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やっと。
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ライとジョセフ君はとても仲良く遊んだ。
「……また……二人が遊ぶことが出来たら…」
思わず心の声が出て、慌ててやめた。
するとミイファさんが「わたしも同じことを思いました」と言ってくれた。
逆にわたしの方が驚いてミイファさんを見つめた。
ミイファさんもわたしと同じ気持ちだった。
「たまにでいいの、この子達がこんなに仲良く遊んでいるのなら二人を遊ばせてあげたい」
わたしの言葉にミイファさんが
「でしたらジョセフ君はやめにしてください。ジョセフと呼んでください」
「わかったわ、ならばこの子もライと」
「それは出来ません、ライ様は貴族令息です。平民のジョセフとは違います」
「……ではわたしと四人の時だけでも」
「………よろしいのでしょうか?」
彼女は目を潤ませていた。ミイファさんだってライを愛おしいと思ってくれている。その気持ちがとても嬉しかった。
「ええ、また会いましょうね」
こうしてわたし達はまた会う約束をした。
ライは疲れたのか帰りはウトウトとし始めた。
「奥様、ライ様を抱っこしましょう」
侍女達が抱っこしますと言ってくれたが
「大丈夫よ、この子を抱っこ出来る今がとても幸せなの」
ーーそう、この子の寝顔を見るだけで心がギュッと切なくなる。
自分が産んだ我が子がこんなに愛おしいのにどうして忘れることが出来たのだろう。なんて酷い母親だったのだろう、今更後悔しても遅い。
でもこの子をこれからは守って育てていきたい。
まずはロレンスと話し合わなければいけない。
やっとロレンスと向き合うことが出来そうだ。
眠ったライと馬車に乗った。
ライはわたしの膝の上に頭を置いて横になりぐっすりと眠りについていた。
屋敷へと戻った。
ベッドにそっと寝かせ、ライの寝顔を見つめた。
いくら見ていても見飽きないのは何故なのかしら?
小さな手をギュッと握ってスヤスヤと幸せそうに眠るライ。
その姿を見ているだけで心が和み幸せになれる。
わたしはそっと部屋を出てお母様のいる部屋へと向かった。
「お母様、わたしそろそろロレンスのところへ帰ろうと思います。一度話し合って……離縁するにしてもライはわたしが育てたいと思っています」
「そうね、しっかり話し合ってきなさい。ロレンスの気持ちをしっかり聞いて、それでもどうしても離縁したいというのならライと帰ってきたらいいわ。伯爵領にはライが過ごすにはぴったりのお屋敷もあるしライに譲る爵位もあるから気にしないで帰ってきてね?」
「ありがとうございます」
わたしの実家は伯爵で9歳年下の弟がこの家を継ぐ予定だ。だからわたしとライがここに戻ってくればいずれは迷惑をかけることになる。
でも裕福な実家にはいくつもの屋敷と広い領地、他にも受け継げる爵位がある。
ロレンスのところは子爵家。
貴族としては健全な領地運営をしていてお金に困ることはないけど実家ほど裕福とまではいかない、一般的な貴族だと思う。
たぶん本気で離縁をわたしから言えば爵位が上の実家が後ろ盾になってくれるので、離縁はしやすいと思う。
今までは実家自体がわたしの離縁を快く思っていなかった。わたしがどんなに嘆いていても離縁は認めてくれなかった。でも記憶が戻ってきているわたしに実家は離縁をしても受け入れてくれると言ってくれた。
「甘えてばかりでごめんなさい。お母様わたし一度戻ります」
お父様も「わかった、ライと過ごせないのは寂しいが二人の幸せが一番大事だ。きちんとロレンスと話し合っておいで」と言ってくれた。
11歳の弟は自分より年下の甥っ子を自分の弟のように可愛がってくれていたので別れる時かなり寂しそうにしていた。
「ライに会いにきてね」
「姉様、ライ、会いに行くね」
ーーーー
3ヶ月ぶりに子爵家のロレンスの屋敷へと帰ってきた。
使用人達はハイハイするライしか知らない。ライがちょこちょこと歩いてにこにこ笑顔を振りまくとみんなは「可愛い」「ライ様が歩いてる」などライの姿を見てとても喜んでくれた。
「みんな心配をかけてごめんなさい、またお世話になります」
わたしが挨拶をすると「お帰りなさいませ」と言って暖かく迎えてくれた。
記憶を取り戻して少し緊張していたわたしはホッとした。
ライは使用人達が取り合って面倒をみてくれるのでわたしは自室に行き、一息ついた。
結婚して2年以上経った、この部屋も落ち着く場所となっていた。
記憶は完全に取り戻したかはわからない、たまにお母様と話していたらまだ思い出していないこともいくつもあった。
妊娠した頃の記憶はある程度思い出したけど、産んだ後は疎にしか思い出せない。
たぶんあまりにも辛くて忘れ去りたかったのだろう、弱い自分にため息が出る、同じように苦しんだミイファさんはちゃんとジョセフと向き合い我が子として受け入れ愛してあげたのに。
わたしは我が子を拒絶して記憶をなくした。ロレンスの愛人の子だと嫌がりながら育てた酷い母親。
ロレンスは今日帰りが遅いと執事が言っていた。
