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3話 15歳
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フランク様はそれから度々屋敷に来られるようになった。
なのにお義姉様は、嬉しくないのかしら?
だんだん不機嫌になっていく気がする。
「ティア!馴れ馴れしくフランク様に話しかけないで!」
ーーえ?ただご挨拶しただけなのに。
フランク様に挨拶をして少し話しただけで怒られた。
またある日はーー
「どうしてわたしより先に席に座って話しているの?」
ーーそれは、「ここに座れば?」と言われて「嫌です」とは言えなかったから。
それにお義姉様の子供の頃のお話を聞かせてくださって、とても嬉しくてつい夢中になってしまっていた。
大好きなお義姉様の子供の頃の可愛いエピソードを教えてもらっていたなんて言えなかった。
お義姉様は子供の頃の話をするのをとても嫌がった。たぶん亡くなったクラシアナ様のことを思い出すから。
お父様に聞いても「覚えていない」と言われて教えてもらえなかった。だからフランク様からの情報はわたしにとってとても大切だった。
だってこの頃は何も知らなかった。
クラシアナ様の本当の死の原因も。お義姉様がお父様に酷い罰を与えられていることも。無理矢理当主の仕事を手伝わされていることも。
素敵な婚約者がいる美人で優秀なお義姉様。
わたしの憧れで尊敬するお義姉様。
ーーわたしは無邪気にそう思っていた。
お義姉様のお友達や婚約者と仲良くするのも、わたしにとってはお義姉様が大好きだから。悪気などなかった。
だけどお義姉様は、わたしに大切な物を盗られていくことをとても苛立ち恐怖を覚えていたのだった。
もしこの時、わたしがきちんと気がついていれば……こんなことにはならなかったのかもしれない。
ううん、やっぱり同じかも。
だってクラシアナ様が亡くなった原因はお母様がわたしを妊娠して産んでしまったから。
自分の産んだ娘は愛してもらえず振り向きもしない。愛人であるお母様だけを愛し、その子供であるわたしのことを大切にしたお父様。
その憎しみは全てわたしへと。
お義姉様の心を踏み躙ったわたしへの罰。
お父様が倒れる少し前のことだった。
お義姉様はいつも苛立っていた。
流石にフランク様には近寄らないように気をつけていたつもりだった。
なのに偶々その日、フランク様が来ていると知らずにいつものように屋敷の中で侍女達と新しいドレス選びをしていた。
「ねえ、このドレスがいいかしら?」
「ティア様にはこちらの淡いピンクのドレスの方がお似合いだと思います」
「そうかな?そろそろわたしも大人っぽいドレスを選びたいのだけど」
そんな会話の途中、クスクス笑う声が扉の方から聞こえてきた。
「ごめん、ごめん。ティアがあんまり可愛くて…声が聞こえてきて思わず立ち止まって会話を立ち聞きしてしまったんだ」
「まぁ!レディのドレス選びを覗くなんて!」
わたしがぷくっと口を膨らませると、さらにフランク様が笑い出した。
「ティアは笑ったり怒ったり忙しい子だね。でも最近君の顔を見ていなかったから少し寂しかったよ?」
「あら?お義姉様のお顔さえ見れたら十分ではないのですか?」
わたしは内心ドキドキしていた。だってこんなところお義姉様に見られたらまた誤解されてしまいそう。
偶然通りかかっただけなのに。
わたしはフランク様と話しながらも『早くここから立ち去って!』と願っていた。
なのに現実はそんな簡単にはいかなかった。
「何をしているの?フランク様?」
廊下から聞こえてきたのはお義姉様の声だった。
「あっ、ごめんごめん。久しぶりにティアの声が聞こえたからつい話し込んでいたんだ。ファーラ、待たせてすまない、行こう」
フランク様は軽く手を振ってお義姉様のところへ行った。
後でまた何か言われるかもしれない。最近のお義姉様はとてもピリピリしていて怒ってばかりだった。
わたしはお義姉様のご機嫌を損なわないようにしていたつもりだったのに。
内心溜息を吐いた。
なのにお義姉様は、嬉しくないのかしら?
