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20話。
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「………」
返事をしなかった。
ううん、声が出なかった。
ーーーこんな時なんて言えばいい?
『久しぶり?』『元気にしてた?』『わたしは貴方にとって……』
唇を噛んで俯いた。
マリアさんは驚いた顔でわたしとロードの顔を何度かキョロキョロと見ていた。
そんな時……
「ロード、ごめんなさい。急いで着替えるからもう少し待っててね」
カリナさんがお店から出て来た。
「ロード?」
カリナさんがわたしとマリアさんを見て、ロードに「知り合い?」と聞いた。
「あっ……幼馴染なんだ」
ーーーうん、間違えていない。
わたしとロードは幼馴染。
だからわたしは上を向いた。
「はい、ロードとは同じ村の出身なんです」
カリナさんに向かって笑顔を作る。
手が震えていた。だけど誰にも悟られないように「ロード、またね」と笑って手を振ってその場を離れた。
マリアさんは「ごめんなさい。ここに連れてくるべきではなかったみたいね」と言った。
わたしは何も答えず作り笑いをして返した。
「また来週、お伺いします。今日はありがとうございました」
もちろんロードがわたしを追いかけてくることなんかない。
ーーーわたし頑張ったよね。そろそろ泣いてもいいかな。
歩きながら涙が出た。周りの人たちの視線が泣いてるわたしに向かってるのに気がついたけど、そんなことどうでもいいや。
だって失恋したんだもん。ずっと好きだったロードがわたしではない女の人に、優しく話しかけて迎えに行って……
屋敷に着くと人に見られないように急いで自分の部屋へと戻った。
いっぱい泣いた。昼間マリアさんがご馳走してくれたのでお腹も空いていない。おかげでたくさん泣くことが出来た。
気持ちはすっきりはしないけどこれ以上泣いてはいられない。目を濡れたタオルで冷やして腫れた瞼を少しでもまともに見えるようにと頑張ってはみたんだけど……
やっぱり泣いたのわかってしまう。だけど坊っちゃまは楽しみに待っているのでサボることもできない。
どうしようか悩んで……普段はしない化粧をこんな夜にわざわざお化粧をして坊っちゃまの部屋へと向かった。
少しは誤魔化せるかな?
ドキドキしながら部屋へ入ると、坊っちゃまが怒り出した。
「ダリア、どうしたの?ないたの?おめめが、あかいよ?だれがいじめたの?ぼくが、ダリア、まもる!」
そう言って坊っちゃまがわたしに抱きついてきた。
「ダリア、いたい?おめめがあかい、いたい?」
わたしの頭を小さな手で撫でてくれた。
ミサさんが「坊っちゃま、ダリアのことは心配しなくても大丈夫ですよ。わたし達が守ってあげますから」と言ってくれた。
「ぼくもまもるもん!」
「坊っちゃま、ありがとうございます。そのお言葉だけでダリアは嬉しいです」
「ちがう!ダリアがないたら、やだもん!」
そんな話をしていたら旦那様が坊っちゃまの部屋に入ってきた。
「リオン、どうした?そんなに大きな声を出して?」
「おとうさま、ダリア、おめめ、あかいの。だれかいじわる、したんだよ」
「ち、違います。坊っちゃま、心配しなくても大丈夫ですよ、ちょっとだけ悲しい本を読んで泣いちゃっただけですから」
「ほんとぉ?」坊っちゃまの綺麗な目がわたしを見つめる。嘘ついてごめんなさい。そう思いながら「ほんとです」と嘘をついた。
ちょっと胸が痛かったけど、坊っちゃまが心配するといけないのでこれは必要な嘘なんだと自分に言い聞かせた。
なんとか坊っちゃまも落ち着いたので、絵本を数冊読むと、坊っちゃまは気持ちよさそうに眠りについた。
その後、ミサさんが付き添ってくれて旦那様の部屋へと呼ばれた。
「ダリア、君のプライベートのことを無理やり聞くつもりはない。だけどもし悩みがあったり困ったことがあって相談したいことがあったらいつでも言ってきなさい。力になるからね」
旦那様は何も聞かずにいてくれた。ミサさんも「わたし達はいつでも頑張ってるダリアの味方だから」と言ってくれた。
ーーー本当は、あの一夜を共にした彼女が言ってた話……お金を払ってわたしのことを色々調べたと言ってたけど、誰がわたしのことを色々話したのか気になっていた。
わたしが外に出る時間のことや休日のことまで知ってる使用人なんて……
そんなたくさんはいないと思う。だとしたら絞られるのは数人……わたしそんなに人に恨まれることしたかな……
落ち込んでいる時って全てが悪い方に考えてしまう。
返事をしなかった。
ううん、声が出なかった。
ーーーこんな時なんて言えばいい?
