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第30話
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「どうして?だったらそんなに悲しい顔しないで!僕が寝ている時に泣いていたのは何故?」
「ミシェル、ウラン、すまない……探し出せなくて……まさかワルシャイナ王国に行っているなんて思わなくて国中を探していたんだ。それに国を出るならモーリス国だと思い込んでいたんだ……やっとわかった時にはウランが白血病で治療のためモーリス国にいると聞いた。
そちらに行こうとしたら……ロバート殿に今はまだやめて欲しいと言われたんだ」
「ロバート様が?」
「ウランの体調が思わしくない中、僕がそちらに行けば混乱するから……確かにそうだと思い落ち着いたら顔を出すつもりだった。でもその前に君たちがこっちに帰ってきたんだ」
「そうだったのね、確かに突然貴方が私たちの前に現れたらどう対処していいかわからなかったと思うわ」
「すまなかった、一人でウランを育てさせて辛い思いをさせた。ウランもよく頑張ったな」
ライアン様はウランの頭を撫でて、ウランは少し困った顔をしてはにかんでいた。
父親という存在をロバート様とセルマ君を見て羨ましがっていたから、多分嬉しいのだろう。
わたしはウランの幸せすら奪っていたのだと思った。
自分の感情だけで逃げてしまい、子どもの気持ちなど考えてもいなかった。
「ライアン、わたしと離縁してもこれからはウランに会って欲しいの。わたしはそれをお願いするために会いにきたの」
「………もう8年が過ぎたんだね……君と結婚して。僕はいい夫ではなかった。君を苦しめてきた。結婚前も君が苦しんでいるのを知っていたのに僕は君が嫉妬してくれるのを馬鹿だから嬉しく感じてしまった。
君にきちんと離縁状を渡して正式に離縁するよ、もちろん慰謝料も払うしウランの養育費も払うつもりだ。きちんとけりをつけたいんだ。
今まで苦しめてごめん、でも本当に君のことを愛していたんだ。それだけは嘘ではなかった」
「ライアン、ありがとう。でも愛していた……過去形ね……わたしもそうよ、貴方をずっと愛していたわ……でもね、愛されていると感じたことは一度もなかった……そしてもうこの屋敷を出た日にわたし達の関係は終わっていたの」
「………そうだね、いくら言い訳をしても僕は遅過ぎたんだ。君を愛していたのに、それを君に伝える努力もしなかった。君と最後に話せてよかった」
「ルシア様とお幸せに」
「………何故?」
「風の噂で聞いているわ、貴方がルシア様と暮らしていることは……」
「……そうか」
わたしはそして離縁状を受け取り屋敷を出た。
◇ ◇ ◇
「旦那様……良かったのですか?本当はルシア様とは何もないのに……最後まで嘘をつく必要はありますか?」
家令のマークが僕に訴えだが、僕は「いいんだ」としか言わなかった。
ルシアはもうこの世にはいない。
僕の屋敷に何度も押しかけてきて、とうとう捕まった。
しばらく牢に入りその後平民として暮らしたが産後体調を崩し亡くなったそうだ。
子どもは領地で細々と暮らしている両親に引き取られたと聞いている。
僕はずっとミシェルだけを愛している。
ウランが白血病に倒れたと聞いた時は、全てを放ってすぐにでも駆けつけたかった。
でもその権利は僕にはない。
父親として何もしていないのにそんな時だけ父親面して会いにはいけなかった。
ロバート殿には何度も手紙を出して、治療費もきちんと払いたいと頼んだ。
しかしロバート殿は「貴方にもらう謂れはない」と言われた。
僕には息子の治療費を払う資格すらなかった。
それはミシェルが僕と離縁していると思っていたから。彼女が僕に頼ることすらなかった。
高額な治療費が必要な時ですら僕に泣きついてこなかった。
それが答えなんだ。
僕は離縁状を出さないでいたのはもう一度やり直したかったから。
でもそんな希望は一瞬で消え去った。
ミシェルの中でもう僕は終わってしまっているんだ。
僕は毎回間違っていたんだ。
父上にルシアと仲良くするように言われた時だって素直に父上に従わずに、ミシェルに伝えていればよかったんだ。
卒業してからでも結婚してからでもいいから、本当のことを言えば良かったんだ。
あれは浮気ではない、父上からの指示だったと。
ミシェルが出て行った時だってすぐに追いかければ良かった。
ウランが生まれた時だって会いにいけば良かった。
ルシアにキスされた時だって、ルシアのことなんか放っておいて家令に頼めば良かったんだ。
自分が対処する必要なんてなかった。
全て後の祭りだ。
自分でもわかっている、それは言い訳でしかないことを。
ミシェルにはっきり嫌われていると認めたくなかったんだ。
だから逃げたんだ。
それでもミシェルはウランと会わせてくれた。
これからもウランと会うことは出来る。
もうそれだけでいい。
それだけでも僕にとっては幸せなんだ。
ミシェル、愛しているよ。ずっと君だけを……
END
◆ ◆ ◆
最後はきっとハッピーエンド?
ではありませんでした。
すみません。
でも………数年後の三人を少しだけ……
また番外編で書こうと思っています。
しばらくお待ちください!
