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79話 決断。
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「………ブロア様?」
先生が王城の診療所に着いた時にはブロアは血の気が引いてほぼ息をしていない状態だった。
「失礼するよ」
ブロアの着ていたドレスに鋏を入れ、胸元の布を切っていく。
「な、何をしているんですか?」
周りが止めるのを無視して服を破り、胸の痣を見た。
「薬を飲んだのですね……まだ痣はそこまで大きくなっていなかった………」
ホッとした声が静かな病室に響いた。
「どういう事ですか?」
王城内で働く医師が不思議そうに尋ねた。
「ブロア様の病気は珍しい病気で遺伝でもあります。この痣が大きくなってしまったらもう助けることはできません。
彼女のお母様の時からずっと治療法を探してきました。
いろんな薬を作り少しずつ改良してブロア様に飲んでもらっていました。最近、毒にもなるし特効薬にもなる薬の作り方が書かれた手紙を見つけました。
それは飲めば元気なれるけど、そのあと死を早めてしまうだけの劇薬でした」
先生は静かに眠り続けるブロアを見つめた。
「わたしが研究してきた治療薬とその劇薬を使ってなんとかうまいこと治療薬にならないかと今ずっと作り続けているんです。
なのにブロア様はサイロを助けるために無理して王城へ向かうと言い出した……仕方がないから最後の手段で、元気になる薬を少量だけ渡し、それが切れそうになったらもう一つの薬を飲むように言っておいたんです。しばらくは仮死状態で眠り続けるでしょう………ただ簡単に薬はできません。
悪戦苦闘しております、それに試薬するのはブロア様になります……失敗すればそのままお亡くなりになるかもしれないし、数日持つかもしれないし……あるいは数ヶ月持つかもしれない……もちろん治るかもしれない………賭けなんです、本当は本人に了承を得てから飲ませるつもりでした」
「それは流石に……勝手に飲ませてしまえばあなたの医師としての立場が悪くなるのでは?」
「ブロア様よりも何倍も生きてきました。もう十分生きてきました……最後くらい長年研究してきた薬の成果を見届けてから亡くなるのもいいんじゃないかと思っています………ただサイロの方はどうですか?サイロはずっとブロア様が幼い頃から守り続けてきたんです。助かって欲しいんです」
「サイロはかなりの出血です……せめて輸血ができればいいのですが」
「輸血?この国ではもうそんなに医学が発達しているのですか?」
「ええ、しかし、条件があります。家族のみでしか行いません。それもこの検査薬が同じ色になった人だけなんです」
「サイロの家族ですか……」
サイロのことは詳しくは知らない。
護衛騎士であることくらいしか。
ウエラを急ぎ呼んだ。
「サイロさんのことは詳しくわかりません……ただ……ご兄弟がいることは聞いています……近衛騎士をしていると……この国について来ている騎士ではないと思います。だってもし陛下や宰相様について来ているのならサイロさんに会いに来てもおかしくないと思いますから」
「そうだな……わかった……ちょっと調べてもらおう」
エイリヒを呼んでお願いをすることにした。
「エイリヒ様、たくさんのご迷惑をおかけ致しておりますが、お願いできますか?
それから……我が国の陛下を呼んでくださったのは貴方ですよね?」
「わたしはバルン国の国王陛下に助けを求めたのです。この国に来て好き勝手しているアリーゼ国の宰相を野放しにしているわけにはいきませんからね。陛下がすぐにアリーゼ国の国王に信書を書き、向こうの国の国王が動いてくださったのです」
「そうだったんですね……ありがとうございました……おかげで宰相の暴君の支配からみんな抜け出せます……宰相と陛下は友人でした……陛下も何度となく諌めてはいましたがなかなか変わることはありませんでした。それでも娘を思う気持ちは残っていると期待していたのでしょうが……それに性格はどうあれ仕事だけなら優秀なお人でしたから、簡単に辞めさせることはできなかったのでしょう」
「彼は優秀ではあったかもしれませんがもう心は壊れていて修復不可能でしたね、本来なら早い決断が必要だったでしょう……もう今更ですが」
「わたしはまた別荘へと戻ります。少し時間が稼げたので薬作りをしてまいります。サイロとブロアをお願いします」
先生は何度も頭を下げ帰って行った。
ウエラは二人の看病のため残ることになった。
先生が帰ったあともブロアは静かに眠り続けた。いつ心臓が止まるかわからない。そう見えるが今は薬で眠り続けている。
別の部屋にいるサイロを助けるために医師達は話し合いを始めた。
血のつながりがなくても、検査薬で同じ色になれば輸血できるのでは?と。もともとそういう仮説はあった。しかし何かあった時責任が取れないので誰もしようとしなかった。
このままでは死を待つしかないのなら、試してみる価値があるのでは?
