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もう一つの世界では……⑧
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「お嬢は、今度こそ助ける」
そう決心して先生とエイリヒ様に相談した。
いくら未来を知っていても、変えられないこともある。特にお嬢の命を助けることは俺だけでは絶対にできない。
俺は牢に入れられ大怪我の中死んでしまった。なのに何故いろんな記憶があるのか……
不思議だけどずっとお嬢を見守っていたから……夢の中で……
ずっとずっと悔しい思いをしながら見守ってきた。
俺にとってお嬢は大切な妹のような存在だ。
俺が見習い騎士になった13歳の時、お嬢はまだ6歳だった。
貧乏男爵家の三男なんて将来の夢を見ることすらできない。平民と何が変わるんだって思うくらい貧乏で、腹一杯飯が食えると聞いて、騎士見習いとして公爵家で働き出した。
多少剣の覚えがよく、多少体が大きくて、運動神経もまあまあだったから、騎士団に入ってからも、それなりに先輩達に可愛がってもらえた。おかげで、年が一番近いからとお嬢の護衛騎士の一人として仕えることになった。
もちろんまだ見習いで常に先輩達が一緒にいなければ騎士としては全然使い物にならない。
ただ、母親を失い、父親に見捨てられ、兄貴にも放って置かれ、侍女長達には酷い扱いをされていた6歳のお嬢を騎士団長はとても哀れんで、歳の近い俺をお嬢のそばに置いた。
護衛というよりお守りだった。
妹のいない俺はお嬢が甘えてくるのが照れ臭いけど可愛くて仕方がなかった。
公爵令嬢のくせに周りに気を遣ってすぐに我慢してしまうところも、熱があってもキツイと言わず頑張って授業を受ける姿もほっとけなかった。
俺なら熱があったら喜んでサボるのに。
侍女長から何かにつけて酷い言葉を投げつけられ、折檻されている姿が俺自身耐えられずお嬢の父親である宰相に言いに行った。
あの頃の俺はまだ怖いもの知らずだった。13歳だったから何も考えずにできたのだろう。
お嬢はどんなに酷いことをされても我慢して泣かない。だけど俺に懐き、俺の前だけではいつも泣いていた。
『サイロ、どこにも行かないで』
お嬢が俺に甘えてくるのは完全に俺に依存しているからだ。
殿下の時は死んだように王城に通っていた。心を殺して笑顔もなくなり、ただ必死で王太子妃教育と執務に明け暮れていた。
いつか体が壊れるんじゃないかとそばにいて心配だった。
婚約破棄されて悪女だとか無能だとかお嬢への悪質な噂に俺はいつも腹を立てていた。
『サイロ怒ったら負けよ?放っておけばいいのよ』
あんなに泣き虫だったお嬢が泣かなくなった。強くなった。
セフィル様に恋をした。今まで辛い思いばかりしてきたお嬢にやっと幸せが訪れる。
宰相はいけ好かない奴だし、ほんと人として最低最悪な奴だと思っているが、セフィル様との婚約だけは、褒めてやりたくなった。
これでお嬢がやっと幸せになれる。
俺のお役目もそろそろ終わりだと安心していた。まぁ妹が嫁ぐのは寂しいけど、幸せになってくれるならそれだけで十分だった。
なのにお嬢の発病からの余命宣告。
神様はこの世にはいないんだと本気で思った。
だってなんでお嬢一人がたくさんの辛い思いをしなければいけないんだ?やっと好きな人と幸せになれると思ったのに。
お嬢は元々セフィル様に他に愛する人がいるからと身を引くことを考えていたようだ。
そしてセフィル様に婚約解消を告げた。自分が悪者になって。
好きなら死ぬのを受け入れて婚約解消するよりも、なんとか生きようと抗い、セフィル様と共に生きることを望めばいいのに。
なんで簡単に死ぬことを受け入れるんだ?
