じだった。
その時はそれが自然に感じていた。
そうお互い愛し合い結ばれたのだ。
次の日、もう一度アダムさんに会って話しを聞くまでは。
◇ ◆ ◇ アーバン
母上は借金の返済に追われていた。
兄貴が亡くなって商会に騙され逃げられ我が家の貯金はほぼ失ったが兄貴の死亡保証金で穴埋めされたと聞いていた。
母上が贅沢さえしなければ暮らしは楽なはず。
なのに贅沢はやめられないようで父上からも口酸っぱく言われていつも「うるさい!」と怒っている姿ばかり見ていた。
しかしどう見てもガラの悪い男達が我が家に出入りする姿は異常にしか見えない。
「あんたの母親はかなり借金を抱えているんですよ、そろそろ返済してもらわないとうちも困るんです」
「……どれくらいの金額なんですか?」
「アーバン、やめて!聞かないで!」
母上は必死で止めようとしたが俺は無視した。
「教えてください」
「あんたの母親は1000万ペルン借りて返済していないもんだからもう今じゃ利子が付いて2200万ペルンになってるよ」
「あ、貴方達が勝手に高額な利子を付けたんじゃない!わたしは返すのはゆっくりで大丈夫だと言われたから借りたのよ!そんな利子が高いなんて借りる時聞いていなかったわ」
「何言ってるんだ?おばさん?ほらここに借用書があるだろう?自分がサインして印を押したんだ。本物の書類だ、裁判でも警備隊にでも訴えたって俺たちは困らないぜ」
俺はその借用書を受け取り、じっくりと読んだが確かに利子のことも書かれていたし期限もゆっくりどころか借りて半年以内に返すと記されていた。
「母上、この借用書は正式なものです」
「アーバン、そんなのおかしいわ。この紙にサインすれば1000万ベルン貸してくれるとミラー夫人が教えてくれたの。だからサインしたの」
「何も読まずにですか?」
「だってミラー夫人が大丈夫、安心してって言ったもの」
「おばさん、あんたがなにを言おうと騙されようと関係ない。さっさと2200万ベルン返してくれないならこの屋敷は俺たちのものだ」
「嘘!この屋敷はバイザー家のものよ!出て行って!お金はすぐに用意するから!アーバン、ね?助けてくれるわよね?」
「ちっ、だったら期限ギリギリ、あと四日間待つ。その時に全額返済できなければこの屋敷は差し押さえさせてもらうからな、お・ば・さ・ん!」
「わかったわ、だから出て行きなさい!なにがおばさんよ!わたしは貴族夫人なのよ!」
母上は男達が出て行ってからすぐに俺を見てにこりと微笑んだ。
「アーバン、早くお金、お金を用意してちょうだい」
「………………エドワード?」
俺の顔を見て突然話しかけてくる男がいた。
「え?俺はリオだけど?」
知らない男は俺とあまり歳が変わらないように思えた。
「あっ……エドワードは行方不明になって死んだんだ…すまない、あまりにも似ていたから」
そう言うとその知らない男は去って行こうとした。
俺は銀行へ融資の話しをしに行く途中だった。
約束の時間までにはまだ少しある。
「待ってください」
その男を引き止めた。
『エドワード』その名は俺の本当の名前かもしれない。そう思ったのに訪ねたら違うと言われた。
だけどこの見知らぬ男はものすごく驚いた顔をして俺を見た。
そして呟いた言葉を聞き逃さなかった。
「生きてる?まさか?」そう言ってから「エドワード?」と呼んだのだった。
いまだに記憶は戻らない。もうそれでいいと思って過ごしていた。
新しいリオとしての人生を歩んでいる。シャーリーは我儘なところもあるが俺のことを愛してくれている。
それだけは本当だとわかるし、そんなシャーリーが俺も好きだしオズワルドのことも可愛くて仕方がない。
俺なりに幸せな暮らしを続けている。
だけど、『エドワード』と言われたら、俺が本当は誰なのか知りたい。
