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第14話
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「ミシェルは、ライアンのことを諦めるのかい?あんなに辛い思いをしても君はライアンを諦めきれなかった。それは君が彼を愛しているからだろう?」
「愛しているわ、でも愛してはもらえなかった」
「僕はライアンは君を愛していると思っていたんだけど」
「何処が?結婚は政略で義務だったの。仕方がなかったのよ。ルシア様との愛を引き裂かれて仕方なくわたしと結婚したのよ
だから会話もなく屋敷でも会うことはほとんどなかったわ。彼はわたしを見るとムスッとしていたのよ
わたしは跡取りさえ産めばそれで終わりの妻だったの、だからルシア様が屋敷にいたのよ。もうわたしは必要がないと言うことなの」
「会話がない……ライアンはかなり拗れていたんだな。素直になれなくて」
「いいえ、素直だからわたしを避けていたんだと思うわ。ルシア様を愛しているからわたしは子を産むためだけの妻としてしか接することはなかったの」
「やはり一度ライアンと話し合いをした方がいいと思う。離縁するにしてもウランの養育の権利をどちらが持つかも話し合わないといけないだろう?」
「そうね、ジョージ元生徒会副会長、誰かいい弁護士さん知っているかしら?」
「わかった、離婚訴訟に詳しい弁護士を探しておくよ。ところでそろそろその長い『ジョージ元生徒会副会長』はやめてジョージでいいよ」
「ふふ、どうしても昔の癖で出てしまうわ。ジョージ様?でいいかしら?」
「うん、その方が友人として付き合いやすいよ」
◇ ◇ ◇
~ ライアン目線 ~
ミシェルが屋敷に帰ってきていた。
僕とすれ違いになっていた。
手紙で帰ることを知らされていたらしいが、僕は知らずに屋敷に帰ってきた。
だからなのか疲れでウランは高熱を出して寝込む事になった。
すぐにミシェルのかかりつけ医を呼んでもらい診てもらうと、喉が赤いので風邪だろうと言われたらしい。
なかなか熱が下がらなかったが、1週間経ちやっと落ち着いた頃僕は帰った。
帰って来ると使用人からウランが熱を出していると聞いた。
ミシェルは看病をしていて疲れ切っていた時だったようだ。
疲れと自身の体調の悪さとイライラからだろう、ミシェルは僕を見ると
「そばに来ないで!この子はわたしだけの息子なの!」
ミシェルはウランを抱きしめて僕に敵意を向けていた。
流石にショックだった。
彼女からの愛はもうなくなっているとわかっていても、この屋敷に帰ってきてくれたのだから、少しはお互いまた寄り添うことができるのではと思っていた。
そしてミシェルはウランと部屋に籠り、僕に会うのを拒否した。
僕は何度か二人の部屋の前に行き、ノックをしたが出てける様子はなかった。
もうおしまいなのか……
一度もウランのちゃんとした姿も見ていない。
ミシェルと会話すらできていない。
離縁すれば彼女は殿下の愛妾として、ずっと愛される人生を送ることになる。
ウランは一時期だけ僕の子どもになっても、侯爵が自分の孫として引き取ると言っている。
同じ侯爵家だが僕の家はミシェルの父上の侯爵家より力がない。
それに僕は浮気をしているとミシェルに疑われている。
「くそっ!」
同じ屋敷にミシェルがいる。
それだけで幸せなのに会うこともできない。
僕はどうすればいいのか悩んでいた。
このままではミシェルは殿下と結ばれてしまう。
数日後ミシェルは僕に気づかれないようにウランを連れて出かけた。
今日は元生徒会メンバーと会うのだと執事から話を聞いた。
殿下に会うのか…
僕はじっと出来ずにウロウロと屋敷で落ち着かない時間を過ごしていた。
そんな時使用人が走って僕の執務室にやってきた。
「ライアン様、ルシア・モーリス様がお越しです。玄関先でライアン様を出せと騒いでおります」
「はあ?追い返せ!」
「そうしたいのは山々なのですが……ライアン様の子供がお腹にいると騒いでいて無理やり引っ張り出すこともできません」
「僕の子ども?」
そんなわけがない。
彼女とそう言う関係になったことなど一度もない。
だが使用人達は僕を疑いの目で見ている。
学生の時に彼女と仲良くしていたから。
この前の彼女との話し合いでもけっきょく一度は捕まったが数日で釈放された。
もう王都に入ることは禁止されていたはずなのに彼女は何を思ったのかまた僕に会いに来た。
仕方なく玄関に行くと
「ライアン、会いたかったわ。お腹の子供を貴方に見せたかったの」
「僕の子ども?一体何のことを言ってるんだ?」
僕は冷たい目で彼女を睨みつけた。
「もうお父様ったら怒っているわ。ねえ赤ちゃん、大丈夫よ、お父様は本当は優しいのよ」
そう言いながらお腹の子どもを撫でていた。
「君は王都に入ることは禁止命令が出ていたはずだ!すぐに騎士団に引き渡す」
「ひどいわ!わたしは貴方の子供を身籠っているのよ!なのに私を騎士団に引き渡すの?」
僕は「早くこの女を追い出せ!」と言うと、
「あっ!」
と言ってフラフラとなって倒れそうになった。
