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28話。
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マリアさんが出来上がった絵本を屋敷に持ってきてくれた。
わたしのそばには旦那様とミサさん、そして侍女長がいて、みんな楽しみにしてくれている。
「どんなふうに出来上がったのか楽しみだね、リオンもずっと心待ちにしていたんだ」
「はい、旦那様、ダリアの絵本を孫に読んであげるのをわたしも楽しみにしているんです」
侍女長も嬉しい言葉を言ってくれた。
「ふふっ、とても素敵に仕上がっていますよ」
マリアさんがテーブルの上に絵本を置いてくれた。
「ダリアちゃん、確認してみて?」
わたしは緊張しながら本をパラパラとめくった。
思った以上に、ううん、すっごくいい仕上がりだった。
「……ありがとうございます」
絵本を胸に抱きしめて何度も何度もお礼を言った。
そして旦那様達にも頭を何度も下げた。
「ありがとうございます。旦那様が声をかけてくださったおかげです。そして侍女長をはじめみなさんがわたしのために時間をくださったので何とか仕上げることができました」
ーーうれしい。
………何もできない、自信がない、人と話すのも接するのも苦手で嫌われてばかりのわたし。
そんなわたしが、人に認められて最後まで頑張ることができた。
「まだまだ描いてもらわないといけないの。期待してるわよ。バルス子爵からも許可は得てるから次の打ち合わせもついでにしましょう」
そう言って今まで描いた絵を見ながら、手直しするところや話に合わせた絵を新たに描くことなど細かな打ち合わせが始まった。
旦那様は「どうせならもう本格的に絵本作家になったらどうかな?」と言い出した。
そんなこと考えてもいなかったので「む、無理です!」と大きな声でお断りした。
メイドの仕事が好きで、本が好きで、描くことも好きで、好きだからできる。
絵本はお金を稼ぐために描くなんてできない。好きなことを考えて絵を描き話を考えるのが楽しいだけ。
今回はたまたま。だから楽しくできる。
「ダリアの才能を埋もらせたままなんて勿体無いよ。好きなことをして、認めてもらえるなんて幸せなことだ。無理がない程度で続けて欲しい、リオンも喜ぶからね」
旦那様の優しい言葉に「ありがとうございます」と頷いた。
「今日は我が家の坊ちゃんのためにこの絵本を読んでくれるかい?僕の顔を見たらダリアの絵本は?と言って楽しみにしていたからね」
「はい、ぜひ読ませて欲しいです」
夜になり坊っちゃまの部屋へと行くと、料理長や侍女長まで待っていた。
「坊っちゃま、見てください。絵本です」
「これがダリアのえほん?」
「はい」
「へへっ、ずっとまってたの。はやくよんで!」
絵本を読み始めると坊っちゃまは眠くなるどころか目がしっかり開いて
「これは?」
「ねっ?これってもしかしてぼく?」
ひとつひとつゆっくりと見ては、質問や感想を言ってくれる。
旦那様も「今日だけは少しだけ遅く起きててもいいよ」と坊っちゃまに言って二人で絵本をめくる姿はとても幸せそうで、こんなふうに家族でわたしの絵本をいろんな人が見てくれるのかもしれないと思うと、それだけで心の中がポカポカしてくる。
坊っちゃまにはいつも元気と勇気をもらえる。
「坊っちゃま、ありがとうございます。坊っちゃまのおかげです」
「ええ?なんで?ぼく、なんにもしてないよ!」
首をコテンとする仕草が可愛すぎてキュンとなった。ずっと我慢して涙腺がそこで緩んで涙が溢れた。
「おとうさま、どうしてダリアはないてるの?えほんできて、うれしくないの?」
わたしのそばには旦那様とミサさん、そして侍女長がいて、みんな楽しみにしてくれている。
「どんなふうに出来上がったのか楽しみだね、リオンもずっと心待ちにしていたんだ」
「はい、旦那様、ダリアの絵本を孫に読んであげるのをわたしも楽しみにしているんです」
侍女長も嬉しい言葉を言ってくれた。
「ふふっ、とても素敵に仕上がっていますよ」
マリアさんがテーブルの上に絵本を置いてくれた。
「ダリアちゃん、確認してみて?」
わたしは緊張しながら本をパラパラとめくった。
思った以上に、ううん、すっごくいい仕上がりだった。
「……ありがとうございます」
絵本を胸に抱きしめて何度も何度もお礼を言った。
そして旦那様達にも頭を何度も下げた。
「ありがとうございます。旦那様が声をかけてくださったおかげです。そして侍女長をはじめみなさんがわたしのために時間をくださったので何とか仕上げることができました」
ーーうれしい。
………何もできない、自信がない、人と話すのも接するのも苦手で嫌われてばかりのわたし。
そんなわたしが、人に認められて最後まで頑張ることができた。
「まだまだ描いてもらわないといけないの。期待してるわよ。バルス子爵からも許可は得てるから次の打ち合わせもついでにしましょう」
そう言って今まで描いた絵を見ながら、手直しするところや話に合わせた絵を新たに描くことなど細かな打ち合わせが始まった。
旦那様は「どうせならもう本格的に絵本作家になったらどうかな?」と言い出した。
そんなこと考えてもいなかったので「む、無理です!」と大きな声でお断りした。
メイドの仕事が好きで、本が好きで、描くことも好きで、好きだからできる。
絵本はお金を稼ぐために描くなんてできない。好きなことを考えて絵を描き話を考えるのが楽しいだけ。
今回はたまたま。だから楽しくできる。
「ダリアの才能を埋もらせたままなんて勿体無いよ。好きなことをして、認めてもらえるなんて幸せなことだ。無理がない程度で続けて欲しい、リオンも喜ぶからね」
旦那様の優しい言葉に「ありがとうございます」と頷いた。
「今日は我が家の坊ちゃんのためにこの絵本を読んでくれるかい?僕の顔を見たらダリアの絵本は?と言って楽しみにしていたからね」
「はい、ぜひ読ませて欲しいです」
夜になり坊っちゃまの部屋へと行くと、料理長や侍女長まで待っていた。
「坊っちゃま、見てください。絵本です」
「これがダリアのえほん?」
「はい」
「へへっ、ずっとまってたの。はやくよんで!」
絵本を読み始めると坊っちゃまは眠くなるどころか目がしっかり開いて
「これは?」
「ねっ?これってもしかしてぼく?」
ひとつひとつゆっくりと見ては、質問や感想を言ってくれる。
旦那様も「今日だけは少しだけ遅く起きててもいいよ」と坊っちゃまに言って二人で絵本をめくる姿はとても幸せそうで、こんなふうに家族でわたしの絵本をいろんな人が見てくれるのかもしれないと思うと、それだけで心の中がポカポカしてくる。
坊っちゃまにはいつも元気と勇気をもらえる。
「坊っちゃま、ありがとうございます。坊っちゃまのおかげです」
「ええ?なんで?ぼく、なんにもしてないよ!」
首をコテンとする仕草が可愛すぎてキュンとなった。ずっと我慢して涙腺がそこで緩んで涙が溢れた。
「おとうさま、どうしてダリアはないてるの?えほんできて、うれしくないの?」
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