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27話。
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「ダリア?」
書庫で朝から夕方までの時間を過ごす日々が続いた。どうしてもみんなと顔を合わせることが怖くなってしまった。
わたしのことをみんなが嫌ってる?そんな訳ない。わかってても怖くなった。
それに侍女長が調べてわかったのだけど、わたしに会いにくる人たちに対しても、先輩達は追い払っていたらしい。
出版社の人たちは仕事なので通してくれたけど、ロードやジャックさんのことは追い払っていたと聞いた。村の友人も来てくれていたと聞いた時はショックだった。
住んでいた家に居ないからと心配して働いている屋敷の方へと顔を出してくれていたらしい。
ロードに対しては、わたしが嫌がって会いたがらないかのように言って断っていたらしい。
これは先輩を含め、以前交際を断った子爵家の使用人の人がグルになっていたと聞いた。
ロードからの連絡が全く途絶えた原因は、わたしと話すのが嫌だったとか別れ話が面倒だったとかではなく、ただ単に妨害されていたかららしい。
これらは全て侍女長が旦那様に伝えて、徹底的に調べてくれてわかったこと。
古くからの使用人はみんな優しい人が多いのは確か。だけど新しい使用人達は自分達の中で仲間意識が強く結託しているところがあった。
働き出して2年のわたしはそれなりに馴染んでいたと思っていたのに、ここでもやはり馴染めなかったようだ。
“真面目すぎて融通が利かない。利用するには扱いやすいがうえの人達に好かれて可愛がられるのも気に入らない”
と言うのがわたしの評価らしい。
旦那様は調査が終わりわたしを部屋に呼んだ。
「ダリア、色々すまなかった。君が真面目に働くことをよく思わないと言うのは彼らの僻みだ。君は悪くない。ただ……うちの屋敷で働くのが嫌だと思うなら他の屋敷を紹介しよう。もちろん僕としては君にはこれからも働いて欲しいと思っている」
「………考えさせてください」
わたしは即答することが出来なかった。
今回、先輩達はみんな紹介状を書いてもらえず即刻クビになった。
これはわたしが旦那様に聞かれて望んだこと。嫌な思いもしたけど、優しくしてもらったこともたくさんあった。
だから警備隊に突き出すのはやめて欲しいと頼んだ結果。
ただもしまたわたしに対して恨んで何かすることがあればその時は犯罪者として警備隊に引き渡すと先輩達には伝えていると旦那様が教えてくれた。
「本来なら警備隊に突き出すところだが、彼らに一度だけチャンスを与えることにした。ダリアの望みでもあるからな」
すぐに新しい使用人達が入り屋敷の仕事は周り出した。
先輩達はこの屋敷を出て行く時に、
「ダリアごめんなさい」と泣き腫らした顔で謝ってくれた。
わたしに対しての悪感情は、嫉妬からきたもの。でもそれが全てではない。わたしのことを可愛がってくれたのも事実。
だけど先輩達に『許します』と言えるほど心も広くはなく頭を下げることしか出来なかった。
先輩達は、これから働くところに苦労することになる。たぶんもうこの街にはいられないだろう。
『そんな甘い処分でいいのか?』
旦那様は渋い顔をしたけど、わたしの気持ちを汲んでくれた。
そして、今は、雑用の仕事は早朝に出来ることだけして、日中は書庫に篭り、本の整理や破れた本の修理などをして過ごしている。
他所で働くことは、一からまた人間関係を築かなければいけない。それはわたしにとって大変なことになるので今は人と関わらない仕事をさせてもらっている。
でも坊っちゃまの本の読み聞かせだけは相変わらず続けている。
「ダリア、あたらしいえほんは?もうできた?」
「申し訳ございません、もう少しお待ちくださいね」
「うん!たのしみにしてるよ!」
坊っちゃまの変わらない笑顔に癒されながら元気を取り戻して行く。
ロードやジャックさんにもまた向き合わなければいけない。
『幼馴染』でしかないわたし。(偽)の恋人役もそろそろ終わらせて、気持ちを切り替えよう。
ジャックさんにはお世話になったのに、門前払いをしてしまった。
旦那様も貴族であるジャックさんにきちんと謝罪したと話してくれた。
わたしも謝らなければいけない。そして、ジャックさんと気軽に呼ぶのもこれで終わり。
ロードとの関係が終われば、ジャックさんではなくバイザード様とお呼びしなくてはいけない。気軽に接してくれたのはロードとの関係を心配してくれたからだと思う。
旦那様が教えてくれたのだけど、ジャッ……ううん、バイザード様は侯爵家の次男で子爵位を受け継いでいるとても高貴なお方なのだ。
そんなことも知らずに図々しくも、さん付けで呼んでいた。
そして、もうすぐ初めての絵本が出来上がる。
出来上がった絵本は、まず坊っちゃまに見てもらう予定。
ずっと楽しみにしてくれている坊っちゃま。
