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そして。
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離縁は思ったよりもスムーズに終わった。
ただ……ライのことではかなり揉めた。
ロレンスはライをわたしが育てるべきだと言ったのだ。
もちろんわたしが引き取れるなら引き取りたい。でも…わたしが幸せにできる?
「ミュゼ、俺がライを育てるよりも君が育てる方がいいと思うんだ」
ロレンスは何度もわたしにそう言うけど……
それはライが要らないから?
そんなわたしの思いに気がついたのか
「違うよ、俺はライのことを愛している。だけど父親からの愛情よりも母親からの愛情をもらって育って欲しいんだ。俺以上に君の方がライを愛している。だって君はライを置いていくと言いながら顔はずっと泣きそうだっただろう?君が本当はライとずっと居たいのだとわかるくらいに」
「………いいのかな。わたしが育てても」
「頼んだよ、たまにはライの顔を見たい。会わせてもらえる時間を作ってほしい」
「わかったわ、ありがとうロレンス」
ーーーー
一年後、ライは2歳になった。
そして……生後3ヶ月のアリアがわたしの横でスヤスヤと眠っている。
「まぁま、アリアまだねてるの?」
「うん、もう少し起きないと思うわ」
「ふうん、ひまだなぁ、ねぇおにわであそびたい」
「じゃあ、少しだけね」
ロレンスと別れてから妊娠に気がついた。
ロレンスに内緒にするわけにもいかず妊娠のことを話すと、堕ろさないで産んで欲しいと言われた。
離縁して片親だけの娘として産まれたアリア。
たまにロレンスは実家の離れで暮らすわたし達に会いにくる。
「アリアは?」
「寝ているわ、中にどうぞ」
ライはロレンスを見つけると嬉しそうに走って抱きついた。
「おとうたま、いらっしゃい」
「ライは元気だな」
「うんアリアこっち」
ロレンスを誇らしげに毎回案内するライ。
ロレンスもライを抱っこしてアリアに会いにいく。
わたし達は離縁しても子供を通じて友人のような関係になった。
彼は再婚の話がたびたび出ているけど今のところは断っているらしい。これから彼がどうするかはわからない。
わたしは実家の仕事を手伝いながら子育てをしている。
今のところ再婚の予定はない。
「ミュゼ、少しだけライを連れて外へ遊びに行ってきてもいいかな」
「お願い」
「まぁま、いってきまぁす」
ロレンスはわたしに気を遣って屋敷にはあまり居ないようにしてくれる。
もう夫婦ではない。
だからこそ線引きはきちんとしようと話し合った。
いずれライはロレンスと暮らすことになる。
アリアももしロレンスと暮らしたいと言い出せば、わたしは彼に託すつもりだ。
力のないわたしが育てるよりも子爵家とはいえ当主である彼の元で暮らす方が二人とも豊かに暮らせる。
わたしの実家は弟がいずれ伯爵家を継ぐ。お父様がライに渡すと言ってくれた爵位は出来ればそのままにしておきたい。
弟の新しくできる家族と険悪な関係にはなりたくない。
わたしは細々と仕事を手伝いながら離れで暮らせればいい。
ーーーーーー
そして今…………
「お母様、お久しぶりです」
「ライ、一年振りね?元気にしていた?」
18歳になったライはロレンスの跡を継いだ。
「お兄様、いらっしゃい」
アリアは今もわたしと共に暮らしている。
ロレンスは新しい奥様と今は領地で暮らしている。
ライは13歳の時にロレンスの跡を継ぐため、彼のところへと移った。
ロレンスとは再婚してからは会うことはない。
アリアはライに会いにいく時にロレンスに会うことがあるみたいだが、二人ともわたしにロレンスのことは話すことはない。
記憶をなくした時わたしはロレンスへの愛も一緒に失った。
彼が今どんな暮らしをしていようと興味すらなく、わたしは………
「マーカス、お帰りなさい」
「ミュゼただいま」
マーカスはわたしの頬にキスをする。
わたしはジョセフの父親のマーカスと再婚した。
マーカスとミイファさんは離縁していた。
もちろんわたしが原因ではない。
そしてたまたま我が家に商会の仕事として来ていたマーカスと再会したのだ。
「ジョセフは元気にしていますか?」
震えるわたしはマーカスに聞いた。
「元気ですよ」
ミイファさんと一度だけ会ったけどそれからお互い会うことはなかった。だから二人が離縁したことは知らなかった。
少しだけ話をして、次はジョセフを連れて来ますと言ってくれた。
ライとジョセフ、アリアが三人で遊ぶようになったのは5歳の時だった。
ライとジョセフはとても気が合うのか時間を忘れてよく遊ぶ。
わたしとマーカスの距離も少しずつ近づいていった。
そして二人が7歳になった時再婚した。
実家の離れを出て、今はマーカスとアリア、そしてジョセフと暮らしている。
ライは自ら選んでロレンスのもとへ行くことにした。
ライにとってはロレンスは父親。
「僕は父上の跡を継ぎます」
「貴方はロレンスの子よ。わたしは貴方を捨てようとした酷い母親だった、でも……笑顔で送り出すことが出来て………母親にさせてくれてありがとう、愛しているわライ」
終わり。
◆ ◆ ◆
読んでいただきありがとうございます。
【え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます】
今日から新しいお話が始まります。
よければ読んでいただけたら嬉しいです!