もうこれ以上悩んではいられない。身内がこの国にいないのであればとにかく検査薬が同じ色になった者から血をもらい輸血する決断を下すことになった。
先生が王城の診療所に着いた時にはブロアは血の気が引いてほぼ息をしていない状態だった。
「失礼するよ」
ブロアの着ていたドレスに鋏を入れ、胸元の布を切っていく。
「な、何をしているんですか?」
周りが止めるのを無視して服を破り、胸の痣を見た。
「薬を飲んだのですね……まだ痣はそこまで大きくなっていなかった………」
ホッとした声が静かな病室に響いた。
「どういう事ですか?」
王城内で働く医師が不思議そうに尋ねた。
「ブロア様の病気は珍しい病気で遺伝でもあります。この痣が大きくなってしまったらもう助けることはできません。
彼女のお母様の時からずっと治療法を探してきました。
いろんな薬を作り少しずつ改良してブロア様に飲んでもらっていました。最近、毒にもなるし特効薬にもなる薬の作り方が書かれた手紙を見つけました。
それは飲めば元気なれるけど、そのあと死を早めてしまうだけの劇薬でした」
先生は静かに眠り続けるブロアを見つめた。
「わたしが研究してきた治療薬とその劇薬を使ってなんとかうまいこと治療薬にならないかと今ずっと作り続けているんです。
なのにブロア様はサイロを助けるために無理して王城へ向かうと言い出した……仕方がないから最後の手段で、元気になる薬を少量だけ渡し、それが切れそうになったらもう一つの薬を飲むように言っておいたんです。しばらくは仮死状態で眠り続けるでしょう………ただ簡単に薬はできません。
悪戦苦闘しております、それに試薬するのはブロア様になります……失敗すればそのままお亡くなりになるかもしれないし、数日持つかもしれないし……あるいは数ヶ月持つかもしれない……もちろん治るかもしれない………賭けなんです、本当は本人に了承を得てから飲ませるつもりでした」
「それは流石に……勝手に飲ませてしまえばあなたの医師としての立場が悪くなるのでは?」
「ブロア様よりも何倍も生きてきました。もう十分生きてきました……最後くらい長年研究してきた薬の成果を見届けてから亡くなるのもいいんじゃないかと思っています………ただサイロの方はどうですか?サイロはずっとブロア様が幼い頃から守り続けてきたんです。助かって欲しいんです」
「サイロはかなりの出血です……せめて輸血ができればいいのですが」
「輸血?この国ではもうそんなに医学が発達しているのですか?」
「ええ、しかし、条件があります。家族のみでしか行いません。それもこの検査薬が同じ色になった人だけなんです」
「サイロの家族ですか……」
サイロのことは詳しくは知らない。
護衛騎士であることくらいしか。
ウエラを急ぎ呼んだ。
「サイロさんのことは詳しくわかりません……ただ……ご兄弟がいることは聞いています……近衛騎士をしていると……この国について来ている騎士ではないと思います。だってもし陛下や宰相様について来ているのならサイロさんに会いに来てもおかしくないと思いますから」
「そうだな……わかった……ちょっと調べてもらおう」
エイリヒを呼んでお願いをすることにした。
「エイリヒ様、たくさんのご迷惑をおかけ致しておりますが、お願いできますか?
それから……我が国の陛下を呼んでくださったのは貴方ですよね?」
「わたしはバルン国の国王陛下に助けを求めたのです。この国に来て好き勝手しているアリーゼ国の宰相を野放しにしているわけにはいきませんからね。陛下がすぐにアリーゼ国の国王に信書を書き、向こうの国の国王が動いてくださったのです」
「そうだったんですね……ありがとうございました……おかげで宰相の暴君の支配からみんな抜け出せます……宰相と陛下は友人でした……陛下も何度となく諌めてはいましたがなかなか変わることはありませんでした。それでも娘を思う気持ちは残っていると期待していたのでしょうが……それに性格はどうあれ仕事だけなら優秀なお人でしたから、簡単に辞めさせることはできなかったのでしょう」
「彼は優秀ではあったかもしれませんがもう心は壊れていて修復不可能でしたね、本来なら早い決断が必要だったでしょう……もう今更ですが」
「わたしはまた別荘へと戻ります。少し時間が稼げたので薬作りをしてまいります。サイロとブロアをお願いします」
先生は何度も頭を下げ帰って行った。
ウエラは二人の看病のため残ることになった。
先生が帰ったあともブロアは静かに眠り続けた。いつ心臓が止まるかわからない。そう見えるが今は薬で眠り続けている。
別の部屋にいるサイロを助けるために医師達は話し合いを始めた。
血のつながりがなくても、検査薬で同じ色になれば輸血できるのでは?と。もともとそういう仮説はあった。しかし何かあった時責任が取れないので誰もしようとしなかった。
このままでは死を待つしかないのなら、試してみる価値があるのでは?
もうこれ以上悩んではいられない。身内がこの国にいないのであればとにかく検査薬が同じ色になった者から血をもらい輸血する決断を下すことになった。
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