『久しぶり?』『元気にしてた?』『わたしは貴方にとって……』
唇を噛んで俯いた。
マリアさんは驚いた顔でわたしとロードの顔を何度かキョロキョロと見ていた。
そんな時……
「ロード、ごめんなさい。急いで着替えるからもう少し待っててね」
カリナさんがお店から出て来た。
「ロード?」
カリナさんがわたしとマリアさんを見て、ロードに「知り合い?」と聞いた。
「あっ……幼馴染なんだ」
ーーーうん、間違えていない。
わたしとロードは幼馴染。
だからわたしは上を向いた。
「はい、ロードとは同じ村の出身なんです」
カリナさんに向かって笑顔を作る。
手が震えていた。だけど誰にも悟られないように「ロード、またね」と笑って手を振ってその場を離れた。
マリアさんは「ごめんなさい。ここに連れてくるべきではなかったみたいね」と言った。
わたしは何も答えず作り笑いをして返した。
「また来週、お伺いします。今日はありがとうございました」
もちろんロードがわたしを追いかけてくることなんかない。
ーーーわたし頑張ったよね。そろそろ泣いてもいいかな。
歩きながら涙が出た。周りの人たちの視線が泣いてるわたしに向かってるのに気がついたけど、そんなことどうでもいいや。
だって失恋したんだもん。ずっと好きだったロードがわたしではない女の人に、優しく話しかけて迎えに行って……
屋敷に着くと人に見られないように急いで自分の部屋へと戻った。
いっぱい泣いた。昼間マリアさんがご馳走してくれたのでお腹も空いていない。おかげでたくさん泣くことが出来た。
気持ちはすっきりはしないけどこれ以上泣いてはいられない。目を濡れたタオルで冷やして腫れた瞼を少しでもまともに見えるようにと頑張ってはみたんだけど……
やっぱり泣いたのわかってしまう。だけど坊っちゃまは楽しみに待っているのでサボることもできない。
どうしようか悩んで……普段はしない化粧をこんな夜にわざわざお化粧をして坊っちゃまの部屋へと向かった。
少しは誤魔化せるかな?
ドキドキしながら部屋へ入ると、坊っちゃまが怒り出した。
「ダリア、どうしたの?ないたの?おめめが、あかいよ?だれがいじめたの?ぼくが、ダリア、まもる!」
そう言って坊っちゃまがわたしに抱きついてきた。
「ダリア、いたい?おめめがあかい、いたい?」
わたしの頭を小さな手で撫でてくれた。
ミサさんが「坊っちゃま、ダリアのことは心配しなくても大丈夫ですよ。わたし達が守ってあげますから」と言ってくれた。
「ぼくもまもるもん!」
「坊っちゃま、ありがとうございます。そのお言葉だけでダリアは嬉しいです」
「ちがう!ダリアがないたら、やだもん!」
そんな話をしていたら旦那様が坊っちゃまの部屋に入ってきた。
「リオン、どうした?そんなに大きな声を出して?」
「おとうさま、ダリア、おめめ、あかいの。だれかいじわる、したんだよ」
「ち、違います。坊っちゃま、心配しなくても大丈夫ですよ、ちょっとだけ悲しい本を読んで泣いちゃっただけですから」
「ほんとぉ?」坊っちゃまの綺麗な目がわたしを見つめる。嘘ついてごめんなさい。そう思いながら「ほんとです」と嘘をついた。
ちょっと胸が痛かったけど、坊っちゃまが心配するといけないのでこれは必要な嘘なんだと自分に言い聞かせた。
なんとか坊っちゃまも落ち着いたので、絵本を数冊読むと、坊っちゃまは気持ちよさそうに眠りについた。
その後、ミサさんが付き添ってくれて旦那様の部屋へと呼ばれた。
「ダリア、君のプライベートのことを無理やり聞くつもりはない。だけどもし悩みがあったり困ったことがあって相談したいことがあったらいつでも言ってきなさい。力になるからね」
旦那様は何も聞かずにいてくれた。ミサさんも「わたし達はいつでも頑張ってるダリアの味方だから」と言ってくれた。
ーーー本当は、あの一夜を共にした彼女が言ってた話……お金を払ってわたしのことを色々調べたと言ってたけど、誰がわたしのことを色々話したのか気になっていた。
わたしが外に出る時間のことや休日のことまで知ってる使用人なんて……
そんなたくさんはいないと思う。だとしたら絞られるのは数人……わたしそんなに人に恨まれることしたかな……
落ち込んでいる時って全てが悪い方に考えてしまう。
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