【完結】愛していました、でも愛されてはいませんでした。

たろ

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第4話  ライアン編

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ミシェルとの婚約は14歳の時だった。

お互い侯爵家の子どもで、両家が協力して仕事をすることも多く、よく顔を合わせることがあって、一緒に遊び仲も良かった。

僕は彼女が大好きで、父親に婚約者にするならミシェルしかいないと頼んでいた。


それなのに、16歳の時にルイズという男爵家の娘が転入してから全てが変わってしまった。

ルシアが転入して来てすぐの頃、父上に執務室に呼ばれた。


「ルシア・モリストという男爵の娘がお前のクラスに転入して来ただろう?」

「はい、それが何か?」

「彼女と出来るだけ仲良くして欲しいんだ」

「どういうことでしょう?」

父上は机に両手を組んでじっと考えこんでいた。

「……お前には婚約者のミシェルがいる。……婚約破棄されない程度にルシアという女の子を見張っていて欲しいんだ」

「………嫌です。ミシェルにきちんと説明して納得してもらってからなら勿論引き受けます。でも婚約破棄されない程度とはどういうことですか?」

「お前がミシェルからルシア嬢に乗り換えたように思わせたいんだ。そしてモリスト男爵を油断させて証拠を見つけないといけない」

「きちんとした説明をお願いします」

父上はテーブルで指を何度もコツコツと叩き俯いてしばらく考え込んだ。

どれくらいの時間が経ったのだろうと思えたが実際は10分程だった。

「……侯爵領の鉱山に男爵の息のかかった者達が数十人紛れ込んでいるんだが……横流しをされている。
普通ならそれを取り締まれば終わるんだが、我が侯爵家から送り出される鉱石は、品質の悪いものばかりになっているんだ。
横流しした品質の良いものを男爵が闇のルートで売り捌いているんだ。
それを組織しているのがプラード公爵なんだ」

父上は溜息を吐いて苦しそうな顔をしていた。

「プラード公爵は、お前を男爵の娘の傀儡にしてルシアと結婚させて我が侯爵家を乗っ取るつもりだ」

「え?」

「裏で色々調べているんだが、そのルシアという子はとても可愛くて男の子達に人気があるらしい。転入して来たのもお前に色仕掛けで迫るつもりなんだ。だから色仕掛けにのって欲しいんだ」

「ミシェルを裏切るなんてできません」

「はっきり言う。別に体の関係にまで、なれとは言わない。だが惚れた振りをして欲しい。ミシェルの家にはこのことは話すつもりはない」

「話してはいけないのですか?」

僕はミシェルに誤解をされるのだけはどうしても嫌だった。

「プラード公爵家が裏で操っているんだ。ミシェルの所のジョーカー侯爵家にまで害が及ぶかもしれない。関わらせるわけにはいかない。何も知らせなければ関わる事もない。最悪被害はうちだけで済む」

「僕はどうしたらいいのですか?」

ミシェル達に害が及ぶかもしれない。

父上のその言葉に僕は決意した。

何があっても自分達だけで終わらせる。

「とりあえずルシアと仲良くなって欲しい。屋敷に遊びに行くようになれば一番いいと思っている。
向こうの動きがわかるし、お前と結婚できるかもしれないと思わせれば油断させられる。油断している隙に証拠を集める。
勿論ミシェルとの婚約破棄だけは絶対しないようにこちらでは動くつもりだ」

「ミシェルの方から言ってきたらどうするんですか?」

「………政略結婚だと言って推し進める、多少は無理強いになるが男爵達を排除するまでは仕方がない。……ただ、ルシアに本気になるな。もし本気になっても結婚はさせない、男爵の思う壺にはならない」

僕がルシアを好きになる?

あり得ないよ。

だってずっと好きなのはミシェル。

やっと婚約出来て、今楽しい学園生活を送っているんだ。

なのに今からはミシェルと仲良く出来ない。

これがどんなに辛いことになるかなんてこの時は深く考えていなかった。
ただミシェルを巻き込まない、それだけだった。











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