よろしくお願いいたします。
ただ……ライのことではかなり揉めた。
ロレンスはライをわたしが育てるべきだと言ったのだ。
もちろんわたしが引き取れるなら引き取りたい。でも…わたしが幸せにできる?
「ミュゼ、俺がライを育てるよりも君が育てる方がいいと思うんだ」
ロレンスは何度もわたしにそう言うけど……
それはライが要らないから?
そんなわたしの思いに気がついたのか
「違うよ、俺はライのことを愛している。だけど父親からの愛情よりも母親からの愛情をもらって育って欲しいんだ。俺以上に君の方がライを愛している。だって君はライを置いていくと言いながら顔はずっと泣きそうだっただろう?君が本当はライとずっと居たいのだとわかるくらいに」
「………いいのかな。わたしが育てても」
「頼んだよ、たまにはライの顔を見たい。会わせてもらえる時間を作ってほしい」
「わかったわ、ありがとうロレンス」
ーーーー
一年後、ライは2歳になった。
そして……生後3ヶ月のアリアがわたしの横でスヤスヤと眠っている。
「まぁま、アリアまだねてるの?」
「うん、もう少し起きないと思うわ」
「ふうん、ひまだなぁ、ねぇおにわであそびたい」
「じゃあ、少しだけね」
ロレンスと別れてから妊娠に気がついた。
ロレンスに内緒にするわけにもいかず妊娠のことを話すと、堕ろさないで産んで欲しいと言われた。
離縁して片親だけの娘として産まれたアリア。
たまにロレンスは実家の離れで暮らすわたし達に会いにくる。
「アリアは?」
「寝ているわ、中にどうぞ」
ライはロレンスを見つけると嬉しそうに走って抱きついた。
「おとうたま、いらっしゃい」
「ライは元気だな」
「うんアリアこっち」
ロレンスを誇らしげに毎回案内するライ。
ロレンスもライを抱っこしてアリアに会いにいく。
わたし達は離縁しても子供を通じて友人のような関係になった。
彼は再婚の話がたびたび出ているけど今のところは断っているらしい。これから彼がどうするかはわからない。
わたしは実家の仕事を手伝いながら子育てをしている。
今のところ再婚の予定はない。
「ミュゼ、少しだけライを連れて外へ遊びに行ってきてもいいかな」
「お願い」
「まぁま、いってきまぁす」
ロレンスはわたしに気を遣って屋敷にはあまり居ないようにしてくれる。
もう夫婦ではない。
だからこそ線引きはきちんとしようと話し合った。
いずれライはロレンスと暮らすことになる。
アリアももしロレンスと暮らしたいと言い出せば、わたしは彼に託すつもりだ。
力のないわたしが育てるよりも子爵家とはいえ当主である彼の元で暮らす方が二人とも豊かに暮らせる。
わたしの実家は弟がいずれ伯爵家を継ぐ。お父様がライに渡すと言ってくれた爵位は出来ればそのままにしておきたい。
弟の新しくできる家族と険悪な関係にはなりたくない。
わたしは細々と仕事を手伝いながら離れで暮らせればいい。
ーーーーーー
そして今…………
「お母様、お久しぶりです」
「ライ、一年振りね?元気にしていた?」
18歳になったライはロレンスの跡を継いだ。
「お兄様、いらっしゃい」
アリアは今もわたしと共に暮らしている。
ロレンスは新しい奥様と今は領地で暮らしている。
ライは13歳の時にロレンスの跡を継ぐため、彼のところへと移った。
ロレンスとは再婚してからは会うことはない。
アリアはライに会いにいく時にロレンスに会うことがあるみたいだが、二人ともわたしにロレンスのことは話すことはない。
記憶をなくした時わたしはロレンスへの愛も一緒に失った。
彼が今どんな暮らしをしていようと興味すらなく、わたしは………
「マーカス、お帰りなさい」
「ミュゼただいま」
マーカスはわたしの頬にキスをする。
わたしはジョセフの父親のマーカスと再婚した。
マーカスとミイファさんは離縁していた。
もちろんわたしが原因ではない。
そしてたまたま我が家に商会の仕事として来ていたマーカスと再会したのだ。
「ジョセフは元気にしていますか?」
震えるわたしはマーカスに聞いた。
「元気ですよ」
ミイファさんと一度だけ会ったけどそれからお互い会うことはなかった。だから二人が離縁したことは知らなかった。
少しだけ話をして、次はジョセフを連れて来ますと言ってくれた。
ライとジョセフ、アリアが三人で遊ぶようになったのは5歳の時だった。
ライとジョセフはとても気が合うのか時間を忘れてよく遊ぶ。
わたしとマーカスの距離も少しずつ近づいていった。
そして二人が7歳になった時再婚した。
実家の離れを出て、今はマーカスとアリア、そしてジョセフと暮らしている。
ライは自ら選んでロレンスのもとへ行くことにした。
ライにとってはロレンスは父親。
「僕は父上の跡を継ぎます」
「貴方はロレンスの子よ。わたしは貴方を捨てようとした酷い母親だった、でも……笑顔で送り出すことが出来て………母親にさせてくれてありがとう、愛しているわライ」
終わり。
◆ ◆ ◆
読んでいただきありがとうございます。
【え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます】
今日から新しいお話が始まります。
よければ読んでいただけたら嬉しいです!
よろしくお願いいたします。
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