それまでとりあえず部屋で過ごそうと思ったのに、彼とどう向き合えばいいのかわからずにそわそわとしながら時間が経たなくて何度も時計を見ては溜息をついた。
「……また……二人が遊ぶことが出来たら…」
思わず心の声が出て、慌ててやめた。
するとミイファさんが「わたしも同じことを思いました」と言ってくれた。
逆にわたしの方が驚いてミイファさんを見つめた。
ミイファさんもわたしと同じ気持ちだった。
「たまにでいいの、この子達がこんなに仲良く遊んでいるのなら二人を遊ばせてあげたい」
わたしの言葉にミイファさんが
「でしたらジョセフ君はやめにしてください。ジョセフと呼んでください」
「わかったわ、ならばこの子もライと」
「それは出来ません、ライ様は貴族令息です。平民のジョセフとは違います」
「……ではわたしと四人の時だけでも」
「………よろしいのでしょうか?」
彼女は目を潤ませていた。ミイファさんだってライを愛おしいと思ってくれている。その気持ちがとても嬉しかった。
「ええ、また会いましょうね」
こうしてわたし達はまた会う約束をした。
ライは疲れたのか帰りはウトウトとし始めた。
「奥様、ライ様を抱っこしましょう」
侍女達が抱っこしますと言ってくれたが
「大丈夫よ、この子を抱っこ出来る今がとても幸せなの」
ーーそう、この子の寝顔を見るだけで心がギュッと切なくなる。
自分が産んだ我が子がこんなに愛おしいのにどうして忘れることが出来たのだろう。なんて酷い母親だったのだろう、今更後悔しても遅い。
でもこの子をこれからは守って育てていきたい。
まずはロレンスと話し合わなければいけない。
やっとロレンスと向き合うことが出来そうだ。
眠ったライと馬車に乗った。
ライはわたしの膝の上に頭を置いて横になりぐっすりと眠りについていた。
屋敷へと戻った。
ベッドにそっと寝かせ、ライの寝顔を見つめた。
いくら見ていても見飽きないのは何故なのかしら?
小さな手をギュッと握ってスヤスヤと幸せそうに眠るライ。
その姿を見ているだけで心が和み幸せになれる。
わたしはそっと部屋を出てお母様のいる部屋へと向かった。
「お母様、わたしそろそろロレンスのところへ帰ろうと思います。一度話し合って……離縁するにしてもライはわたしが育てたいと思っています」
「そうね、しっかり話し合ってきなさい。ロレンスの気持ちをしっかり聞いて、それでもどうしても離縁したいというのならライと帰ってきたらいいわ。伯爵領にはライが過ごすにはぴったりのお屋敷もあるしライに譲る爵位もあるから気にしないで帰ってきてね?」
「ありがとうございます」
わたしの実家は伯爵で9歳年下の弟がこの家を継ぐ予定だ。だからわたしとライがここに戻ってくればいずれは迷惑をかけることになる。
でも裕福な実家にはいくつもの屋敷と広い領地、他にも受け継げる爵位がある。
ロレンスのところは子爵家。
貴族としては健全な領地運営をしていてお金に困ることはないけど実家ほど裕福とまではいかない、一般的な貴族だと思う。
たぶん本気で離縁をわたしから言えば爵位が上の実家が後ろ盾になってくれるので、離縁はしやすいと思う。
今までは実家自体がわたしの離縁を快く思っていなかった。わたしがどんなに嘆いていても離縁は認めてくれなかった。でも記憶が戻ってきているわたしに実家は離縁をしても受け入れてくれると言ってくれた。
「甘えてばかりでごめんなさい。お母様わたし一度戻ります」
お父様も「わかった、ライと過ごせないのは寂しいが二人の幸せが一番大事だ。きちんとロレンスと話し合っておいで」と言ってくれた。
11歳の弟は自分より年下の甥っ子を自分の弟のように可愛がってくれていたので別れる時かなり寂しそうにしていた。
「ライに会いにきてね」
「姉様、ライ、会いに行くね」
ーーーー
3ヶ月ぶりに子爵家のロレンスの屋敷へと帰ってきた。
使用人達はハイハイするライしか知らない。ライがちょこちょこと歩いてにこにこ笑顔を振りまくとみんなは「可愛い」「ライ様が歩いてる」などライの姿を見てとても喜んでくれた。
「みんな心配をかけてごめんなさい、またお世話になります」
わたしが挨拶をすると「お帰りなさいませ」と言って暖かく迎えてくれた。
記憶を取り戻して少し緊張していたわたしはホッとした。
ライは使用人達が取り合って面倒をみてくれるのでわたしは自室に行き、一息ついた。
結婚して2年以上経った、この部屋も落ち着く場所となっていた。
記憶は完全に取り戻したかはわからない、たまにお母様と話していたらまだ思い出していないこともいくつもあった。
妊娠した頃の記憶はある程度思い出したけど、産んだ後は疎にしか思い出せない。
たぶんあまりにも辛くて忘れ去りたかったのだろう、弱い自分にため息が出る、同じように苦しんだミイファさんはちゃんとジョセフと向き合い我が子として受け入れ愛してあげたのに。
わたしは我が子を拒絶して記憶をなくした。ロレンスの愛人の子だと嫌がりながら育てた酷い母親。
ロレンスは今日帰りが遅いと執事が言っていた。
それまでとりあえず部屋で過ごそうと思ったのに、彼とどう向き合えばいいのかわからずにそわそわとしながら時間が経たなくて何度も時計を見ては溜息をついた。
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