読んでいただきありがとうございました
たろ
「ミシェル、ウラン、すまない……探し出せなくて……まさかワルシャイナ王国に行っているなんて思わなくて国中を探していたんだ。それに国を出るならモーリス国だと思い込んでいたんだ……やっとわかった時にはウランが白血病で治療のためモーリス国にいると聞いた。
そちらに行こうとしたら……ロバート殿に今はまだやめて欲しいと言われたんだ」
「ロバート様が?」
「ウランの体調が思わしくない中、僕がそちらに行けば混乱するから……確かにそうだと思い落ち着いたら顔を出すつもりだった。でもその前に君たちがこっちに帰ってきたんだ」
「そうだったのね、確かに突然貴方が私たちの前に現れたらどう対処していいかわからなかったと思うわ」
「すまなかった、一人でウランを育てさせて辛い思いをさせた。ウランもよく頑張ったな」
ライアン様はウランの頭を撫でて、ウランは少し困った顔をしてはにかんでいた。
父親という存在をロバート様とセルマ君を見て羨ましがっていたから、多分嬉しいのだろう。
わたしはウランの幸せすら奪っていたのだと思った。
自分の感情だけで逃げてしまい、子どもの気持ちなど考えてもいなかった。
「ライアン、わたしと離縁してもこれからはウランに会って欲しいの。わたしはそれをお願いするために会いにきたの」
「………もう8年が過ぎたんだね……君と結婚して。僕はいい夫ではなかった。君を苦しめてきた。結婚前も君が苦しんでいるのを知っていたのに僕は君が嫉妬してくれるのを馬鹿だから嬉しく感じてしまった。
君にきちんと離縁状を渡して正式に離縁するよ、もちろん慰謝料も払うしウランの養育費も払うつもりだ。きちんとけりをつけたいんだ。
今まで苦しめてごめん、でも本当に君のことを愛していたんだ。それだけは嘘ではなかった」
「ライアン、ありがとう。でも愛していた……過去形ね……わたしもそうよ、貴方をずっと愛していたわ……でもね、愛されていると感じたことは一度もなかった……そしてもうこの屋敷を出た日にわたし達の関係は終わっていたの」
「………そうだね、いくら言い訳をしても僕は遅過ぎたんだ。君を愛していたのに、それを君に伝える努力もしなかった。君と最後に話せてよかった」
「ルシア様とお幸せに」
「………何故?」
「風の噂で聞いているわ、貴方がルシア様と暮らしていることは……」
「……そうか」
わたしはそして離縁状を受け取り屋敷を出た。
◇ ◇ ◇
「旦那様……良かったのですか?本当はルシア様とは何もないのに……最後まで嘘をつく必要はありますか?」
家令のマークが僕に訴えだが、僕は「いいんだ」としか言わなかった。
ルシアはもうこの世にはいない。
僕の屋敷に何度も押しかけてきて、とうとう捕まった。
しばらく牢に入りその後平民として暮らしたが産後体調を崩し亡くなったそうだ。
子どもは領地で細々と暮らしている両親に引き取られたと聞いている。
僕はずっとミシェルだけを愛している。
ウランが白血病に倒れたと聞いた時は、全てを放ってすぐにでも駆けつけたかった。
でもその権利は僕にはない。
父親として何もしていないのにそんな時だけ父親面して会いにはいけなかった。
ロバート殿には何度も手紙を出して、治療費もきちんと払いたいと頼んだ。
しかしロバート殿は「貴方にもらう謂れはない」と言われた。
僕には息子の治療費を払う資格すらなかった。
それはミシェルが僕と離縁していると思っていたから。彼女が僕に頼ることすらなかった。
高額な治療費が必要な時ですら僕に泣きついてこなかった。
それが答えなんだ。
僕は離縁状を出さないでいたのはもう一度やり直したかったから。
でもそんな希望は一瞬で消え去った。
ミシェルの中でもう僕は終わってしまっているんだ。
僕は毎回間違っていたんだ。
父上にルシアと仲良くするように言われた時だって素直に父上に従わずに、ミシェルに伝えていればよかったんだ。
卒業してからでも結婚してからでもいいから、本当のことを言えば良かったんだ。
あれは浮気ではない、父上からの指示だったと。
ミシェルが出て行った時だってすぐに追いかければ良かった。
ウランが生まれた時だって会いにいけば良かった。
ルシアにキスされた時だって、ルシアのことなんか放っておいて家令に頼めば良かったんだ。
自分が対処する必要なんてなかった。
全て後の祭りだ。
自分でもわかっている、それは言い訳でしかないことを。
ミシェルにはっきり嫌われていると認めたくなかったんだ。
だから逃げたんだ。
それでもミシェルはウランと会わせてくれた。
これからもウランと会うことは出来る。
もうそれだけでいい。
それだけでも僕にとっては幸せなんだ。
ミシェル、愛しているよ。ずっと君だけを……
END
◆ ◆ ◆
最後はきっとハッピーエンド?
ではありませんでした。
すみません。
でも………数年後の三人を少しだけ……
また番外編で書こうと思っています。
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