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17話
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フランク様の弟さんはこの屋敷ではフランク様として過ごされていた。
誰も疑っていない。わたしに先ほど見せた顔ではなく完璧なフランク様になっている。一瞬本当はフランク様?と思ってしまう。
カリンは本邸に移れたことをとても喜んでくれた。
「よかったです。フランク様がティア様に冷たかったので心配しておりました。何かお考えがあったのでしょう」
ーーそうね、うん、あったわ。言えないけど。
「お荷物は全て運びました」
「あっ、ごめんなさい。一度あの家に行きたいの」
「全て運びましたけど?」
「うん、だけど、やっぱり一度行きたいの。ダメかしら?」
なんとかお願いして一度だけあの離れの家に連れて行ってもらった。
自分の隠していた宝石も気になり取りに来たけど、もう一つ取りに来たものがある。
台所で見つけたあるもの。
「今までありがとう、また戻ってくるから待っててね」
家に声を掛けて頭をペコっと下げて出た。
途中お庭で花を摘ませてもらった。
「もう売りに行かなくても生活には困らないと思いますけど?」
「ううん、出来ればせっかく作っているのに辞めたくないの」
庭でお爺さんの姿を探した。
カリンが居ても話しかけなければ大丈夫なはず。
ーーあ、あそこに……
「カリン、わたしまたあの家に戻ってくるつもりなの。だからポプリ作りも刺繍をするのもやめないわ。あの家が大好きなの」
ーーお爺さんに伝わったかしら?
しばらくここに来られないこと。
「だから今日は少し多めにお花を摘んでいこうと思うの。だから後でお迎えに来てくれるかしら?」
「もちろんいいですよ。迷子になったら困りますもの」
「ふふ、そんな子供ではないわ」
「家とこのお庭までの道を覚えるのに時間がかかったのは誰でしたか?」
「そ、そうね。カリンがいなかったらわたしお家に帰れなかったかもしれないわね」
お互い顔を見合わせて笑った。
心を許せる大切な人になりつつあるカリン。
なのにごめんね、お爺さんのことは話せないの。
心の中で謝りながら、カリンの姿が見えなくなるのを待った。
そして「お爺さん?」と呼んだらやっぱりまだ隠れて待っていてくれた。
「お爺さん、わたし、あの、しばらくここにこれそうもないんです」
「……そうみたいだな。ティア……アレがしていることは間違っている。だがわたしでは止められない」
「お爺さんは、フランク様のお祖父様ですよね?それならフランク様の義弟の彼もお孫さんになるんでしょう?」
「アレがフランクではないと気がついているのか?」
「え?だって全く違いますよ?似てはいますが」
「……そうか………クロードは可哀想な子なんだ」
「どうして可哀想だと決めつけるんですか?」
「フランクの母親にずっと虐げられてきた。わたしは見て見ぬ振りをしてきたんだ」
「それは気がつかなかったから?知ろうとしなかったからですか?」
「違う、全て知っていて手を差し伸べなかった。庶子のクロードを下手に助ければフランクの地位が危ぶまれるからな」
「よくわかりません、フランク様はとても辛そうな顔をされていました。あんなに辛そうなのに誰も助けてあげない、ただ可哀想だと言って。わたしお義姉様もわたし達に復讐してもお辛くなるだけだと思うんです。されたことを相手にしたからと言って気が晴れるわけでもないと思うし」
「クロードは優秀すぎたんだ。だからフランクの母、ガレットはフランクがこれ以上勉強出来ないように使用人として扱い出した。わたしの息子も正妻には頭が上がらず、愛人の子であるクロードが何をされても助けなかった」
「今フランク様やご両親はどこにいるのですか?」
「息子夫婦は領地に追いやられたよ、フランクは今も体調を崩して寝込んだままだ」
「え?体調が悪いのですか?」
「……倒れたんだ。その間クロードにフランクの真似事をさせていたんだ。嫁はフランクが倒れて動けないことが許せなかった。やっと王子の側近に選ばれたばかりだったから。だからその間仕方なくクロードにフランクになるように命じたんだ」
「お爺さんはそれを黙って見守ったんですか?」
「反対はしたさ、だがあの嫁さんは人の話を聞かない。それにクロードは完璧に演じてしまったんだ」
ーークロード様……自分の本当の名前すら名乗れないなんて本当は辛いはず。フランク様のことどう思っているのかしら?