『ダリア!はやくよんで!』
そんな声が聞こえてきそう。
書庫で朝から夕方までの時間を過ごす日々が続いた。どうしてもみんなと顔を合わせることが怖くなってしまった。
わたしのことをみんなが嫌ってる?そんな訳ない。わかってても怖くなった。
それに侍女長が調べてわかったのだけど、わたしに会いにくる人たちに対しても、先輩達は追い払っていたらしい。
出版社の人たちは仕事なので通してくれたけど、ロードやジャックさんのことは追い払っていたと聞いた。村の友人も来てくれていたと聞いた時はショックだった。
住んでいた家に居ないからと心配して働いている屋敷の方へと顔を出してくれていたらしい。
ロードに対しては、わたしが嫌がって会いたがらないかのように言って断っていたらしい。
これは先輩を含め、以前交際を断った子爵家の使用人の人がグルになっていたと聞いた。
ロードからの連絡が全く途絶えた原因は、わたしと話すのが嫌だったとか別れ話が面倒だったとかではなく、ただ単に妨害されていたかららしい。
これらは全て侍女長が旦那様に伝えて、徹底的に調べてくれてわかったこと。
古くからの使用人はみんな優しい人が多いのは確か。だけど新しい使用人達は自分達の中で仲間意識が強く結託しているところがあった。
働き出して2年のわたしはそれなりに馴染んでいたと思っていたのに、ここでもやはり馴染めなかったようだ。
“真面目すぎて融通が利かない。利用するには扱いやすいがうえの人達に好かれて可愛がられるのも気に入らない”
と言うのがわたしの評価らしい。
旦那様は調査が終わりわたしを部屋に呼んだ。
「ダリア、色々すまなかった。君が真面目に働くことをよく思わないと言うのは彼らの僻みだ。君は悪くない。ただ……うちの屋敷で働くのが嫌だと思うなら他の屋敷を紹介しよう。もちろん僕としては君にはこれからも働いて欲しいと思っている」
「………考えさせてください」
わたしは即答することが出来なかった。
今回、先輩達はみんな紹介状を書いてもらえず即刻クビになった。
これはわたしが旦那様に聞かれて望んだこと。嫌な思いもしたけど、優しくしてもらったこともたくさんあった。
だから警備隊に突き出すのはやめて欲しいと頼んだ結果。
ただもしまたわたしに対して恨んで何かすることがあればその時は犯罪者として警備隊に引き渡すと先輩達には伝えていると旦那様が教えてくれた。
「本来なら警備隊に突き出すところだが、彼らに一度だけチャンスを与えることにした。ダリアの望みでもあるからな」
すぐに新しい使用人達が入り屋敷の仕事は周り出した。
先輩達はこの屋敷を出て行く時に、
「ダリアごめんなさい」と泣き腫らした顔で謝ってくれた。
わたしに対しての悪感情は、嫉妬からきたもの。でもそれが全てではない。わたしのことを可愛がってくれたのも事実。
だけど先輩達に『許します』と言えるほど心も広くはなく頭を下げることしか出来なかった。
先輩達は、これから働くところに苦労することになる。たぶんもうこの街にはいられないだろう。
『そんな甘い処分でいいのか?』
旦那様は渋い顔をしたけど、わたしの気持ちを汲んでくれた。
そして、今は、雑用の仕事は早朝に出来ることだけして、日中は書庫に篭り、本の整理や破れた本の修理などをして過ごしている。
他所で働くことは、一からまた人間関係を築かなければいけない。それはわたしにとって大変なことになるので今は人と関わらない仕事をさせてもらっている。
でも坊っちゃまの本の読み聞かせだけは相変わらず続けている。
「ダリア、あたらしいえほんは?もうできた?」
「申し訳ございません、もう少しお待ちくださいね」
「うん!たのしみにしてるよ!」
坊っちゃまの変わらない笑顔に癒されながら元気を取り戻して行く。
ロードやジャックさんにもまた向き合わなければいけない。
『幼馴染』でしかないわたし。(偽)の恋人役もそろそろ終わらせて、気持ちを切り替えよう。
ジャックさんにはお世話になったのに、門前払いをしてしまった。
旦那様も貴族であるジャックさんにきちんと謝罪したと話してくれた。
わたしも謝らなければいけない。そして、ジャックさんと気軽に呼ぶのもこれで終わり。
ロードとの関係が終われば、ジャックさんではなくバイザード様とお呼びしなくてはいけない。気軽に接してくれたのはロードとの関係を心配してくれたからだと思う。
旦那様が教えてくれたのだけど、ジャッ……ううん、バイザード様は侯爵家の次男で子爵位を受け継いでいるとても高貴なお方なのだ。
そんなことも知らずに図々しくも、さん付けで呼んでいた。
そして、もうすぐ初めての絵本が出来上がる。
出来上がった絵本は、まず坊っちゃまに見てもらう予定。
ずっと楽しみにしてくれている坊っちゃま。
『ダリア!はやくよんで!』
そんな声が聞こえてきそう。
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