【完結】愛していました、でも愛されてはいませんでした。

たろ

文字の大きさ
上 下
17 / 32

第17話

しおりを挟む
ヴァリスのところに身を寄せて2週間が過ぎた。

お父様にもここにいることがバレて、ヴァリスの屋敷に挨拶に来ていた。

「娘達がご迷惑をおかけしています」

お父様の挨拶が終わるとわたしが今過ごしている客室へ案内した。
ウランはアンナが面倒を見てくれている。

わたしがここを拠点に商会の仕事をしているのを見て
大きな溜息を吐いた。

「お前は、ライアンと話し合いに帰ってそのまま家出したらしいな。いつまで家出ばかりするんだ、人様に迷惑までかけて」

うっ、それを言われるとわたしも反論できない。
子供を産むときもライアンの冷たい態度に耐えられなくて家を出た。
出産後もウランを手放せなくて彼から逃げ回った。

屋敷に戻ってもどうしていいかわからなくて部屋に閉じこもっていた。

そして今は家出中。

わたしは逃げてばかりで彼と向き合おうとしていない。
「お前は商会を自ら立ち上げて、大きくして領民の生活を豊かに変えた。それだけの手腕と行動力があるのに何故ライアンのことになるとそんなに弱いんだ」

「………………どうしていいのかわからないのです……」
わたしは小さい声でボソッと答えた。

「なんだ?もう一度言え!」
 
「……っうっ……ライアンを愛しているから愛していないと言われるのが怖いんです。愛されていないとわかっているのに、それを認めてしまうのが怖いのです」

わたしはお父様の前でポロポロ涙を流した。

(もう思っていることを全部言ってやる!)

「ずっとずっと好きだったんです。どんなにルシア様と仲良くして二人が愛し合っていて、それを見て辛くても諦められなかった。
結婚してしまえばライアンがわたしを見てくれるかもしれないと馬鹿だから思っていたんです。
でも、駄目でした。
彼はわたしのことを冷たい目で見ていました。愛するルシア様と別れさせられてわたしと無理矢理結婚させられたからわたしのことが憎かったんだと思います。もう耐えられなかった。
あの人といることが……」

グズッ……

「……話し合おうと屋敷に行ったらルシア様とライアンが抱き合ってキスをしていました……わたしはそのままヴァリスのところに身を寄せました。
実家に帰ればお父様達に叱られるから」

「はあー、ライアンは本当に馬鹿なのか?お前の話は妻に聞いた、わたしに頼ることも出来ない態度をとってきたことは謝る。
お前が別れたいならわたしはお前達をちゃんと守ってやる。殿下からの話は断るんだろう?」

「はい、殿下のことはずっと友人としてしか見ることが出来ません。それにウランと離れるなんて絶対に嫌です。わたしライアンと離縁したらモーリス国に行くつもりです、あそこならウランを一人で育てながら生きていけると思うのです」

「わたし達に頼ってはくれないのか?」
お父様がとてもショックで悲しそうな顔をしていた。

「殿下の話を断るのです、離縁したらこの国にいる訳にはいきません、モーリス国には仲良くなった人たちもいます。
なんとかやっていけると思います」

「離縁して殿下のことを断っても我が家で過ごせばいい。うちの侯爵家はいずれお前の兄が継ぐがお前は商会を立ち上げているんだ、侯爵家が全力でバックアップするから大きな顔をして我が家にいろ」

「お父様……ご迷惑はかけられません」
わたしの中で父に頼るという選択肢は今までなかった。
子どもの頃から厳しく躾けられ甘えを許してもらったことなどなかった。

わたしのこの素直に人に甘えることができない性格はひねくれてしまった性格は、ある意味お父様の厳しすぎる教育が影響しているのかもしれない。

「お願いだ、わたしの元から目の届かない場所に行くなど考えないでくれ。わたしが必ずお前達を守るから」

「お父様……」
わたしはお父様のこんな悲しげな姿を初めて見た。
いつも怖い顔をして威圧感があり、人の意見など聞かない人だった。

わたしはこの人に認められたくて必死で学生の時は勉強をした。
でもどんなに成績を上げても「女が勉強をしてなんになる、もっと可愛げがないと男に好かれないぞ」
と言われ、褒められることはなかった。

「わたしはお前が好きなライアンと結婚するのが幸せになれることなんだと思っていたんだ。まさかライアンとこんなに拗れていたなんて気がつかなかった、許してくれ」

「お父様はわたしの幸せを願ってくれていたのですか?」

「当たり前だ!お前がどんなに辛そうにしてもライアンを愛していたから結婚させたんだ。それがわたしの間違いだった」

わたしはお父様の見えない愛情に今初めて気がついた。
 








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

出世のために結婚した夫から「好きな人ができたから別れてほしい」と言われたのですが~その好きな人って変装したわたしでは?

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
古代魔法を専門とする魔法研究者のアンヌッカは、家族と研究所を守るために軍人のライオネルと結婚をする。 ライオネルもまた昇進のために結婚をしなければならず、国王からの命令ということもあり結婚を渋々と引き受ける。 しかし、愛のない結婚をした二人は結婚式当日すら顔を合わせることなく、そのまま離れて暮らすこととなった。 ある日、アンヌッカの父が所長を務める魔法研究所に軍から古代文字で書かれた魔導書の解読依頼が届く。 それは禁帯本で持ち出し不可のため、軍施設に研究者を派遣してほしいという依頼だ。 この依頼に対応できるのは研究所のなかでもアンヌッカしかいない。 しかし軍人の妻が軍に派遣されて働くというのは体裁が悪いし何よりも会ったことのない夫が反対するかもしれない。 そう思ったアンヌッカたちは、アンヌッカを親戚の娘のカタリーナとして軍に送り込んだ――。 素性を隠したまま働く妻に、知らぬ間に惹かれていく(恋愛にはぽんこつ)夫とのラブコメディ。

頑張らない政略結婚

ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」 結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。 好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。 ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ! 五話完結、毎日更新

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ すべてフィクションです。読んでくだり感謝いたします。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

処理中です...