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74話 わたくしにできること。
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「サイロが盗んだことを認めた?」
絶対にサイロはそんなことはしていない。ネックレスはわたくしに渡す前に持っていただけのはず。そんな簡単なこと、何故みんなわからないの?
どうしてサイロは濡れ衣だとわかっているのに、否定しなかったの?
「それが……閣下が脅したらしいのです」
「脅したとはどう言うことなのかしら?」
「……ウエラをご存知ですよね?」
「わたくしのメイドです」
「ウエラがサイロと一緒に盗んだんだろうと責めて、ウエラに鞭を打ちつけて無理やり罪人にしようとしたんです。
アリーゼ国では貴族の物を盗むのは重罪です。しかもそのネックレスは希少でかなり高価な物です。アリーゼ国に帰れば二人ともどこかの収容所へ入れられ当分は出てこれないでしょう。だからサイロが罪を認めて、ウエラを助けたんです」
「そんな……」
ーーサイロはどうなるの?このままではお父様のいいようにされてしまうわ。
それにウエラを鞭で打つなんて………
二人のことが心配でたまらない……
わたくしを言いなりにするためなのかもしれない。お父様の声が圧がどこからともなく感じて、わたくしの心をどんどん蝕んでくる。
怖い………そう思うと体が動かなくなる。
どうしてそこまで酷いことができるのかしら?悔しい……わたくしの大切な人たちをそんな目に遭わせて……考えるだけでお父様を憎んでしまう。
「今はまだ王城内の牢にいるの?」
「はい……ただサイロは……ウエラの代わりに鞭で打たれていて……」
「先生、お願い……薬を……」
想像するだけで気分が悪くなる。
真っ青になっていたのだろう。
「ブロア様、とりあえず横になってください。薬はすぐに持たせます。この屋敷にいる間暇だったんでいろいろ薬作りしていましたから、大丈夫です」
「ありがとう……」
先生の言葉に感謝するしかなかった。
「あの人は大人気ない……ブロア様を傷つけるのに人を利用するなんて……」
先生が悔しそうに呟いていた。
わたくしはどうするべき?
ベッドでのんびりと死を待つ?アリーゼ国へ帰ってサイロを助ける?
ううん、この国にまだいるのならこの国で助けたほうがいい。サイロが鞭で打たれているならかなりの怪我かもしれない。ウエラだって何度か鞭で打たれているらしい。
二人を助けるのはわたくししかいない。
お父様はわたくしがこの国にいることをわかっているのね。
『出てこい』『言うことを素直に聞け』と言っている気がする。
「先生……薬は?わたくしの薬、まだかしら?」
「……………」
「先生?作ってくださっているはずですよね?」
「……………」
「サイロがこのままでは……殺されるかもしれないわ。あの人はサイロを無実なのに罪人にするつもりなの。…………サイロはずっとわたくしのために働いて守ってくれたの……お父様はそんなサイロが気に入らなかった……だから……見せしめのために……助けに行けるのはわたくしだけなの……アリーゼ国に帰ってから助けるなんて悠長なこと言っていられない。わたくしには時間がないの………お願い!」
「…………薬はできてはいますがまだまだ改良の余地があります……飲むなら……少しだけ……あと少し時間があれば完成するかもしれない……せめてあと数日……だから飲むならほんの少しだけ……それならお渡しします」
「先生……いつもありがとう。わたくしの痣がこれ以上広がらないように薬を作ってくださっているのに、わたくしが無茶ばかりして……自分で寿命を縮めているのもわかってるの……でも、サイロは助けたいの……心残りのまま死にたくない……サイロはわたくしにとって家族よりも家族だと思えるの。大切な人なの……何があっても助けたいの」
「…………あなたは………いや、無自覚なんですね……」
「?」
「サイロとウエラを助けるためとはいえ、薬は少量しか出しません。なので効果は多分動けるくらい…あなた自身辛い状態は変わらないと思います。何とか歩けるくらいにしか回復しません……それでいいですか?わたしはあなたと一緒に王城へついていけない……いざとなったらこの薬をお飲みください」
先生はもう一つ別の薬を手渡した。
「………これは?」
「仮死状態になる薬です……心臓の動きを生きるためだけ少しだけ動きますが死んだように見えます……これは最終手段です……本当はわたしの薬が間に合わなかったら渡すつもりでした……これでギリギリ伸ばすつもりでしたので……」
先生からふたつの薬を渡された。
絶対にサイロはそんなことはしていない。ネックレスはわたくしに渡す前に持っていただけのはず。そんな簡単なこと、何故みんなわからないの?
