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22話 ファーラ編
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フランクはわたしの婚約者だった。
それはお父様が決めた訳ではない。
お母様の実家の伯爵家のお祖父様からの薦めだった。
フランク・ベイツド、侯爵家の嫡男。
我が家は名ばかりの公爵家だった。お母様の実家からの支援に支えられなんとか持ち堪えていたのに、お母様が亡くなって支援は減っていった。
ただ「ファーラのために潰せないから」とまだ支援してくれていた。
わたしは12歳からお父様に無理やり公爵家の帳簿や書類の整理などの仕事を押し付けられるようになった。
「優秀なお前ならこんなことは簡単だろう」と。
昼間は学校、夕方から夜中にかけてお父様の代わりに仕事をする。
子供のわたしには過酷なことだった。
一歳しか変わらない義妹のティアは、勉強が出来なくてもダンスが下手でも令嬢としてのマナーがきちんと出来ていなくても怒られることはない。
「ティアは笑っているだけでいい。お前の笑顔は私たちを幸せにしてくれる」
お父様は愛する娘のことしか見ていない。
ここにも、娘がいるのに……愛を求めているわけではない。わたしを解放して欲しい。
わたしを母方のお祖父様のところへ捨てて欲しい。
なのにお父様はわたしが利用できる事をわかっているので手放そうとはしない。
死なない程度、人前で虐待していることがわからない程度、わたしを生かす。
そんな中わたしの唯一はフランクとの手紙のやり取りだった。
海外に留学してしまったフランクにはなかなか会えない。ティアに会わせたくないと思っているわたしはフランクを屋敷に呼ぶことはない。
いつもフランクの家へ出向いていた。
フランクのお母様はとても厳しい人だった。だけど公爵令嬢でもあり、学院での成績も優秀だったわたしは好かれていた。
フランクが留学している間も、屋敷に通いお茶をする。
そんな時フランクそっくりのクロードに会ったのは偶然だった。
普段なら歩くことのない侯爵家の庭を散策していた。
フランクのお母様が帰ってくるのが1時間ほど遅れると言われ、いつもなら行かない奥の庭へと散策していた。
珍しい花がたくさん咲いていて楽しんでいた時、男の人が通っていくのを見て何か違和感を覚えた。
「……えっ?フランク?」
髪色も違うし眼鏡をかけていた。それに髪型も全く違う。フランクは長い髪を一つに束ねている。
でもさっきの人は短髪だった。
だけど……フランクに似ていた。
「フランク?」わたしは少し大きめの声で呼んでみた。
ビクッとして振り返り慌てて逃げるように消えていった。
それからは気になって、フランクの屋敷に行くと「お庭を見て帰りますね」と言ってフランクに似たあの男の人を探した。
そしてやっともう一度会うことができた。
ガシッと腕を掴んで「貴方は誰?」と聞いた。
目を逸らす彼に問い詰めた。
そしてフランクの義弟だと知った。
「絶対に誰にも言わない」と約束してたまに話しをする関係になった。
お互い愛情があるわけではなかった。
ただどちらも虐げられて暮らしているので気持ちを分かり合えた。
「フランクに話してみたら?フランクなら何とかしてくれると思うわ」
「君はわかっていないよ。フランクも父上も義母には頭が上がらないんだ。それにフランクが長い間留学しているのは俺から引き離すためさ。俺に酷い事をしている事を息子には知られたくないからね」
「そんな……」
「君こそ、目の前で酷い事を父親にされているのにそれに気が付かない義妹って一体どんな子なの?そっちの方が怖いよ」
「あの子の世界はお花畑で出来ているのよ。自分が幸せだから世の中の全ての人も幸せだと思っているの」
「はっ、そんな考えの人がこの世にいるなんてね、見てみたいよ」
それはお父様が決めた訳ではない。
お母様の実家の伯爵家のお祖父様からの薦めだった。
フランク・ベイツド、侯爵家の嫡男。
我が家は名ばかりの公爵家だった。お母様の実家からの支援に支えられなんとか持ち堪えていたのに、お母様が亡くなって支援は減っていった。
ただ「ファーラのために潰せないから」とまだ支援してくれていた。
わたしは12歳からお父様に無理やり公爵家の帳簿や書類の整理などの仕事を押し付けられるようになった。
「優秀なお前ならこんなことは簡単だろう」と。
昼間は学校、夕方から夜中にかけてお父様の代わりに仕事をする。
子供のわたしには過酷なことだった。
一歳しか変わらない義妹のティアは、勉強が出来なくてもダンスが下手でも令嬢としてのマナーがきちんと出来ていなくても怒られることはない。
「ティアは笑っているだけでいい。お前の笑顔は私たちを幸せにしてくれる」
お父様は愛する娘のことしか見ていない。
ここにも、娘がいるのに……愛を求めているわけではない。わたしを解放して欲しい。
わたしを母方のお祖父様のところへ捨てて欲しい。
なのにお父様はわたしが利用できる事をわかっているので手放そうとはしない。
死なない程度、人前で虐待していることがわからない程度、わたしを生かす。
そんな中わたしの唯一はフランクとの手紙のやり取りだった。
海外に留学してしまったフランクにはなかなか会えない。ティアに会わせたくないと思っているわたしはフランクを屋敷に呼ぶことはない。
いつもフランクの家へ出向いていた。
フランクのお母様はとても厳しい人だった。だけど公爵令嬢でもあり、学院での成績も優秀だったわたしは好かれていた。
フランクが留学している間も、屋敷に通いお茶をする。
そんな時フランクそっくりのクロードに会ったのは偶然だった。
普段なら歩くことのない侯爵家の庭を散策していた。
フランクのお母様が帰ってくるのが1時間ほど遅れると言われ、いつもなら行かない奥の庭へと散策していた。
珍しい花がたくさん咲いていて楽しんでいた時、男の人が通っていくのを見て何か違和感を覚えた。
「……えっ?フランク?」
髪色も違うし眼鏡をかけていた。それに髪型も全く違う。フランクは長い髪を一つに束ねている。
でもさっきの人は短髪だった。
だけど……フランクに似ていた。
「フランク?」わたしは少し大きめの声で呼んでみた。
ビクッとして振り返り慌てて逃げるように消えていった。
それからは気になって、フランクの屋敷に行くと「お庭を見て帰りますね」と言ってフランクに似たあの男の人を探した。
そしてやっともう一度会うことができた。
ガシッと腕を掴んで「貴方は誰?」と聞いた。
目を逸らす彼に問い詰めた。
そしてフランクの義弟だと知った。
「絶対に誰にも言わない」と約束してたまに話しをする関係になった。
お互い愛情があるわけではなかった。
ただどちらも虐げられて暮らしているので気持ちを分かり合えた。
「フランクに話してみたら?フランクなら何とかしてくれると思うわ」
「君はわかっていないよ。フランクも父上も義母には頭が上がらないんだ。それにフランクが長い間留学しているのは俺から引き離すためさ。俺に酷い事をしている事を息子には知られたくないからね」
「そんな……」
「君こそ、目の前で酷い事を父親にされているのにそれに気が付かない義妹って一体どんな子なの?そっちの方が怖いよ」
「あの子の世界はお花畑で出来ているのよ。自分が幸せだから世の中の全ての人も幸せだと思っているの」
「はっ、そんな考えの人がこの世にいるなんてね、見てみたいよ」
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