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第1話
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わたしは愛されていないのに今夜も彼に抱かれる。
窓から見える月はとても綺麗……
わたしは彼との行為中、彼に目をやる事も出来ずに窓の外を見る。
この人はわたしを愛していない。
本当に愛している人の代わりにわたしを抱くだけ。
行為が終われば彼は溜息を吐き、そのまま部屋を出る。
わたしは裸のまま取り残され惨めな気持ちで、身体を身綺麗にして再びベッドへ戻る。
まだ月はわたしを見ている。
◇ ◇ ◇
わたしと彼は幼馴染だった。
子どもの頃は確かに仲良しだった。
いつも一緒に遊び笑い合っていた。
なのに二人に亀裂が入ったのは、16歳の時だった。学園に入り2年生になった時、彼女が転入生としてやってきた。
栗毛の長いツヤのある髪、くりくりした可愛らしい瞳、誰とでも仲良くなれる明るい性格。
すぐに男の子達の人気者になった。
わたしと彼は14歳の時に婚約した。
お互い好き合っていたと思っていた。
勘違いだったと後で気がついたけど。
でも彼は転入生のルシア様に惹かれていった。
二人が一緒にいる所を何度も見た。
放課後二人で並んで帰る姿を後ろから見つけると、急いで彼らに気づかれないように逃げた。
「ミシェル、また逃げてきたのか?」
「…………少しだけここに居てもいいですか?」
わたしはいつも生徒会室に逃げ込んで、友人でもあるロバート殿下の仕事を手伝うふりをして時間を潰した。
もちろん生徒会室には他にも副会長や書紀、会計の子達も居るのだが、わたしが逃げ込んでくるのが当たり前になっていつもわたし用の仕事を取り置いてくれた。
「ねえ、わたしの仕事を当たり前のように取っておかないで!」
わたしはみんなに文句を言いながらも手伝った。
わたしの安らぎの場所。
「ミシェル、一度ライアンと話し合った方がいいと思うんだ」
殿下がわたしに言うと、会計の女の子も心配してくれて言った。
「わたしもそう思うわ。ライアンはミシェルの事をあんなに好きだったのよ、何かがあってすれ違っているのだと思うわ」
「ありがとう、でも、わたしの勘違いだと思えないの。ルシア様とライアンはどう見ても仲良しだもの」
「確かに二人は少し近すぎると思う。でも理由があるのかもしれないわ」
「わたし達の婚約は両家の親達の仕事も絡んでいるから簡単には破棄も解消も出来ないわ。このまま気持ちが無くなっても結婚するしかないの」
わたしはなんとも言えない顔をしていたと思う。
みんなの前では強がっていたけど、屋敷に帰ると悲しくて辛くてよく泣いていた。
まだライアンを愛していたの。
彼への愛が無くなったのは、卒業パーティーでのことだった。
婚約者同士なのだからパートナーとして出席するはずなのに、彼はわたしを誘う事はなかった。
そしてルシア様と出席すると噂が流れた。
わたしは彼からドレスを贈られる事も無く、自分でドレスを作ることにした。
とても惨めで、二人の姿を見て生徒会室に逃げ込んで一人泣いていた時に、偶々殿下が生徒会室に来た。
「ミシェル、また泣いているのかい?あの噂を聞いてしまったんだね」
「殿下、わたしが彼に何をしたと言うのでしょうか?彼はわたしを見ては、いつも不機嫌になって話すらしないで去っていきます。
いつもルシア様と居て、彼女をそんなに好きなら彼の方から無理やりでも婚約を解消してくれたらいいのに…それはしてくれません。
わたしを笑いものにして彼は満足なのでしょうか……」
殿下は泣いているわたしをそっと抱きしめて頭を撫でてくれた。