だんだん不機嫌になっていく気がする。
「ティア!馴れ馴れしくフランク様に話しかけないで!」
ーーえ?ただご挨拶しただけなのに。
フランク様に挨拶をして少し話しただけで怒られた。
またある日はーー
「どうしてわたしより先に席に座って話しているの?」
ーーそれは、「ここに座れば?」と言われて「嫌です」とは言えなかったから。
それにお義姉様の子供の頃のお話を聞かせてくださって、とても嬉しくてつい夢中になってしまっていた。
大好きなお義姉様の子供の頃の可愛いエピソードを教えてもらっていたなんて言えなかった。
お義姉様は子供の頃の話をするのをとても嫌がった。たぶん亡くなったクラシアナ様のことを思い出すから。
お父様に聞いても「覚えていない」と言われて教えてもらえなかった。だからフランク様からの情報はわたしにとってとても大切だった。
だってこの頃は何も知らなかった。
クラシアナ様の本当の死の原因も。お義姉様がお父様に酷い罰を与えられていることも。無理矢理当主の仕事を手伝わされていることも。
素敵な婚約者がいる美人で優秀なお義姉様。
わたしの憧れで尊敬するお義姉様。
ーーわたしは無邪気にそう思っていた。
お義姉様のお友達や婚約者と仲良くするのも、わたしにとってはお義姉様が大好きだから。悪気などなかった。
だけどお義姉様は、わたしに大切な物を盗られていくことをとても苛立ち恐怖を覚えていたのだった。
もしこの時、わたしがきちんと気がついていれば……こんなことにはならなかったのかもしれない。
ううん、やっぱり同じかも。
だってクラシアナ様が亡くなった原因はお母様がわたしを妊娠して産んでしまったから。
自分の産んだ娘は愛してもらえず振り向きもしない。愛人であるお母様だけを愛し、その子供であるわたしのことを大切にしたお父様。
その憎しみは全てわたしへと。
お義姉様の心を踏み躙ったわたしへの罰。
お父様が倒れる少し前のことだった。
お義姉様はいつも苛立っていた。
流石にフランク様には近寄らないように気をつけていたつもりだった。
なのに偶々その日、フランク様が来ていると知らずにいつものように屋敷の中で侍女達と新しいドレス選びをしていた。
「ねえ、このドレスがいいかしら?」
「ティア様にはこちらの淡いピンクのドレスの方がお似合いだと思います」
「そうかな?そろそろわたしも大人っぽいドレスを選びたいのだけど」
そんな会話の途中、クスクス笑う声が扉の方から聞こえてきた。
「ごめん、ごめん。ティアがあんまり可愛くて…声が聞こえてきて思わず立ち止まって会話を立ち聞きしてしまったんだ」
「まぁ!レディのドレス選びを覗くなんて!」
わたしがぷくっと口を膨らませると、さらにフランク様が笑い出した。
「ティアは笑ったり怒ったり忙しい子だね。でも最近君の顔を見ていなかったから少し寂しかったよ?」
「あら?お義姉様のお顔さえ見れたら十分ではないのですか?」
わたしは内心ドキドキしていた。だってこんなところお義姉様に見られたらまた誤解されてしまいそう。
偶然通りかかっただけなのに。
わたしはフランク様と話しながらも『早くここから立ち去って!』と願っていた。
なのに現実はそんな簡単にはいかなかった。
「何をしているの?フランク様?」
廊下から聞こえてきたのはお義姉様の声だった。
「あっ、ごめんごめん。久しぶりにティアの声が聞こえたからつい話し込んでいたんだ。ファーラ、待たせてすまない、行こう」
フランク様は軽く手を振ってお義姉様のところへ行った。
後でまた何か言われるかもしれない。最近のお義姉様はとてもピリピリしていて怒ってばかりだった。
わたしはお義姉様のご機嫌を損なわないようにしていたつもりだったのに。
内心溜息を吐いた。
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