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18話
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カリンが迎えに来てくれて屋敷に戻るとわたしは部屋に通された。
そこは明らかに夫婦の寝室。
「カリン、わたしってここで暮らさないといけないのかしら?」
「奥様ですから当たり前ではないですか」
カリンは嬉しそうに部屋の中の整理を始めた。
真ん中に寝室があり両端にそれぞれの部屋がある。
わたしの部屋にも小さなベッドが置いてあったのを見てホッとした。
お風呂もわたしの部屋にあった。
ーーこれならなんとか過ごせそうね。
机にわたしの大事なポプリを並べた。
作業場がなくなったのは困るけど、ベランダがあるのでなんとかなりそう。
カリンにお願いをしてベランダに敷くための新聞紙をたくさん持ってきてもらった。
そしてテーブルにはたくさんの刺繍糸やレース編み用の糸を並べて
「さあ始めよう」
いつもよりも少し遅めのスタート。
とりあえず今日のノルマの分を仕上げていく。
最近はカリンが注文を取ってきてくれるのでその分だけは何があってもこなしたい。時間に余裕があれば買い取ってもらえるように他にも作っている。
夜になり「お食事です」と運んできてくれたのはご馳走だった。
「カリン、美味しそうなんだけど今のわたしにはこんなにたくさんの食事は贅沢だし食べられないわ。勿体無いからいつもの食事にして欲しいの」
「え?でもフランク様からの指示ですので」
「うん、でも残してしまうのはいけないことよ、だからお願い」
にっこりと微笑み瞳をうるうるとしながら両手を握って可愛くポーズ。
こんな時は以前はよくみんなにしていた「お願い」ポーズが上手く使えて助かる。
もう我儘はしないと思ってはいるけど、捨てるより我儘言っても減らしてもらう方がいいもの。
「仕方ないですね、料理長にティア様はたくさん食べられないからと減らしてもらうようにお願いしますね?」
「うん、ありがとう………ところでこの屋敷には病人とかって居ないのかしら?」
「病人?」
「ええ、お客様で療養されている方とか……大きな屋敷で貴族の場合、よく王都なら良いお医者様がいるからと田舎の貴族の方とか来られたりするわよね?」
「えっ?そうなんですか?」
「ええ、もちろんよ。わたしが暮らしていた公爵家でも療養で来られていた親族がいらっしゃったわ」
「そうなんですね、やはりどこのお屋敷でもいらっしゃるんですね」
ーーうん、居ないけど。
でもたまには居ると思うの。たぶん。普通貴族は王都に屋敷を持っているし、領地に療養は聞くけど王都に療養はあまり聞かないけど。
カリンを騙しているみたいで心の中でごめんなさい、と思ってはいるけどとりあえず今は嘘をついてフランク様のことを探る。
「ここ一年近く行ってはいけない場所があるんです。そこには体調が悪くてずっと療養をされているお方がいるらしいのですが、専属の使用人を連れてきているのでわたし達は行ってはいけないと言われています」
「そうなの」
ーーやっぱりフランク様はこの屋敷のどこかにいるのね。
「そこはどこの場所なのかしら?」
カリンは、「えっ?駄目ですよ。話してはいけないと執事のバントンさんに言われていますもの」
「あの執事の人、バントンって言うの?いつもわたしのこと冷た~い目をして見るのよね」
「バントンさんは無駄な話はしない人ですから。とても優秀な方なんですけどね」
「じゃあ、場所は南の離れね?」
とりあえずわたしが居た場所の反対側をカマをかけて言ってみた。
「な、なんで分かるんですか?ティア様ってすごい!どこのお屋敷でも療養って南の離れですることが多いんですね?」
「えっ、ええ、そうなの」
あまりにも素直なカリンに心の中で謝りながら、明日行ってみようと頭の中で計画を立てた。