俺はエドワードなのか?違うと聞いていたのに。
「あの、実は記憶がないのです。エドワードという人とわたしは顔が似ているのでしょうか?」
その男は「エドワードとは同級生でした」と言われた。
少しだけ会話をして明日改めて会おうと約束をして別れた。
もしかしたら俺はやはりエドワードなのかもしれない。
何故なら先ほどの男“アダム”さんが教えてくれたエドワードの特徴が俺に類似していた。
語学が堪能で、騎士だった。歳もほぼ同じくらいの26歳、明るめの茶色い髪で少し癖毛があり、瞳の色はコバルト色で身長は高め。
類似しているどころかそっくりだ。
だけど、バイザー家に訪れた時、使用人は俺の顔を見てもなんの反応もなかった。
母親らしき婦人も驚いた顔すら見せず「違う」と言われた。
あの時、俺はシャーリーの護衛として働き、その合間に訪れた。
自分の身元がハッキリしていないこともありシャーリーの護衛としての仕事は辞めていなかった。その後も自分の身元を探しに行こうとしたがなかなか休みがもらえずこの領地について来ていつの間にかシャーリーを愛するようになり結婚していた感じだった。
その時はそれが自然に感じていた。
そうお互い愛し合い結ばれたのだ。
次の日、もう一度アダムさんに会って話しを聞くまでは。
◇ ◆ ◇ アーバン
母上は借金の返済に追われていた。
兄貴が亡くなって商会に騙され逃げられ我が家の貯金はほぼ失ったが兄貴の死亡保証金で穴埋めされたと聞いていた。
母上が贅沢さえしなければ暮らしは楽なはず。
なのに贅沢はやめられないようで父上からも口酸っぱく言われていつも「うるさい!」と怒っている姿ばかり見ていた。
しかしどう見てもガラの悪い男達が我が家に出入りする姿は異常にしか見えない。
「あんたの母親はかなり借金を抱えているんですよ、そろそろ返済してもらわないとうちも困るんです」
「……どれくらいの金額なんですか?」
「アーバン、やめて!聞かないで!」
母上は必死で止めようとしたが俺は無視した。
「教えてください」
「あんたの母親は1000万ペルン借りて返済していないもんだからもう今じゃ利子が付いて2200万ペルンになってるよ」
「あ、貴方達が勝手に高額な利子を付けたんじゃない!わたしは返すのはゆっくりで大丈夫だと言われたから借りたのよ!そんな利子が高いなんて借りる時聞いていなかったわ」
「何言ってるんだ?おばさん?ほらここに借用書があるだろう?自分がサインして印を押したんだ。本物の書類だ、裁判でも警備隊にでも訴えたって俺たちは困らないぜ」
俺はその借用書を受け取り、じっくりと読んだが確かに利子のことも書かれていたし期限もゆっくりどころか借りて半年以内に返すと記されていた。
「母上、この借用書は正式なものです」
「アーバン、そんなのおかしいわ。この紙にサインすれば1000万ベルン貸してくれるとミラー夫人が教えてくれたの。だからサインしたの」
「何も読まずにですか?」
「だってミラー夫人が大丈夫、安心してって言ったもの」
「おばさん、あんたがなにを言おうと騙されようと関係ない。さっさと2200万ベルン返してくれないならこの屋敷は俺たちのものだ」
「嘘!この屋敷はバイザー家のものよ!出て行って!お金はすぐに用意するから!アーバン、ね?助けてくれるわよね?」
「ちっ、だったら期限ギリギリ、あと四日間待つ。その時に全額返済できなければこの屋敷は差し押さえさせてもらうからな、お・ば・さ・ん!」
「わかったわ、だから出て行きなさい!なにがおばさんよ!わたしは貴族夫人なのよ!」
母上は男達が出て行ってからすぐに俺を見てにこりと微笑んだ。
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