22 / 32
第22話
しおりを挟む
ウランはもう7歳になった。
「母様、僕そろそろ重たい物も持てるから!」
小さな体で買い物かごを持って頑張って歩いているウランを後ろから見ていた。
フラフラしながらもたくさん入った野菜の重さに負けないように必死で持つ姿が、もう大きくなったのだとこの頃はよく思う、それがとても嬉しい。
ワルシャイナ王国に来てから、すぐに商会で知り合ったロバート商会の方達によくしてもらい、事務の仕事とわたしのいた国との商談などの仕事をさせてもらえることになった。
わたしは自国の特産物や工芸品を紹介して、逆にこちらのものを向こうのジョージ様にお勧めしている。
年に数回はジョージ様にお会いしている。
そんな関係の中で、ジョージ様とアンナが恋仲になり結婚した。
アンナは今は自国に戻り、わたしはウランと二人でワルシャイナ王国で暮らしている。
ちなみにアンナは男爵家の三女なのでジョージ様との結婚は了承された。
アンナは心配して別居すると言ってくれたが、新婚さんに迷惑はかけたくないのでご遠慮させてもらった。
ウランももう7歳だ。
学校へも通い出したし、昼間はわたしがいなくても平気になった。
わたし達が住んでいる場所も商会の事務所の3階の部屋を借りているので、何かあってもすぐに会いに行ける。
お料理などしたことがなかったわたしも、アンナに習い少しだけ、食べられる程度に、なんとか、お料理もできるようになった。
「母様、また、野菜いっぱいですね。今日もサラダですか?」
「サラダと、お肉を焼くから大丈夫よ」
わたしが野菜中心の料理ばかりなので、育ち盛りのウランはお肉も食べられると聞いてホッとしていた。
「ふふ、お野菜も食べないと駄目よ?」
「うん!肉があるなら頑張って食べるよ!」
ジョージ様とヴァリスの旦那様が商会からの利益をわたしに回してくれている。
そのお金は将来ウランが大学に行きたいと言った時のために貯めている。
ワルシャイナ王国は、わたしがいた国よりも教育も考え方も先行している。
女性だから結婚したら家庭に入るしかない、という考え方をあまりしていない。
わたしがどんなに勉強をしても、色んなことを頑張って努力していたと思っていても、自国では軽くみられていた。
女性蔑視に対する考え方がこんなに差があると思わなかった。
ウランにとってワルシャイナ王国で過ごすことはこれからの人生にとてもプラスになっていると思う。
愛だの恋だので悩んで泣いていた自分が今なら恥ずかしいと思う。
まあ、あれも青春の大事な思い出ではあるけど。
この国では政略結婚などもうなくなっている。
もちろん貴族もいるし、平民もいる。
でも本当に優秀な人は平民でも王宮でしっかりした地位につくことができる。
女性に対しての考え方と同じ。
女性でも男性でも、平民でも貴族でも、力ある者を雇用してくれる、だからみんな努力する。努力すればみんなが豊かになる。
豊かになるからみんなの仕事も増えて国自体がゆたかになる。
もちろん貴族だから上になるのが当たり前だと思っている人たちからの不満の声も多かったらしいが、今の国王になって結果を出しているので文句を言いたくても言えなくなって、仕方なく本人達も頑張っているらしい。
実力主義なので、みんな切磋琢磨して、自分を向上させて生きている。
わたしはこの国で、平民として生きているけどやはり子育てしながら必死で生きてきた。
金銭的には困ることはなかったけど、一からの生活なので無駄なお金は使えない。
全てウランのこれからのために少しでも貯めていかないといけない。
わたしは自分の服は、友人になったサリーやバーナからお下がりを貰って着ている。
元侯爵令嬢だなんて誰も思わないと思う。
◇ ◇ ◇
久しぶりにジョージ様がワルシャイナ王国に仕事でやって来た。
「お久しぶりです、ジョージ様。アンナは元気にしていますか?」
「会った瞬間、アンナかい?もちろん元気だよ、もうすぐ子供が生まれるよ」
「後少しですね、アンナに会いたいけどわたしは帰ることができない身です。アンナに元気な赤ちゃんを産んで欲しいとお伝えください。そして体に気をつけてと」
「ミシェル、別に君が帰国しても殿下は何も言わないよ。逆にずっと心配しているんだ、突然君が姿を消してしまったからね」
「殿下にはよくしていただいたのに裏切る形になってしまって申し訳ないと思っています」
「まだやはりライアンと父親を許せない?」
「ジョージ様にはご迷惑がかかっているのでしょう?わたしが国を出る時アンナがついて来てくれました。そのアンナがジョージ様の奥様として過ごしているのだわから、わたしの居場所を知っているのではと問いつめられているのではないですか?」
「うん、まあ、ライアンがいまだに君を探しているよ」
「そうですか……もう離縁して6年も経つのにわたしを探してどうしたいのでしょう」
「母様、僕そろそろ重たい物も持てるから!」
小さな体で買い物かごを持って頑張って歩いているウランを後ろから見ていた。
フラフラしながらもたくさん入った野菜の重さに負けないように必死で持つ姿が、もう大きくなったのだとこの頃はよく思う、それがとても嬉しい。
ワルシャイナ王国に来てから、すぐに商会で知り合ったロバート商会の方達によくしてもらい、事務の仕事とわたしのいた国との商談などの仕事をさせてもらえることになった。
わたしは自国の特産物や工芸品を紹介して、逆にこちらのものを向こうのジョージ様にお勧めしている。