そして卒業パーティーでは、彼とルシアの仲の良い二人の姿を見せられた。
わたしのそばには殿下達が居てくれた。
パートナーとしてではなくて、友人として一緒にいてくれた。
生徒会のみんなも一緒にいてくれたので、殿下と変な噂が立つこともなかった。
ライアンはわたしを見ようともしなかった。
わたしも彼から背を向けて、二人の姿を見ることはなかった。
そして卒業して半年後、わたしはライアンの妻になった。
そう、婚姻届に署名しただけの夫婦。
わたしは結婚式を挙げること自体拒否をした。
それでも簡単な挙式は上げさせられたのだが。
ほとんど会話もなく、屋敷の中でも会う事はない。
なのに夜になるとわたしの部屋へ来て何故かわたしを抱く。
子どもを作るのがこの結婚の目的の一つだから、妊娠するまでこの行為は続く。
だから早く妊娠して子どもを産み、わたしは離れに移り住む予定だ。
そうすれば愛するルシア様を愛人として迎えて、二人は幸せに暮らせるだろう。
わたしもこれ以上愛されてもいないのに抱かれなくて済む。
わたしは離れで一人ゆっくり過ごす予定だ。
彼が求めるなら離縁しても構わない。
もう疲れた。
産まれた子どもにはかわいそうだが、愛のない母親に育てられるより夫の愛する愛人が母親で育つ方が子どもも幸せだと思う。
そして今夜も彼がわたしの部屋へきた。
遅い時間だったので完全に寝入っていた。
「ミシェル、愛してる」
わたしは寝ぼけているのかライアンが言うはずのない言葉を耳にした。
わたしは寝ぼけながらも頭の中で考えた。
今の言葉は何?
「……ミシェル」
彼がわたしの名前を優しく呼ぶのは何年振りだろう。
涙が出てしまいそうになりながらわたしは寝たふりをした。
彼はわたしを貪るように抱き、わたしの名前を呼んだ。
「ミシェル、好きだ、愛してる」
彼の甘い優しい声。
普段、わたしに向ける冷たい目。
どちらが本当のライアンなの?
でも聞く事は出来ない。
朝になれば彼はまたわたしを冷たい目で見るのだから。
窓から見える月はとても綺麗……
わたしは彼との行為中、彼に目をやる事も出来ずに窓の外を見る。
この人はわたしを愛していない。
本当に愛している人の代わりにわたしを抱くだけ。
行為が終われば彼は溜息を吐き、そのまま部屋を出る。
わたしは裸のまま取り残され惨めな気持ちで、身体を身綺麗にして再びベッドへ戻る。
まだ月はわたしを見ている。
◇ ◇ ◇
わたしと彼は幼馴染だった。
子どもの頃は確かに仲良しだった。
いつも一緒に遊び笑い合っていた。
なのに二人に亀裂が入ったのは、16歳の時だった。学園に入り2年生になった時、彼女が転入生としてやってきた。
栗毛の長いツヤのある髪、くりくりした可愛らしい瞳、誰とでも仲良くなれる明るい性格。
すぐに男の子達の人気者になった。
わたしと彼は14歳の時に婚約した。
お互い好き合っていたと思っていた。
勘違いだったと後で気がついたけど。
でも彼は転入生のルシア様に惹かれていった。
二人が一緒にいる所を何度も見た。
放課後二人で並んで帰る姿を後ろから見つけると、急いで彼らに気づかれないように逃げた。
「ミシェル、また逃げてきたのか?」
「…………少しだけここに居てもいいですか?」
わたしはいつも生徒会室に逃げ込んで、友人でもあるロバート殿下の仕事を手伝うふりをして時間を潰した。
もちろん生徒会室には他にも副会長や書紀、会計の子達も居るのだが、わたしが逃げ込んでくるのが当たり前になっていつもわたし用の仕事を取り置いてくれた。
「ねえ、わたしの仕事を当たり前のように取っておかないで!」
わたしはみんなに文句を言いながらも手伝った。
わたしの安らぎの場所。
「ミシェル、一度ライアンと話し合った方がいいと思うんだ」
殿下がわたしに言うと、会計の女の子も心配してくれて言った。