そしてわたしの部屋の中から鍵を掛けて、椅子とテーブルを扉の前に置いてわたしの部屋にクロード様が入ってこないようにしてから安心して眠りについた。
そこは明らかに夫婦の寝室。
「カリン、わたしってここで暮らさないといけないのかしら?」
「奥様ですから当たり前ではないですか」
カリンは嬉しそうに部屋の中の整理を始めた。
真ん中に寝室があり両端にそれぞれの部屋がある。
わたしの部屋にも小さなベッドが置いてあったのを見てホッとした。
お風呂もわたしの部屋にあった。
ーーこれならなんとか過ごせそうね。
机にわたしの大事なポプリを並べた。
作業場がなくなったのは困るけど、ベランダがあるのでなんとかなりそう。
カリンにお願いをしてベランダに敷くための新聞紙をたくさん持ってきてもらった。
そしてテーブルにはたくさんの刺繍糸やレース編み用の糸を並べて
「さあ始めよう」
いつもよりも少し遅めのスタート。
とりあえず今日のノルマの分を仕上げていく。
最近はカリンが注文を取ってきてくれるのでその分だけは何があってもこなしたい。時間に余裕があれば買い取ってもらえるように他にも作っている。
夜になり「お食事です」と運んできてくれたのはご馳走だった。
「カリン、美味しそうなんだけど今のわたしにはこんなにたくさんの食事は贅沢だし食べられないわ。勿体無いからいつもの食事にして欲しいの」
「え?でもフランク様からの指示ですので」
「うん、でも残してしまうのはいけないことよ、だからお願い」
にっこりと微笑み瞳をうるうるとしながら両手を握って可愛くポーズ。
こんな時は以前はよくみんなにしていた「お願い」ポーズが上手く使えて助かる。
もう我儘はしないと思ってはいるけど、捨てるより我儘言っても減らしてもらう方がいいもの。
「仕方ないですね、料理長にティア様はたくさん食べられないからと減らしてもらうようにお願いしますね?」
「うん、ありがとう………ところでこの屋敷には病人とかって居ないのかしら?」
「病人?」
「ええ、お客様で療養されている方とか……大きな屋敷で貴族の場合、よく王都なら良いお医者様がいるからと田舎の貴族の方とか来られたりするわよね?」
「えっ?そうなんですか?」
「ええ、もちろんよ。わたしが暮らしていた公爵家でも療養で来られていた親族がいらっしゃったわ」
「そうなんですね、やはりどこのお屋敷でもいらっしゃるんですね」
ーーうん、居ないけど。
でもたまには居ると思うの。たぶん。普通貴族は王都に屋敷を持っているし、領地に療養は聞くけど王都に療養はあまり聞かないけど。
カリンを騙しているみたいで心の中でごめんなさい、と思ってはいるけどとりあえず今は嘘をついてフランク様のことを探る。
「ここ一年近く行ってはいけない場所があるんです。そこには体調が悪くてずっと療養をされているお方がいるらしいのですが、専属の使用人を連れてきているのでわたし達は行ってはいけないと言われています」
「そうなの」
ーーやっぱりフランク様はこの屋敷のどこかにいるのね。
「そこはどこの場所なのかしら?」
カリンは、「えっ?駄目ですよ。話してはいけないと執事のバントンさんに言われていますもの」
「あの執事の人、バントンって言うの?いつもわたしのこと冷た~い目をして見るのよね」
「バントンさんは無駄な話はしない人ですから。とても優秀な方なんですけどね」
「じゃあ、場所は南の離れね?」
とりあえずわたしが居た場所の反対側をカマをかけて言ってみた。
「な、なんで分かるんですか?ティア様ってすごい!どこのお屋敷でも療養って南の離れですることが多いんですね?」
「えっ、ええ、そうなの」
あまりにも素直なカリンに心の中で謝りながら、明日行ってみようと頭の中で計画を立てた。
そしてわたしの部屋の中から鍵を掛けて、椅子とテーブルを扉の前に置いてわたしの部屋にクロード様が入ってこないようにしてから安心して眠りについた。
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