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23話。
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ロードと一夜を共にしたあの人の名前はミシェルさんと言うらしい。
名前が分かっても仕方ないのに……
ロザリー先輩はいつも優しいお姉さんみたいな存在だった。なのに……嫌われていた。
わたしのことをミシェルさんに色々話したことより悪口を言われたことより、嫌われていたことがショックで、バケツを持ったまま固まってしまった。
誰かにポンっと後ろから肩を叩かれた。
ーーーえっ?だ、誰?
思わず口を押さえて声を出すのを我慢した。
恐々と後ろを振り返る。
「………」
「しっ!」後ろにいたのはミサさんだった。
わたしがコクコク頷くと、ミサさんはわたしのバケツを優しく取り上げて、先輩達の前へと出て行った。
「ロザリー、ベリス、あなた達の話が聞こえてきたわ。メイド長のところへ今から行くわよ!ついて来なさい」
「えっ?じょ、冗談ですよ」
「そうそう、ちょっとふざけただけなんです」
ミサさんはこの屋敷で働き出してから長い。メイド長とも仲が良く旦那様にも信頼されている。
仕事に対しては厳しいけど、怒ることはなく優しく仕事を指導してくれる。困った時には助けてくれるいつも笑顔が絶えない尊敬できる人。
そんなミサさんがものすごく怖い顔をしていた。
そんなミサさんが怒っているので、先輩達は青い顔をして顔が引き攣ってなんとか言い訳をしようとしていた。
「言い訳はメイド長の前で言ってちょうだい。さっさと行くわよ」
こんな怒った話し方をするミサさんの声を聞いたことがない。ミサさんは何故かバケツを持ったまま去っていった。
わたしはどうしていいかわからず固まったまましばらく立っていたが、仕事の途中だったことを思い出して、新しいバケツを倉庫に取りに行き、掃除を再開した。
だけど本当は先輩達のことが気になっていた。確かに酷いと思う。でも……優しくしてもらったことも可愛がってもらったことも確かで。
嫌われていると分かっても、嫌いになれない。人見知りが激しく誰とでも仲良くなれないこんなわたしなのに、先輩達はずっと優しく話しかけてくれた。
一緒に買い物に行ったり食事をしたり、仲良くしてくれた。あれも全て嘘だったのかな……
急いで仕事を終わらせてメイド長がいるであろう部屋へと向かった。
勢いで部屋の前まで行くと、やはり躊躇ってしまう。わたしがなんと言えばいいのだろう。
だけどこのまま知らん顔なんて出来ない。したくない。
ドキドキしながらも扉をノックした。
「誰かしら?」
中から声が聞こえた。
「ダリアです。メイド長お忙しいところ申し訳ありません。話を聞いてもらえないでしょうか?」
「中にお入りなさい」
「失礼致します」
中に入ると先輩達が泣き腫らした顔で俯いて椅子に座っていた。
名前が分かっても仕方ないのに……
ロザリー先輩はいつも優しいお姉さんみたいな存在だった。なのに……嫌われていた。
わたしのことをミシェルさんに色々話したことより悪口を言われたことより、嫌われていたことがショックで、バケツを持ったまま固まってしまった。
誰かにポンっと後ろから肩を叩かれた。
ーーーえっ?だ、誰?
思わず口を押さえて声を出すのを我慢した。
恐々と後ろを振り返る。
「………」
「しっ!」後ろにいたのはミサさんだった。
わたしがコクコク頷くと、ミサさんはわたしのバケツを優しく取り上げて、先輩達の前へと出て行った。
「ロザリー、ベリス、あなた達の話が聞こえてきたわ。メイド長のところへ今から行くわよ!ついて来なさい」
「えっ?じょ、冗談ですよ」
「そうそう、ちょっとふざけただけなんです」
ミサさんはこの屋敷で働き出してから長い。メイド長とも仲が良く旦那様にも信頼されている。
仕事に対しては厳しいけど、怒ることはなく優しく仕事を指導してくれる。困った時には助けてくれるいつも笑顔が絶えない尊敬できる人。
そんなミサさんがものすごく怖い顔をしていた。
そんなミサさんが怒っているので、先輩達は青い顔をして顔が引き攣ってなんとか言い訳をしようとしていた。
「言い訳はメイド長の前で言ってちょうだい。さっさと行くわよ」
こんな怒った話し方をするミサさんの声を聞いたことがない。ミサさんは何故かバケツを持ったまま去っていった。
わたしはどうしていいかわからず固まったまましばらく立っていたが、仕事の途中だったことを思い出して、新しいバケツを倉庫に取りに行き、掃除を再開した。
だけど本当は先輩達のことが気になっていた。確かに酷いと思う。でも……優しくしてもらったことも可愛がってもらったことも確かで。
嫌われていると分かっても、嫌いになれない。人見知りが激しく誰とでも仲良くなれないこんなわたしなのに、先輩達はずっと優しく話しかけてくれた。
一緒に買い物に行ったり食事をしたり、仲良くしてくれた。あれも全て嘘だったのかな……
急いで仕事を終わらせてメイド長がいるであろう部屋へと向かった。
勢いで部屋の前まで行くと、やはり躊躇ってしまう。わたしがなんと言えばいいのだろう。
だけどこのまま知らん顔なんて出来ない。したくない。
ドキドキしながらも扉をノックした。
「誰かしら?」
中から声が聞こえた。
「ダリアです。メイド長お忙しいところ申し訳ありません。話を聞いてもらえないでしょうか?」
「中にお入りなさい」
「失礼致します」
中に入ると先輩達が泣き腫らした顔で俯いて椅子に座っていた。
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