勝手に俺たちの前から消えて、勝手に生きることを諦めて、俺が死んだあと結局生きることより死を受け入れてしまったお嬢。
今度こそ生きたいと思って欲しい。
そのために俺はまず、自分が死なないことにした。お嬢は俺に依存してる。それは恋愛ではなく家族愛だ。
家族に見放され一人で生きてきたお嬢にとって俺は兄であり父親なんだと思う。
俺もお嬢に対して仕えているだけでなく、妹として、いやそれ以上に愛情がある。
それを周りは愛しているからだと勘違いされているが、違うんだよな。
お嬢に欲情することはない。ただただ守ってやりたい。本当に大切で愛しているんだ。
セフィル様と幸せになって欲しい。俺はそれを見守ってやりたい。
そんな愛情もあるんだと俺自身も知った。恋愛ではない愛情。家族ではないけど自分の家族よりも大切な人。
お嬢も俺に対して同じだと思う。
俺のことが大好きで愛してやまない。
お互いのこの関係を他人には勘違いされるが、俺も早くに家族から離れて家族との縁が薄い。
お互いが家族のようで、そして兄妹のような関係。そして主従関係でもあり、俺にとって守るべき人。
だから今度こそ助けてみせる。
お嬢を助けるための薬はお嬢が薬を飲んだ後、しばらく経ってから完成した。ただもうお嬢の治療には間に合わなくて三年間眠り続け亡くなった。
先生にはその時の薬の調合した紙は渡している。あとは微調整して薬の配合だけだ。
お嬢が無理さえしなければ助かる。
だから今はあの宰相が関わってこないように王城で軟禁してもらっている。
エイリヒ様がバルン国の元王族で助かった。陛下に口添えしてくれたし、アリーゼ国の国王にも話を通してくれた。
このままあの馬鹿親が大人しくこの国を出ていってくれればいいのだが。
娘の命が残り少なくてもそれに気がつかない親ならもう捨てればいい。
あんな親いなくても、俺や先生、ヨゼフやウエラが代わりに家族になってやる。
お嬢の周りにはあるまだたくさんお嬢を必要としてくれる人がいる。
生きて欲しい。そして今度こそ愛する人と幸せになって欲しい。
そう決心して先生とエイリヒ様に相談した。
いくら未来を知っていても、変えられないこともある。特にお嬢の命を助けることは俺だけでは絶対にできない。
俺は牢に入れられ大怪我の中死んでしまった。なのに何故いろんな記憶があるのか……
不思議だけどずっとお嬢を見守っていたから……夢の中で……
ずっとずっと悔しい思いをしながら見守ってきた。
俺にとってお嬢は大切な妹のような存在だ。
俺が見習い騎士になった13歳の時、お嬢はまだ6歳だった。
貧乏男爵家の三男なんて将来の夢を見ることすらできない。平民と何が変わるんだって思うくらい貧乏で、腹一杯飯が食えると聞いて、騎士見習いとして公爵家で働き出した。
多少剣の覚えがよく、多少体が大きくて、運動神経もまあまあだったから、騎士団に入ってからも、それなりに先輩達に可愛がってもらえた。おかげで、年が一番近いからとお嬢の護衛騎士の一人として仕えることになった。
もちろんまだ見習いで常に先輩達が一緒にいなければ騎士としては全然使い物にならない。
ただ、母親を失い、父親に見捨てられ、兄貴にも放って置かれ、侍女長達には酷い扱いをされていた6歳のお嬢を騎士団長はとても哀れんで、歳の近い俺をお嬢のそばに置いた。
護衛というよりお守りだった。
妹のいない俺はお嬢が甘えてくるのが照れ臭いけど可愛くて仕方がなかった。
公爵令嬢のくせに周りに気を遣ってすぐに我慢してしまうところも、熱があってもキツイと言わず頑張って授業を受ける姿もほっとけなかった。
俺なら熱があったら喜んでサボるのに。
侍女長から何かにつけて酷い言葉を投げつけられ、折檻されている姿が俺自身耐えられずお嬢の父親である宰相に言いに行った。
あの頃の俺はまだ怖いもの知らずだった。13歳だったから何も考えずにできたのだろう。
