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19話
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早くに目が覚めて扉を開けて廊下を覗き周囲を見回した。
まだ静かな屋敷の中、そっと屋敷を抜け出した。
目指すはわたしが住んでいた反対側の離れの屋敷。
場所はよくわからないけど、たぶん反対に行けばなんとかなるはず。
夜が明け始め、少し明るくなりつつある時間。だけど少し足元がおぼつかない。
何度か転びながら必死で『南の離れ』の屋敷を探した。
手は泥だらけスカートも汚れて、これでは屋敷に戻れば抜け出したことがバレてしまいそう。
だけどもう今更だ。
前に進むしかない。
「ティア?」
声が聞こえてきた。
「あ、お爺さん?」
「こんな所で何をしているんだ?泥だらけじゃないか?」
「お爺さんこそどうしたんですか?こんな朝早くに」
「わしは暇だから庭の手入れをしたり散歩したりしていたんだ」
「こんな早い時間にですか?」
「歳を取ると目が覚めるのも早いんだ」
「そうなんですね。あの……ところで南の離れの場所って何処にあるか知ってますか?」
「……フランクの場所か……会わない方がいいと思うぞ」
「そんなに悪いのですか?」
「………案内しよう」
お爺さんはそれ以上話そうとはしなかった。だからわたしは黙ってついて行った。
しばらく歩いてから振り返った。
「ここだ、フランクのいる場所は」
そこは小さなお屋敷だった。
「よかった、病人にわたしみたいな家を当てがっていたらどうしようかと心配していたんです。ここなら暑さも寒さも十分に凌げますね」
「ティア、すまない。お前には辛い思いをさせたな」
「クロード様が住んでいた場所ですよ?確かに通気性が良すぎるけど、困るほどではありませんでした」
お屋敷に鍵がかかっていた。
ノックをするとお爺さんの顔を見て開けてくれた。
ーーお爺さんがいなかったら来ても入れてはもらえなかったわ。
何も考えず行動して反省。だからお義姉様に何も考えていないと言われてしまうのよね。
「朝早くにすまない。フランクの容態は?」
使用人の女性が首を横に振る。
「そうか……朝早いがこの娘に会わせてやって欲しい……その前にティア、顔と手を洗いなさい」
「旦那様、ティア様はお怪我もされております。まずは傷の手当てと……お洋服も着替えていただきましょう。わたし達の使用人用の服しかありませんが着ないよりマシですので」
「ご迷惑をかけてごめんなさい」
ーーわたしのせいでまた人に迷惑を掛けてしまった。
手当てをしてもらい服を着替えて、フランク様のいる部屋へと向かった。
そこにいたのは……痩せていつ死んでもおかしくない状態に見えたフランク様だった。
「フランク様……」
どう声をかけていいのかわからなくて、名前を呼んだ。
「ティア、フランクは肺の病気を患っているんだ。今のところ治療薬もない状態だ。薬を探してはいるが見つからない、外国にも問い合わせて探してもらっている。薬が見つかるかその前にフランクの身体がもたないか……わからない状態なんだよ」
「本当に病気だったんですね」
もしかしたら……軟禁されているだけかも…と思っていた。本当に悪いなんて……
「………ティ…ア……」
「フランク様?うるさくしてすみません……」
ーー大丈夫ですか?
その言葉は言えなかった。だって大丈夫ではないのだもの。
「う…う…ん、会…えて嬉……しいよ」
「わたしもフランク様に久しぶりに会えて嬉しいです」
「でも…どうし…て君が…こ…こに?」
「ちょっと訳あってこちらのお屋敷でお世話になっているんです。もし良かったらまた顔を出しに来てもいいですか?」
「こない方……がいいと…思う…君に…迷惑…をかける…から」
「あら?わたしそんなこと気にしない、空気の読めない子なんですよ?」
わたしは明るい声で精一杯の笑顔でフランク様に言った。
まだ静かな屋敷の中、そっと屋敷を抜け出した。
目指すはわたしが住んでいた反対側の離れの屋敷。
場所はよくわからないけど、たぶん反対に行けばなんとかなるはず。
夜が明け始め、少し明るくなりつつある時間。だけど少し足元がおぼつかない。
何度か転びながら必死で『南の離れ』の屋敷を探した。
手は泥だらけスカートも汚れて、これでは屋敷に戻れば抜け出したことがバレてしまいそう。
だけどもう今更だ。
前に進むしかない。
「ティア?」
声が聞こえてきた。
「あ、お爺さん?」
「こんな所で何をしているんだ?泥だらけじゃないか?」
「お爺さんこそどうしたんですか?こんな朝早くに」
「わしは暇だから庭の手入れをしたり散歩したりしていたんだ」
「こんな早い時間にですか?」
「歳を取ると目が覚めるのも早いんだ」
「そうなんですね。あの……ところで南の離れの場所って何処にあるか知ってますか?」
「……フランクの場所か……会わない方がいいと思うぞ」
「そんなに悪いのですか?」
「………案内しよう」
お爺さんはそれ以上話そうとはしなかった。だからわたしは黙ってついて行った。
しばらく歩いてから振り返った。
「ここだ、フランクのいる場所は」
そこは小さなお屋敷だった。
「よかった、病人にわたしみたいな家を当てがっていたらどうしようかと心配していたんです。ここなら暑さも寒さも十分に凌げますね」
「ティア、すまない。お前には辛い思いをさせたな」
「クロード様が住んでいた場所ですよ?確かに通気性が良すぎるけど、困るほどではありませんでした」
お屋敷に鍵がかかっていた。
ノックをするとお爺さんの顔を見て開けてくれた。
ーーお爺さんがいなかったら来ても入れてはもらえなかったわ。
何も考えず行動して反省。だからお義姉様に何も考えていないと言われてしまうのよね。
「朝早くにすまない。フランクの容態は?」
使用人の女性が首を横に振る。
「そうか……朝早いがこの娘に会わせてやって欲しい……その前にティア、顔と手を洗いなさい」
「旦那様、ティア様はお怪我もされております。まずは傷の手当てと……お洋服も着替えていただきましょう。わたし達の使用人用の服しかありませんが着ないよりマシですので」
「ご迷惑をかけてごめんなさい」
ーーわたしのせいでまた人に迷惑を掛けてしまった。
手当てをしてもらい服を着替えて、フランク様のいる部屋へと向かった。
そこにいたのは……痩せていつ死んでもおかしくない状態に見えたフランク様だった。
「フランク様……」
どう声をかけていいのかわからなくて、名前を呼んだ。
「ティア、フランクは肺の病気を患っているんだ。今のところ治療薬もない状態だ。薬を探してはいるが見つからない、外国にも問い合わせて探してもらっている。薬が見つかるかその前にフランクの身体がもたないか……わからない状態なんだよ」
「本当に病気だったんですね」
もしかしたら……軟禁されているだけかも…と思っていた。本当に悪いなんて……
「………ティ…ア……」
「フランク様?うるさくしてすみません……」
ーー大丈夫ですか?
その言葉は言えなかった。だって大丈夫ではないのだもの。
「う…う…ん、会…えて嬉……しいよ」
「わたしもフランク様に久しぶりに会えて嬉しいです」
「でも…どうし…て君が…こ…こに?」
「ちょっと訳あってこちらのお屋敷でお世話になっているんです。もし良かったらまた顔を出しに来てもいいですか?」
「こない方……がいいと…思う…君に…迷惑…をかける…から」
「あら?わたしそんなこと気にしない、空気の読めない子なんですよ?」
わたしは明るい声で精一杯の笑顔でフランク様に言った。
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