年に数回はジョージ様にお会いしている。
そんな関係の中で、ジョージ様とアンナが恋仲になり結婚した。
アンナは今は自国に戻り、わたしはウランと二人でワルシャイナ王国で暮らしている。
ちなみにアンナは男爵家の三女なのでジョージ様との結婚は了承された。
アンナは心配して別居すると言ってくれたが、新婚さんに迷惑はかけたくないのでご遠慮させてもらった。
ウランももう7歳だ。
学校へも通い出したし、昼間はわたしがいなくても平気になった。
わたし達が住んでいる場所も商会の事務所の3階の部屋を借りているので、何かあってもすぐに会いに行ける。
お料理などしたことがなかったわたしも、アンナに習い少しだけ、食べられる程度に、なんとか、お料理もできるようになった。
「母様、また、野菜いっぱいですね。今日もサラダですか?」
「サラダと、お肉を焼くから大丈夫よ」
わたしが野菜中心の料理ばかりなので、育ち盛りのウランはお肉も食べられると聞いてホッとしていた。
「ふふ、お野菜も食べないと駄目よ?」
「うん!肉があるなら頑張って食べるよ!」
ジョージ様とヴァリスの旦那様が商会からの利益をわたしに回してくれている。
そのお金は将来ウランが大学に行きたいと言った時のために貯めている。
ワルシャイナ王国は、わたしがいた国よりも教育も考え方も先行している。
女性だから結婚したら家庭に入るしかない、という考え方をあまりしていない。
わたしがどんなに勉強をしても、色んなことを頑張って努力していたと思っていても、自国では軽くみられていた。
女性蔑視に対する考え方がこんなに差があると思わなかった。
ウランにとってワルシャイナ王国で過ごすことはこれからの人生にとてもプラスになっていると思う。
愛だの恋だので悩んで泣いていた自分が今なら恥ずかしいと思う。
まあ、あれも青春の大事な思い出ではあるけど。
この国では政略結婚などもうなくなっている。
もちろん貴族もいるし、平民もいる。
でも本当に優秀な人は平民でも王宮でしっかりした地位につくことができる。
女性に対しての考え方と同じ。
女性でも男性でも、平民でも貴族でも、力ある者を雇用してくれる、だからみんな努力する。努力すればみんなが豊かになる。
豊かになるからみんなの仕事も増えて国自体がゆたかになる。
もちろん貴族だから上になるのが当たり前だと思っている人たちからの不満の声も多かったらしいが、今の国王になって結果を出しているので文句を言いたくても言えなくなって、仕方なく本人達も頑張っているらしい。
実力主義なので、みんな切磋琢磨して、自分を向上させて生きている。
わたしはこの国で、平民として生きているけどやはり子育てしながら必死で生きてきた。
金銭的には困ることはなかったけど、一からの生活なので無駄なお金は使えない。
全てウランのこれからのために少しでも貯めていかないといけない。
わたしは自分の服は、友人になったサリーやバーナからお下がりを貰って着ている。
元侯爵令嬢だなんて誰も思わないと思う。
◇ ◇ ◇
久しぶりにジョージ様がワルシャイナ王国に仕事でやって来た。
「お久しぶりです、ジョージ様。アンナは元気にしていますか?」
「会った瞬間、アンナかい?もちろん元気だよ、もうすぐ子供が生まれるよ」
「後少しですね、アンナに会いたいけどわたしは帰ることができない身です。アンナに元気な赤ちゃんを産んで欲しいとお伝えください。そして体に気をつけてと」
「ミシェル、別に君が帰国しても殿下は何も言わないよ。逆にずっと心配しているんだ、突然君が姿を消してしまったからね」
「殿下にはよくしていただいたのに裏切る形になってしまって申し訳ないと思っています」
「まだやはりライアンと父親を許せない?」
「ジョージ様にはご迷惑がかかっているのでしょう?わたしが国を出る時アンナがついて来てくれました。そのアンナがジョージ様の奥様として過ごしているのだわから、わたしの居場所を知っているのではと問いつめられているのではないですか?」
「うん、まあ、ライアンがいまだに君を探しているよ」
「そうですか……もう離縁して6年も経つのにわたしを探してどうしたいのでしょう」
63
お気に入りに追加
3,338
あなたにおすすめの小説
出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
古代魔法を専門とする魔法研究者のアンヌッカは、家族と研究所を守るために軍人のライオネルと結婚をする。
ライオネルもまた昇進のために結婚をしなければならず、国王からの命令ということもあり結婚を渋々と引き受ける。
しかし、愛のない結婚をした二人は結婚式当日すら顔を合わせることなく、そのまま離れて暮らすこととなった。
ある日、アンヌッカの父が所長を務める魔法研究所に軍から古代文字で書かれた魔導書の解読依頼が届く。
それは禁帯本で持ち出し不可のため、軍施設に研究者を派遣してほしいという依頼だ。
この依頼に対応できるのは研究所のなかでもアンヌッカしかいない。
しかし軍人の妻が軍に派遣されて働くというのは体裁が悪いし何よりも会ったことのない夫が反対するかもしれない。
そう思ったアンヌッカたちは、アンヌッカを親戚の娘のカタリーナとして軍に送り込んだ――。
素性を隠したまま働く妻に、知らぬ間に惹かれていく(恋愛にはぽんこつ)夫とのラブコメディ。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる