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15話
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こちらに嫁いで8ヶ月が経った頃、久しぶりに執事がわたしの家に顔を出した。
「…………ティア様、、ご主人様がお呼びです」
「フランク様?」
わたしの問いに答えたくないのか目を逸らされてしまった。
「こちらへ」そう言ってわたしは執事の後をついて行く。
家から本邸まではかなりの距離がある。
久しぶりの長い距離を歩くのと男の人に合わせて歩くので呼吸が乱れた。
執事は必死でついて行くわたしに振り返り「あ、速かったですか?失礼しました」と、少し歩調を緩めてくれた。
わたしはフランク様に会ったらどうしたらいいのか分からず不安になりながらも、あの優しかったフランク様なら今のこの現状をなんとかして下さるかもしれないと淡い期待をしていた。
「こちらです、お入りください」
大きな本邸に尻込みして少しドギマギしながら玄関を入った。
長い廊下を歩く間、絵画や美術品がセンスよく飾られているのを思わず見入ってしまう。
実家の公爵家ではあまり美術品を飾っていなかった。ここはとても素敵だわ、落ち着きがあってゆっくりとした時間が流れているのを感じる。
執事が扉をノックして部屋へ入るように促された。
「失礼致します」
頭を下げて中に入る。
そこにいたのは………誰?
フランク様に似ているけど違う。顔は確かにそっくりなのに、笑った顔も雰囲気も違う。一年以上お会いしていない。だけど違う人だと会った瞬間に感じた。
「ティア?久しぶりだね?」
目の前の「彼」はわたしをティアと呼んだ。
そして「ずっとあんなところに住まわせて済まなかった」と詫びる。
わたしはどう答えていいのかわからず目を逸らしてしまった。
「ティア?」もう一度わたしの名前を呼ぶ。
同じ声、同じ顔で。
「あ、あの、どうしてずっと会えなかったのでしょう?」
「うん?ごめんね。仕事で飛び回っていたんだ。屋敷に帰ってきたら君が何故かいなくて。手違いで君は離れに住んでいたみたいなんだ」
「手違い?」
「そうだよ、君は僕の妻なのに手違いで離れで暮らしていただけなんだ」
「……そうですか……理由がわかりました。わたし……あの、下がらせて頂きますね」
「どこへ行くつもりなんだ?」
「え?自分の家に帰るつもりです」
「家?」
「はい、今暮らしている…離れ?ですかね、そこに」
「今日から君は僕と一緒の部屋で過ごすことになるんだよ」
「わたしは……もう今の場所が自分の家だと思っていますので……」やんわりとお断りをした。
今更フランク様と夫婦生活なんて……出来ない。それにこの人はフランク様ではない。
近づいてはいけない、何故かそう感じた。
「何を言っているんだい?僕たちは夫婦なんだ」
「………貴方は誰ですか?」
怖い、でもこの人はフランク様ではない。似ているけど、だけど違う。
「君ってお花畑に住む頭空っぽの妖精さんだったはずなのに、鋭いね?僕がわかるの?」
わたしは頭を横に振って「わかりません」と答えた。
「……でも、貴方がフランク様でないことはわかります」
「へぇ、どうしてそう思うの?」
「話す時の雰囲気とかはもちろんですが貴方の癖です、先程から人と話す時に、人を見たと思ったらすぐに目を逸らすのです。フランク様は目を逸らさず話してくださいます。それにそんな嘘くさい笑顔はしません」
「ふーん、君ってやっぱりフランクが好きだったの?」
「……違います、フランク様はお義姉様の婚約者です」
「だったら何故奪うようなことをしたんだ?ファーラを何故傷つけるような行動ばかりしたんだ?」
違う、そんなことしたつもりはない!
そう言いたいのに、何を言っても言い訳にしか聞こえないのだろうと思うとどう説明していいのかわからなくて……
「…………ティア様、、ご主人様がお呼びです」
「フランク様?」
わたしの問いに答えたくないのか目を逸らされてしまった。
「こちらへ」そう言ってわたしは執事の後をついて行く。
家から本邸まではかなりの距離がある。
久しぶりの長い距離を歩くのと男の人に合わせて歩くので呼吸が乱れた。
執事は必死でついて行くわたしに振り返り「あ、速かったですか?失礼しました」と、少し歩調を緩めてくれた。
わたしはフランク様に会ったらどうしたらいいのか分からず不安になりながらも、あの優しかったフランク様なら今のこの現状をなんとかして下さるかもしれないと淡い期待をしていた。
「こちらです、お入りください」
大きな本邸に尻込みして少しドギマギしながら玄関を入った。
長い廊下を歩く間、絵画や美術品がセンスよく飾られているのを思わず見入ってしまう。
実家の公爵家ではあまり美術品を飾っていなかった。ここはとても素敵だわ、落ち着きがあってゆっくりとした時間が流れているのを感じる。
執事が扉をノックして部屋へ入るように促された。
「失礼致します」
頭を下げて中に入る。
そこにいたのは………誰?
フランク様に似ているけど違う。顔は確かにそっくりなのに、笑った顔も雰囲気も違う。一年以上お会いしていない。だけど違う人だと会った瞬間に感じた。
「ティア?久しぶりだね?」
目の前の「彼」はわたしをティアと呼んだ。
そして「ずっとあんなところに住まわせて済まなかった」と詫びる。
わたしはどう答えていいのかわからず目を逸らしてしまった。
「ティア?」もう一度わたしの名前を呼ぶ。
同じ声、同じ顔で。
「あ、あの、どうしてずっと会えなかったのでしょう?」
「うん?ごめんね。仕事で飛び回っていたんだ。屋敷に帰ってきたら君が何故かいなくて。手違いで君は離れに住んでいたみたいなんだ」
「手違い?」
「そうだよ、君は僕の妻なのに手違いで離れで暮らしていただけなんだ」
「……そうですか……理由がわかりました。わたし……あの、下がらせて頂きますね」
「どこへ行くつもりなんだ?」
「え?自分の家に帰るつもりです」
「家?」
「はい、今暮らしている…離れ?ですかね、そこに」
「今日から君は僕と一緒の部屋で過ごすことになるんだよ」
「わたしは……もう今の場所が自分の家だと思っていますので……」やんわりとお断りをした。
今更フランク様と夫婦生活なんて……出来ない。それにこの人はフランク様ではない。
近づいてはいけない、何故かそう感じた。
「何を言っているんだい?僕たちは夫婦なんだ」
「………貴方は誰ですか?」
怖い、でもこの人はフランク様ではない。似ているけど、だけど違う。
「君ってお花畑に住む頭空っぽの妖精さんだったはずなのに、鋭いね?僕がわかるの?」
わたしは頭を横に振って「わかりません」と答えた。
「……でも、貴方がフランク様でないことはわかります」
「へぇ、どうしてそう思うの?」
「話す時の雰囲気とかはもちろんですが貴方の癖です、先程から人と話す時に、人を見たと思ったらすぐに目を逸らすのです。フランク様は目を逸らさず話してくださいます。それにそんな嘘くさい笑顔はしません」
「ふーん、君ってやっぱりフランクが好きだったの?」
「……違います、フランク様はお義姉様の婚約者です」
「だったら何故奪うようなことをしたんだ?ファーラを何故傷つけるような行動ばかりしたんだ?」
違う、そんなことしたつもりはない!
そう言いたいのに、何を言っても言い訳にしか聞こえないのだろうと思うとどう説明していいのかわからなくて……
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