お嬢はどんなに酷いことをされても我慢して泣かない。だけど俺に懐き、俺の前だけではいつも泣いていた。
『サイロ、どこにも行かないで』
お嬢が俺に甘えてくるのは完全に俺に依存しているからだ。
殿下の時は死んだように王城に通っていた。心を殺して笑顔もなくなり、ただ必死で王太子妃教育と執務に明け暮れていた。
いつか体が壊れるんじゃないかとそばにいて心配だった。
婚約破棄されて悪女だとか無能だとかお嬢への悪質な噂に俺はいつも腹を立てていた。
『サイロ怒ったら負けよ?放っておけばいいのよ』
あんなに泣き虫だったお嬢が泣かなくなった。強くなった。
セフィル様に恋をした。今まで辛い思いばかりしてきたお嬢にやっと幸せが訪れる。
宰相はいけ好かない奴だし、ほんと人として最低最悪な奴だと思っているが、セフィル様との婚約だけは、褒めてやりたくなった。
これでお嬢がやっと幸せになれる。
俺のお役目もそろそろ終わりだと安心していた。まぁ妹が嫁ぐのは寂しいけど、幸せになってくれるならそれだけで十分だった。
なのにお嬢の発病からの余命宣告。
神様はこの世にはいないんだと本気で思った。
だってなんでお嬢一人がたくさんの辛い思いをしなければいけないんだ?やっと好きな人と幸せになれると思ったのに。
お嬢は元々セフィル様に他に愛する人がいるからと身を引くことを考えていたようだ。
そしてセフィル様に婚約解消を告げた。自分が悪者になって。
好きなら死ぬのを受け入れて婚約解消するよりも、なんとか生きようと抗い、セフィル様と共に生きることを望めばいいのに。
なんで簡単に死ぬことを受け入れるんだ?
勝手に俺たちの前から消えて、勝手に生きることを諦めて、俺が死んだあと結局生きることより死を受け入れてしまったお嬢。
今度こそ生きたいと思って欲しい。
そのために俺はまず、自分が死なないことにした。お嬢は俺に依存してる。それは恋愛ではなく家族愛だ。
家族に見放され一人で生きてきたお嬢にとって俺は兄であり父親なんだと思う。
俺もお嬢に対して仕えているだけでなく、妹として、いやそれ以上に愛情がある。
それを周りは愛しているからだと勘違いされているが、違うんだよな。
お嬢に欲情することはない。ただただ守ってやりたい。本当に大切で愛しているんだ。
セフィル様と幸せになって欲しい。俺はそれを見守ってやりたい。
そんな愛情もあるんだと俺自身も知った。恋愛ではない愛情。家族ではないけど自分の家族よりも大切な人。
お嬢も俺に対して同じだと思う。
俺のことが大好きで愛してやまない。
お互いのこの関係を他人には勘違いされるが、俺も早くに家族から離れて家族との縁が薄い。
お互いが家族のようで、そして兄妹のような関係。そして主従関係でもあり、俺にとって守るべき人。
だから今度こそ助けてみせる。
お嬢を助けるための薬はお嬢が薬を飲んだ後、しばらく経ってから完成した。ただもうお嬢の治療には間に合わなくて三年間眠り続け亡くなった。
先生にはその時の薬の調合した紙は渡している。あとは微調整して薬の配合だけだ。
お嬢が無理さえしなければ助かる。
だから今はあの宰相が関わってこないように王城で軟禁してもらっている。
エイリヒ様がバルン国の元王族で助かった。陛下に口添えしてくれたし、アリーゼ国の国王にも話を通してくれた。
このままあの馬鹿親が大人しくこの国を出ていってくれればいいのだが。
娘の命が残り少なくてもそれに気がつかない親ならもう捨てればいい。
あんな親いなくても、俺や先生、ヨゼフやウエラが代わりに家族になってやる。
お嬢の周りにはあるまだたくさんお嬢を必要としてくれる人がいる。
生きて欲しい。そして今度こそ愛する人と幸せになって欲しい。
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