「わたしもそう思うわ。ライアンはミシェルの事をあんなに好きだったのよ、何かがあってすれ違っているのだと思うわ」
「ありがとう、でも、わたしの勘違いだと思えないの。ルシア様とライアンはどう見ても仲良しだもの」
「確かに二人は少し近すぎると思う。でも理由があるのかもしれないわ」
「わたし達の婚約は両家の親達の仕事も絡んでいるから簡単には破棄も解消も出来ないわ。このまま気持ちが無くなっても結婚するしかないの」
わたしはなんとも言えない顔をしていたと思う。
みんなの前では強がっていたけど、屋敷に帰ると悲しくて辛くてよく泣いていた。
まだライアンを愛していたの。
彼への愛が無くなったのは、卒業パーティーでのことだった。
婚約者同士なのだからパートナーとして出席するはずなのに、彼はわたしを誘う事はなかった。
そしてルシア様と出席すると噂が流れた。
わたしは彼からドレスを贈られる事も無く、自分でドレスを作ることにした。
とても惨めで、二人の姿を見て生徒会室に逃げ込んで一人泣いていた時に、偶々殿下が生徒会室に来た。
「ミシェル、また泣いているのかい?あの噂を聞いてしまったんだね」
「殿下、わたしが彼に何をしたと言うのでしょうか?彼はわたしを見ては、いつも不機嫌になって話すらしないで去っていきます。
いつもルシア様と居て、彼女をそんなに好きなら彼の方から無理やりでも婚約を解消してくれたらいいのに…それはしてくれません。
わたしを笑いものにして彼は満足なのでしょうか……」
殿下は泣いているわたしをそっと抱きしめて頭を撫でてくれた。
そして卒業パーティーでは、彼とルシアの仲の良い二人の姿を見せられた。
わたしのそばには殿下達が居てくれた。
パートナーとしてではなくて、友人として一緒にいてくれた。
生徒会のみんなも一緒にいてくれたので、殿下と変な噂が立つこともなかった。
ライアンはわたしを見ようともしなかった。
わたしも彼から背を向けて、二人の姿を見ることはなかった。
そして卒業して半年後、わたしはライアンの妻になった。
そう、婚姻届に署名しただけの夫婦。
わたしは結婚式を挙げること自体拒否をした。
それでも簡単な挙式は上げさせられたのだが。
ほとんど会話もなく、屋敷の中でも会う事はない。
なのに夜になるとわたしの部屋へ来て何故かわたしを抱く。
子どもを作るのがこの結婚の目的の一つだから、妊娠するまでこの行為は続く。
だから早く妊娠して子どもを産み、わたしは離れに移り住む予定だ。
そうすれば愛するルシア様を愛人として迎えて、二人は幸せに暮らせるだろう。
わたしもこれ以上愛されてもいないのに抱かれなくて済む。
わたしは離れで一人ゆっくり過ごす予定だ。
彼が求めるなら離縁しても構わない。
もう疲れた。
産まれた子どもにはかわいそうだが、愛のない母親に育てられるより夫の愛する愛人が母親で育つ方が子どもも幸せだと思う。
そして今夜も彼がわたしの部屋へきた。
遅い時間だったので完全に寝入っていた。
「ミシェル、愛してる」
わたしは寝ぼけているのかライアンが言うはずのない言葉を耳にした。
わたしは寝ぼけながらも頭の中で考えた。
今の言葉は何?
「……ミシェル」
彼がわたしの名前を優しく呼ぶのは何年振りだろう。
涙が出てしまいそうになりながらわたしは寝たふりをした。
彼はわたしを貪るように抱き、わたしの名前を呼んだ。
「ミシェル、好きだ、愛してる」
彼の甘い優しい声。
普段、わたしに向ける冷たい目。
どちらが本当のライアンなの?
でも聞く事は出来ない。
朝になれば彼はまたわたしを冷たい目で見るのだから。
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