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46話。 ロード編 ⑧
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「初めまして。ロードと言います。ダリアのことではご迷惑とご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
俺が頭を下げると、バルス子爵は困った顔をして苦笑した。
「うん?君が謝る必要はないよ。ダリアは確かに酷い目に遭った。だけど悪いのは犯人だ。そしてあんな馬鹿げた作戦を考えた団長達幹部たちだよ。君は被害者だ、そしてダリアにとっては君はただの幼馴染でしかない」
「……そうです…が」
言葉に詰まって何も言えなくなった。
俺がカリナと一緒にいた時に思わず言ってしまった言葉。
『幼馴染』
もし俺が好きだと思っているダリアから『幼馴染』だとだけ紹介されたらかなり辛い。
偽とはいえ付き合っていたんだ。恋人として接していたのに……なんで俺はあんな言葉を言ったんだ。いくら仕事だったとしても…ダリアが傷ついた顔をしていたのに……
「ロード、君は仕事を真面目にこなした。平民でまだまだ下っ端である君が団長達うえの者に逆らうことが出来ないのもわかってる。だけど、少しでもダリアに不安にさせないようにすることは出来たとは思わないか?
ダリアは君の仕事の内容をもし聞いたとしても周りに言いふらす性格ではないと思う。
せめて、偽の恋人なんて馬鹿な関係を改めることは出来たんじゃないのか?」
バルス子爵からの言葉に項垂れてしまう。
確かに……もっとダリアを傷つけない方法はあったと思う。
それにカリナが逃亡した時も、もう少し考えればカリナの性格からすれば逆恨みをすることだって考えられたはずだ。
俺はずっとカリナの近くにいて監視していたのに。
右手を握りしめ続けた。
今更言われた言葉にハッとして気づくなんて……
「今日君と話をしたかった理由はね、僕の独断だと思われてもいい。しばらくダリアを訪ねて来ないで欲しいんだ」
「……何故……………」
ーーあなたに言われなければいけないんだ?
俺は必死で言葉を飲み込んだ。
「何故かって?退院したばかりでまだ完全ではない。
拐われて暴力を受けたせいで精神的に不安定になっているんだよ。まだ一人では長い時間は部屋にいられない。知っている信頼のおける人が近くにいないと、過呼吸を起こして倒れてしまうんだ。そんな状態の中で君とは会いたくないと拒否しているダリアがもし君の姿を見てしまえばまたパニックになると思う」
「そんなに……まだ……酷いんですね」
ーー俺のせいだ。俺がダリアを傷つけた。俺が…………一目でも会って、ダリアの元気な姿を見て自分が安心したかった。
「すみません。もう来ません……帰ります」
愕然とした俺は席を立ちバルス子爵に深々と頭を下げた。
「ロード、君は何を目指して騎士になったんだい?君は今自分がやるべきことに向き合わないといけない時期なんだと思う。しっかり考えろ、そして次にここに来る時は胸を張ってダリアに会いに来なさい」
「……失礼します」
門を出てから使用人達が住む屋敷の一角を眺めた。
ーーあそこにダリアがいる。
俺には会いたくないと拒否しているのに何度も会いに来た。ダリアはうんざりしているのだろうか?もう嫌われた?
バルス子爵の言葉は俺にとって辛いものだった。だけど俺は平民だから、下っ端だから、仕事だからと言い訳ばかりしていた。
ダリアに正面から向き合えなくて説明できないんだから仕方ないと言い訳ばかりしていた。
そんな狡い俺の気持ちが子爵には伝わっていた。元第一騎士団の団長をしていたバルス子爵。
俺のことも聞いていたらしい。
そしてダリアとの関係も……
俺はダリアがいるであろうほうを見て、頭を下げた。
俺が頭を下げると、バルス子爵は困った顔をして苦笑した。
「うん?君が謝る必要はないよ。ダリアは確かに酷い目に遭った。だけど悪いのは犯人だ。そしてあんな馬鹿げた作戦を考えた団長達幹部たちだよ。君は被害者だ、そしてダリアにとっては君はただの幼馴染でしかない」
「……そうです…が」
言葉に詰まって何も言えなくなった。
俺がカリナと一緒にいた時に思わず言ってしまった言葉。
『幼馴染』
もし俺が好きだと思っているダリアから『幼馴染』だとだけ紹介されたらかなり辛い。
偽とはいえ付き合っていたんだ。恋人として接していたのに……なんで俺はあんな言葉を言ったんだ。いくら仕事だったとしても…ダリアが傷ついた顔をしていたのに……
「ロード、君は仕事を真面目にこなした。平民でまだまだ下っ端である君が団長達うえの者に逆らうことが出来ないのもわかってる。だけど、少しでもダリアに不安にさせないようにすることは出来たとは思わないか?
ダリアは君の仕事の内容をもし聞いたとしても周りに言いふらす性格ではないと思う。
せめて、偽の恋人なんて馬鹿な関係を改めることは出来たんじゃないのか?」
バルス子爵からの言葉に項垂れてしまう。
確かに……もっとダリアを傷つけない方法はあったと思う。
それにカリナが逃亡した時も、もう少し考えればカリナの性格からすれば逆恨みをすることだって考えられたはずだ。
俺はずっとカリナの近くにいて監視していたのに。
右手を握りしめ続けた。
今更言われた言葉にハッとして気づくなんて……
「今日君と話をしたかった理由はね、僕の独断だと思われてもいい。しばらくダリアを訪ねて来ないで欲しいんだ」
「……何故……………」
ーーあなたに言われなければいけないんだ?
俺は必死で言葉を飲み込んだ。
「何故かって?退院したばかりでまだ完全ではない。
拐われて暴力を受けたせいで精神的に不安定になっているんだよ。まだ一人では長い時間は部屋にいられない。知っている信頼のおける人が近くにいないと、過呼吸を起こして倒れてしまうんだ。そんな状態の中で君とは会いたくないと拒否しているダリアがもし君の姿を見てしまえばまたパニックになると思う」
「そんなに……まだ……酷いんですね」
ーー俺のせいだ。俺がダリアを傷つけた。俺が…………一目でも会って、ダリアの元気な姿を見て自分が安心したかった。
「すみません。もう来ません……帰ります」
愕然とした俺は席を立ちバルス子爵に深々と頭を下げた。
「ロード、君は何を目指して騎士になったんだい?君は今自分がやるべきことに向き合わないといけない時期なんだと思う。しっかり考えろ、そして次にここに来る時は胸を張ってダリアに会いに来なさい」
「……失礼します」
門を出てから使用人達が住む屋敷の一角を眺めた。
ーーあそこにダリアがいる。
俺には会いたくないと拒否しているのに何度も会いに来た。ダリアはうんざりしているのだろうか?もう嫌われた?
バルス子爵の言葉は俺にとって辛いものだった。だけど俺は平民だから、下っ端だから、仕事だからと言い訳ばかりしていた。
ダリアに正面から向き合えなくて説明できないんだから仕方ないと言い訳ばかりしていた。
そんな狡い俺の気持ちが子爵には伝わっていた。元第一騎士団の団長をしていたバルス子爵。
俺のことも聞いていたらしい。
そしてダリアとの関係も……
俺はダリアがいるであろうほうを見て、頭を下げた。
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