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40話。  ロード編 ⑤

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「何か手掛かりは?」

「馬……あれは……珍しい白毛だった……」

「白毛の馬……ならばこの王都には数頭しかいないはずだ。うちの実家の侯爵家と王族が管理する馬……そして、カリナに薬の売人をさせている黒幕ではないかと疑われているザイール伯爵家だ……だけど伯爵はそんな堂々とその馬は使わない。そんなことをするのは……息子のベルナード?」

「伯爵家へ行ってくる」
 ジャックがすぐに俺を止めた。

「すぐにわかるところに連れて行くわけがないだろう。あれは悪知恵だけは働く。だが細かいことは考えないバカなやつだ。馬が珍しいからと目をつけられると分からないバカなボンクラ息子が乗った馬車だろう。誰かしら目に入っているはずだ。今から聞き取りに行こう」

 ジャックは詰め所の騎士達に声をかけた。

「父親が薬を売買しているのを知って自分も使い出したんだ。そしてカリナに入れあげてカリナにまで薬を使わせ始めた。カリナが捕まって助け出してどこかに二人で逃げるつもりなのかもしれない」

 じゃあ、ダリアは俺の巻き添え?

 絶対あいつら許せない。だけど一番許せないのは俺だ。
 俺のせいでダリアが今どんな目に遭っているのか……後悔しかない。もう少し早くダリアに気がつけば拐われずに済んだのに……

 早く探し出さなければ。

 さっきの場所に戻りみんなで聞き込みをして回る。

 ジャックの言う通りある程度の行き先はわかった。東へ進んだこと、その先には古くて使われていない伯爵家の家があることがわかった。

 俺たちはそこへと向かった。

 見張りが二人外をうろうろしていた。
 馬車は一台だけ。やはりあの白毛の馬がいた。

 静かに後ろから近づき見張りの二人を捕らえた。

 中にはベルナードと御者兼護衛の男がいるだけだと聞いた。
 しかし、さらに脅して聞き出すと、カリナとダリアではないかと思われる女性がいることがわかった。

 俺たちはある程度中のことを聞いてからダリアのいる場所を把握して扉を開けて助けに入った。

 そこにはぐったりとして倒れているダリア。

 その騒ぎを聞いて別の部屋から出てきたのは、カリナとベルナードだった。
 薬で目の焦点が合わなくなっていた二人は、騎士達を見ると暴れ出した。

「なんでここがわかったのよ?」
「俺は何もしていない。悪いやつはこの女だけだ」
「ロード、愛していると言ったのは嘘なの?」
「お前、こんな男と浮気してたのか?」
「違うわ、わたしは全ての男に愛されるためにいるのよ」
「そうか、全ての男に……ふざけるなこのアマ!ぶっ殺す!」
「殺しなさいよ!ほら!ここを刺せばいいのよ!ロード、あなたはわたしを裏切らないわよね?愛してるんだもの……あらジャック?久しぶりね。いい男が二人もいるわ。ふふふ、今からみんなでいいことをしましょう。さあみんな服を脱いで」

 暴れて大きな声を出したかと思うと、服を脱ぎ出すカリナ。薬のせいでおかしくなっていた。

 騎士達が取り押さえてロープで縛った。

 その間も抵抗するが突然おとなしくなって泣き出した。かと思うと今度は天井を見上げて笑い出した。

 そんな二人を呆れながら連行した。

 ダリアは水をかけられて動けずぐったりとしていた。意識はあるものの声すら出ない。

「ダリア……ごめん。俺のせいでこんなことになって……」

 ダリアに着ていた上着をかけて抱きかかえようとした。

「触らないで、いやっ!」

 ダリアに拒否され、近くにいた他の騎士がダリアを抱きかかえた。

 俺はその姿を呆然と見送った。


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