【完結】愛していました、でも愛されてはいませんでした。

たろ

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第10話

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ウランもハイハイが出来る様になって、誰にでもにこにこして愛想を振り撒くようになった。

みんなに可愛がってもらっている。
おかげでわたしの仕事も順調に進んでいる。

そろそろ王都に戻ることになった。
元生徒会メンバー全員と一度集まりたい。

わたしが始めた工房や店のノウハウをもとにして、仲の良いメンバー達の領地でも、その土地の物産品を市場に売り出していこうと考えている。

なので気が重いが王都へ帰る事になった。

「お父様、ウランとわたし……実家へ帰っても良いですか?」
わたしはお父様にお伺いを立てた。

返ってきた返事は「駄目」だった。

「まだ離縁していないのならライアンの元へ帰れ」と言われた。

ウランのことも話していないし一年以上帰っていないのに今更どんな顔をして帰れというのだろう。

屋敷に帰ったら、ルシア様が居て追い出されるかもしれない。

冷たい目で見られるかもしれない。

使用人達にどんな態度を取られるのか……ウランを守らないといけない。

そんな事を考えたら気が重くなった。

(帰りたくない)

今まで必死に仕事をしてきたのはライアンと離れている理由が必要だったからだ。






うじうじとしていたが、仕方がないのでライアンの屋敷に一年3か月振りに帰る事にした。

「そちらに息子を連れて帰ります」

手紙を送った。

返事は……来なかった。

まあ、ご無沙汰して帰っても来ない妻なんか愛想も尽きているわよね。

ホテルに泊まっても良いかもなんて思ったりもしたが、離縁のこともあるし、とりあえず仕方なく帰る事にした。







その頃、ライアンは……

ミシェルの住んでいる領地に来て、ミシェルがどんな仕事をしているか見て回っていてた。
全く、手紙のこともミシェルが王都に帰ることも知らなかった。






ミシェルが屋敷に着くと、使用人達は驚いた顔をしていた。

家令は「急いで部屋の空気の入れ替えをするので少々お待ちください」
と言ってバタバタとメイドと走り回っていた。

メイド長がやってきて
「奥様、おかえりなさいませ。ライアン様なんですが……」
と、言いにくそうにしていたので

「気にしないで、彼がとわたしは気にならないから」
と、これ以上ライアンの話しは聞きたくないと、話すのをやめさせた。

「ウランをゆっくり寝かせてあげたいの、ソファでいいから毛布をお願いしてもいいかしら?」

生まれて初めての長旅でウランは疲れたのか、さっきまで寝ていて起きたばかりだったはずが、またウトウトと寝始めた。

「奥様、可愛いですね」
ウランを見てメイド長は、愛し気に微笑んでくれた。

その顔を見て緊張していたわたしは、少しホッとした。

「ライアン様の赤ちゃんの頃を思い出します」

メイド長は長年この屋敷に勤めてくれているのでライアンとの付き合いも長い。

「そうね……彼に似ているかもね……」
わたしは少し困った顔をして呟いた。

半年しか暮らしていなかった屋敷は何処かわたしを拒否しているようで落ち着かなかった。

だからなのかウランは高熱を出して寝込む事になった。

すぐにわたしのかかりつけ医を呼んでもらい診てもらうと、喉が赤いので風邪だろうと言われた。

なかなか熱が下がらなかったが、1週間経ちやっと落ち着いた頃ライアンが帰ってきた。

わたしはずっとウランの看病をしていて疲れ切っていた時だった。

疲れと自身の体調の悪さとイライラから、ライアンの姿を見てわたしは抑えられなかった。

「そばに来ないで!この子はわたしだけの息子なの!」
わたしはそう叫ばずにいられなかった。

ライアンは、その時どんな顔をしていたのだろう。

わたしは、自分のことだけで精一杯で、ライアンのことなど気にもしていなかった。

そしてわたしは、ウランと部屋に籠り、ライアンに会うのを拒否した。
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