流石に妊婦だ。
僕は慌てて彼女を倒れないように助けた。
「ライアンって優しいのね」
彼女の仄暗い笑顔にゾクっとした。
「愛しているわ、でも愛してはもらえなかった」
「僕はライアンは君を愛していると思っていたんだけど」
「何処が?結婚は政略で義務だったの。仕方がなかったのよ。ルシア様との愛を引き裂かれて仕方なくわたしと結婚したのよ
だから会話もなく屋敷でも会うことはほとんどなかったわ。彼はわたしを見るとムスッとしていたのよ
わたしは跡取りさえ産めばそれで終わりの妻だったの、だからルシア様が屋敷にいたのよ。もうわたしは必要がないと言うことなの」
「会話がない……ライアンはかなり拗れていたんだな。素直になれなくて」
「いいえ、素直だからわたしを避けていたんだと思うわ。ルシア様を愛しているからわたしは子を産むためだけの妻としてしか接することはなかったの」
「やはり一度ライアンと話し合いをした方がいいと思う。離縁するにしてもウランの養育の権利をどちらが持つかも話し合わないといけないだろう?」
「そうね、ジョージ元生徒会副会長、誰かいい弁護士さん知っているかしら?」
「わかった、離婚訴訟に詳しい弁護士を探しておくよ。ところでそろそろその長い『ジョージ元生徒会副会長』はやめてジョージでいいよ」
「ふふ、どうしても昔の癖で出てしまうわ。ジョージ様?でいいかしら?」
「うん、その方が友人として付き合いやすいよ」
◇ ◇ ◇
~ ライアン目線 ~
ミシェルが屋敷に帰ってきていた。
僕とすれ違いになっていた。
手紙で帰ることを知らされていたらしいが、僕は知らずに屋敷に帰ってきた。
だからなのか疲れでウランは高熱を出して寝込む事になった。
すぐにミシェルのかかりつけ医を呼んでもらい診てもらうと、喉が赤いので風邪だろうと言われたらしい。
なかなか熱が下がらなかったが、1週間経ちやっと落ち着いた頃僕は帰った。
帰って来ると使用人からウランが熱を出していると聞いた。
ミシェルは看病をしていて疲れ切っていた時だったようだ。
疲れと自身の体調の悪さとイライラからだろう、ミシェルは僕を見ると
「そばに来ないで!この子はわたしだけの息子なの!」
ミシェルはウランを抱きしめて僕に敵意を向けていた。
流石にショックだった。
彼女からの愛はもうなくなっているとわかっていても、この屋敷に帰ってきてくれたのだから、少しはお互いまた寄り添うことができるのではと思っていた。
そしてミシェルはウランと部屋に籠り、僕に会うのを拒否した。
僕は何度か二人の部屋の前に行き、ノックをしたが出てける様子はなかった。
もうおしまいなのか……
一度もウランのちゃんとした姿も見ていない。
ミシェルと会話すらできていない。
離縁すれば彼女は殿下の愛妾として、ずっと愛される人生を送ることになる。
ウランは一時期だけ僕の子どもになっても、侯爵が自分の孫として引き取ると言っている。
同じ侯爵家だが僕の家はミシェルの父上の侯爵家より力がない。
それに僕は浮気をしているとミシェルに疑われている。
「くそっ!」
同じ屋敷にミシェルがいる。
それだけで幸せなのに会うこともできない。
僕はどうすればいいのか悩んでいた。
このままではミシェルは殿下と結ばれてしまう。
数日後ミシェルは僕に気づかれないようにウランを連れて出かけた。
今日は元生徒会メンバーと会うのだと執事から話を聞いた。
殿下に会うのか…
僕はじっと出来ずにウロウロと屋敷で落ち着かない時間を過ごしていた。
そんな時使用人が走って僕の執務室にやってきた。
「ライアン様、ルシア・モーリス様がお越しです。玄関先でライアン様を出せと騒いでおります」
「はあ?追い返せ!」
「そうしたいのは山々なのですが……ライアン様の子供がお腹にいると騒いでいて無理やり引っ張り出すこともできません」
「僕の子ども?」
そんなわけがない。
彼女とそう言う関係になったことなど一度もない。
だが使用人達は僕を疑いの目で見ている。
学生の時に彼女と仲良くしていたから。
この前の彼女との話し合いでもけっきょく一度は捕まったが数日で釈放された。
もう王都に入ることは禁止されていたはずなのに彼女は何を思ったのかまた僕に会いに来た。
仕方なく玄関に行くと
「ライアン、会いたかったわ。お腹の子供を貴方に見せたかったの」
「僕の子ども?一体何のことを言ってるんだ?」
僕は冷たい目で彼女を睨みつけた。
「もうお父様ったら怒っているわ。ねえ赤ちゃん、大丈夫よ、お父様は本当は優しいのよ」
そう言いながらお腹の子どもを撫でていた。
「君は王都に入ることは禁止命令が出ていたはずだ!すぐに騎士団に引き渡す」
「ひどいわ!わたしは貴方の子供を身籠っているのよ!なのに私を騎士団に引き渡すの?」
僕は「早くこの女を追い出せ!」と言うと、
「あっ!」
と言ってフラフラとなって倒れそうになった。
流石に妊婦だ。
僕は慌てて彼女を倒れないように助けた。
「ライアンって優しいのね」
彼女の仄暗い笑顔にゾクっとした。
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