どうしてサイロは濡れ衣だとわかっているのに、否定しなかったの?
「それが……閣下が脅したらしいのです」
「脅したとはどう言うことなのかしら?」
「……ウエラをご存知ですよね?」
「わたくしのメイドです」
「ウエラがサイロと一緒に盗んだんだろうと責めて、ウエラに鞭を打ちつけて無理やり罪人にしようとしたんです。
アリーゼ国では貴族の物を盗むのは重罪です。しかもそのネックレスは希少でかなり高価な物です。アリーゼ国に帰れば二人ともどこかの収容所へ入れられ当分は出てこれないでしょう。だからサイロが罪を認めて、ウエラを助けたんです」
「そんな……」
ーーサイロはどうなるの?このままではお父様のいいようにされてしまうわ。
それにウエラを鞭で打つなんて………
二人のことが心配でたまらない……
わたくしを言いなりにするためなのかもしれない。お父様の声が圧がどこからともなく感じて、わたくしの心をどんどん蝕んでくる。
怖い………そう思うと体が動かなくなる。
どうしてそこまで酷いことができるのかしら?悔しい……わたくしの大切な人たちをそんな目に遭わせて……考えるだけでお父様を憎んでしまう。
「今はまだ王城内の牢にいるの?」
「はい……ただサイロは……ウエラの代わりに鞭で打たれていて……」
「先生、お願い……薬を……」
想像するだけで気分が悪くなる。
真っ青になっていたのだろう。
「ブロア様、とりあえず横になってください。薬はすぐに持たせます。この屋敷にいる間暇だったんでいろいろ薬作りしていましたから、大丈夫です」
「ありがとう……」
先生の言葉に感謝するしかなかった。
「あの人は大人気ない……ブロア様を傷つけるのに人を利用するなんて……」
先生が悔しそうに呟いていた。
わたくしはどうするべき?
ベッドでのんびりと死を待つ?アリーゼ国へ帰ってサイロを助ける?
ううん、この国にまだいるのならこの国で助けたほうがいい。サイロが鞭で打たれているならかなりの怪我かもしれない。ウエラだって何度か鞭で打たれているらしい。
二人を助けるのはわたくししかいない。
お父様はわたくしがこの国にいることをわかっているのね。
『出てこい』『言うことを素直に聞け』と言っている気がする。
「先生……薬は?わたくしの薬、まだかしら?」
「……………」
「先生?作ってくださっているはずですよね?」
「……………」
「サイロがこのままでは……殺されるかもしれないわ。あの人はサイロを無実なのに罪人にするつもりなの。…………サイロはずっとわたくしのために働いて守ってくれたの……お父様はそんなサイロが気に入らなかった……だから……見せしめのために……助けに行けるのはわたくしだけなの……アリーゼ国に帰ってから助けるなんて悠長なこと言っていられない。わたくしには時間がないの………お願い!」
「…………薬はできてはいますがまだまだ改良の余地があります……飲むなら……少しだけ……あと少し時間があれば完成するかもしれない……せめてあと数日……だから飲むならほんの少しだけ……それならお渡しします」
「先生……いつもありがとう。わたくしの痣がこれ以上広がらないように薬を作ってくださっているのに、わたくしが無茶ばかりして……自分で寿命を縮めているのもわかってるの……でも、サイロは助けたいの……心残りのまま死にたくない……サイロはわたくしにとって家族よりも家族だと思えるの。大切な人なの……何があっても助けたいの」
「…………あなたは………いや、無自覚なんですね……」
「?」
「サイロとウエラを助けるためとはいえ、薬は少量しか出しません。なので効果は多分動けるくらい…あなた自身辛い状態は変わらないと思います。何とか歩けるくらいにしか回復しません……それでいいですか?わたしはあなたと一緒に王城へついていけない……いざとなったらこの薬をお飲みください」
先生はもう一つ別の薬を手渡した。
「………これは?」
「仮死状態になる薬です……心臓の動きを生きるためだけ少しだけ動きますが死んだように見えます……これは最終手段です……本当はわたしの薬が間に合わなかったら渡すつもりでした……これでギリギリ伸ばすつもりでしたので……」
先生からふたつの薬を渡された。
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