それにフランク様は今どこにいるの?
誰も疑っていない。わたしに先ほど見せた顔ではなく完璧なフランク様になっている。一瞬本当はフランク様?と思ってしまう。
カリンは本邸に移れたことをとても喜んでくれた。
「よかったです。フランク様がティア様に冷たかったので心配しておりました。何かお考えがあったのでしょう」
ーーそうね、うん、あったわ。言えないけど。
「お荷物は全て運びました」
「あっ、ごめんなさい。一度あの家に行きたいの」
「全て運びましたけど?」
「うん、だけど、やっぱり一度行きたいの。ダメかしら?」
なんとかお願いして一度だけあの離れの家に連れて行ってもらった。
自分の隠していた宝石も気になり取りに来たけど、もう一つ取りに来たものがある。
台所で見つけたあるもの。
「今までありがとう、また戻ってくるから待っててね」
家に声を掛けて頭をペコっと下げて出た。
途中お庭で花を摘ませてもらった。
「もう売りに行かなくても生活には困らないと思いますけど?」
「ううん、出来ればせっかく作っているのに辞めたくないの」
庭でお爺さんの姿を探した。
カリンが居ても話しかけなければ大丈夫なはず。
ーーあ、あそこに……
「カリン、わたしまたあの家に戻ってくるつもりなの。だからポプリ作りも刺繍をするのもやめないわ。あの家が大好きなの」
ーーお爺さんに伝わったかしら?
しばらくここに来られないこと。
「だから今日は少し多めにお花を摘んでいこうと思うの。だから後でお迎えに来てくれるかしら?」
「もちろんいいですよ。迷子になったら困りますもの」
「ふふ、そんな子供ではないわ」
「家とこのお庭までの道を覚えるのに時間がかかったのは誰でしたか?」
「そ、そうね。カリンがいなかったらわたしお家に帰れなかったかもしれないわね」
お互い顔を見合わせて笑った。
心を許せる大切な人になりつつあるカリン。
なのにごめんね、お爺さんのことは話せないの。
心の中で謝りながら、カリンの姿が見えなくなるのを待った。
そして「お爺さん?」と呼んだらやっぱりまだ隠れて待っていてくれた。
「お爺さん、わたし、あの、しばらくここにこれそうもないんです」
「……そうみたいだな。ティア……アレがしていることは間違っている。だがわたしでは止められない」
「お爺さんは、フランク様のお祖父様ですよね?それならフランク様の義弟の彼もお孫さんになるんでしょう?」
「アレがフランクではないと気がついているのか?」
「え?だって全く違いますよ?似てはいますが」
「……そうか………クロードは可哀想な子なんだ」
「どうして可哀想だと決めつけるんですか?」
「フランクの母親にずっと虐げられてきた。わたしは見て見ぬ振りをしてきたんだ」
「それは気がつかなかったから?知ろうとしなかったからですか?」
「違う、全て知っていて手を差し伸べなかった。庶子のクロードを下手に助ければフランクの地位が危ぶまれるからな」
「よくわかりません、フランク様はとても辛そうな顔をされていました。あんなに辛そうなのに誰も助けてあげない、ただ可哀想だと言って。わたしお義姉様もわたし達に復讐してもお辛くなるだけだと思うんです。されたことを相手にしたからと言って気が晴れるわけでもないと思うし」
「クロードは優秀すぎたんだ。だからフランクの母、ガレットはフランクがこれ以上勉強出来ないように使用人として扱い出した。わたしの息子も正妻には頭が上がらず、愛人の子であるクロードが何をされても助けなかった」
「今フランク様やご両親はどこにいるのですか?」
「息子夫婦は領地に追いやられたよ、フランクは今も体調を崩して寝込んだままだ」
「え?体調が悪いのですか?」
「……倒れたんだ。その間クロードにフランクの真似事をさせていたんだ。嫁はフランクが倒れて動けないことが許せなかった。やっと王子の側近に選ばれたばかりだったから。だからその間仕方なくクロードにフランクになるように命じたんだ」
「お爺さんはそれを黙って見守ったんですか?」
「反対はしたさ、だがあの嫁さんは人の話を聞かない。それにクロードは完璧に演じてしまったんだ」
ーークロード様……自分の本当の名前すら名乗れないなんて本当は辛いはず。フランク様のことどう思っているのかしら?
それにフランク様は今どこにいるの?
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