71 / 93
71話 セフィル編 13
しおりを挟む
「久しぶりですね」
サイロは牢の中からニヤッと笑った。
ほんの数日牢に入っていただけのはずなのに、顔は腫れ上がり痩せこけていた。
「何故、自分は何もしていないと訴えないんだ?」
「旦那様は俺をブロア様から離したいんだと思います。それにブロア様の言うことしか聞かない俺のことを憎らしいと思ってるみたいだし、俺の話なんてまともに聞こうとはしないですよ」
「まっ、俺も生意気な態度しか取っていないけど」サイロがボソッと呟いた。
「君をここから出したいと思ってる」
「へぇ、俺を出す?あなたにそんなことできるんですか?」
「確かに俺の力だけでは無理だ。宰相は他国とは言え発言力も強く、宰相の意のままになっている。だけど君が無実なら出られるはずだ」
「……俺は無実です…ただ……ルッツが隠していたネックレスをサマンサが取りあげて自分のものにしていたのを、俺が無理やり取り返したので、盗んではいませんが……まぁ、ちょっと?かなり?強引だったかもしれません」
「メイドのウエラから話は聞いているらしい。ここは他国だ。無実なら宰相がなんと言っても出せるはず。ここの国の騎士達とも話し合いをしている、もう少し待っていてくれ」
「ブロア様にはお会いしましたか?今ブロア様は?」
「すまない……まだ会いに行っていない」
「何してんだ?場所ならわかってるんだろう?」
「先に君を助ける。そうしないと会いにはいけない」
「俺は無実なら出られるんだろう?だったらあんたは必要ない。さっさと会いに行ってやってくれ」
「いつもブロアのそばで俺に冷たい視線を送っていた君からそんな言葉を言われるなんて思わなかったよ」
「へぇ~、自覚あったんだ。ブロア様がいるのに他の女とイチャイチャしていたあんたをブロア様の婚約者として認める気持ちはなかったんだ……もちろん今もあんたのことは軽蔑してる。だけど、俺の気持ちは置いといて、今はブロア様のことが大切なんだ……時間がない……」
「ブロアに何があったんだ?」
「………今まで話していないのに……俺からは言えない……本人に会ってからにしてくれ」
サイロはそれ以上何を聞いても返事はなかった。
騎士達と話し合い、サイロのことをどうするか決めかねていた。宰相のご機嫌は悪く、サイロを牢から出せないでいる。
バルン国の騎士達も勝手に牢から出すとアリーゼ国の重鎮である宰相の気分を損ねることになっては困る。
たかが一兵卒でしかない騎士のサイロ。身分は低くバルン国としては助け出さなければいけないとは考えていないようだ。
一方アリーゼ国の騎士達は、ブロア様のためにと、サイロを助け出そうとしている。
しかし、宰相がいつサイロに会いに牢へ行くかわからないので勝手に出すことはできないでいた。
俺は明日また宰相に会う約束を取り付け、宿へと帰って行った。
ブロアがいる別荘へは、明日宰相と会ってから行くことにした。
なんとか明日、宰相にサイロを出してもらえるように話してみるつもりだ。
◆ ◆ ◆
あと少しお付き合いいただけたら嬉しいです。
いいね。エール。感想。
いつもありがとうございます。
最終話まであと少し。
いろんなご意見があると思いますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
サイロは牢の中からニヤッと笑った。
ほんの数日牢に入っていただけのはずなのに、顔は腫れ上がり痩せこけていた。
「何故、自分は何もしていないと訴えないんだ?」
「旦那様は俺をブロア様から離したいんだと思います。それにブロア様の言うことしか聞かない俺のことを憎らしいと思ってるみたいだし、俺の話なんてまともに聞こうとはしないですよ」
「まっ、俺も生意気な態度しか取っていないけど」サイロがボソッと呟いた。
「君をここから出したいと思ってる」
「へぇ、俺を出す?あなたにそんなことできるんですか?」
「確かに俺の力だけでは無理だ。宰相は他国とは言え発言力も強く、宰相の意のままになっている。だけど君が無実なら出られるはずだ」
「……俺は無実です…ただ……ルッツが隠していたネックレスをサマンサが取りあげて自分のものにしていたのを、俺が無理やり取り返したので、盗んではいませんが……まぁ、ちょっと?かなり?強引だったかもしれません」
「メイドのウエラから話は聞いているらしい。ここは他国だ。無実なら宰相がなんと言っても出せるはず。ここの国の騎士達とも話し合いをしている、もう少し待っていてくれ」
「ブロア様にはお会いしましたか?今ブロア様は?」
「すまない……まだ会いに行っていない」
「何してんだ?場所ならわかってるんだろう?」
「先に君を助ける。そうしないと会いにはいけない」
「俺は無実なら出られるんだろう?だったらあんたは必要ない。さっさと会いに行ってやってくれ」
「いつもブロアのそばで俺に冷たい視線を送っていた君からそんな言葉を言われるなんて思わなかったよ」
「へぇ~、自覚あったんだ。ブロア様がいるのに他の女とイチャイチャしていたあんたをブロア様の婚約者として認める気持ちはなかったんだ……もちろん今もあんたのことは軽蔑してる。だけど、俺の気持ちは置いといて、今はブロア様のことが大切なんだ……時間がない……」
「ブロアに何があったんだ?」
「………今まで話していないのに……俺からは言えない……本人に会ってからにしてくれ」
サイロはそれ以上何を聞いても返事はなかった。
騎士達と話し合い、サイロのことをどうするか決めかねていた。宰相のご機嫌は悪く、サイロを牢から出せないでいる。
バルン国の騎士達も勝手に牢から出すとアリーゼ国の重鎮である宰相の気分を損ねることになっては困る。
たかが一兵卒でしかない騎士のサイロ。身分は低くバルン国としては助け出さなければいけないとは考えていないようだ。
一方アリーゼ国の騎士達は、ブロア様のためにと、サイロを助け出そうとしている。
しかし、宰相がいつサイロに会いに牢へ行くかわからないので勝手に出すことはできないでいた。
俺は明日また宰相に会う約束を取り付け、宿へと帰って行った。
ブロアがいる別荘へは、明日宰相と会ってから行くことにした。
なんとか明日、宰相にサイロを出してもらえるように話してみるつもりだ。
◆ ◆ ◆
あと少しお付き合いいただけたら嬉しいです。
いいね。エール。感想。
いつもありがとうございます。
最終話まであと少し。
いろんなご意見があると思いますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
2,909
お気に入りに追加
4,212
あなたにおすすめの小説
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…

婚約者は、今月もお茶会に来ないらしい。
白雪なこ
恋愛
婚約時に両家で決めた、毎月1回の婚約者同士の交流を深める為のお茶会。だけど、私の婚約者は「彼が認めるお茶会日和」にしかやってこない。そして、数ヶ月に一度、参加したかと思えば、無言。短時間で帰り、手紙を置いていく。そんな彼を……許せる?
*6/21続編公開。「幼馴染の王女殿下は私の元婚約者に激おこだったらしい。次期女王を舐めんなよ!ですって。」
*外部サイトにも掲載しています。(1日だけですが総合日間1位)

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。

【完結】あなたの瞳に映るのは
今川みらい
恋愛
命を救える筈の友を、俺は無慈悲に見捨てた。
全てはあなたを手に入れるために。
長年の片想いが、ティアラの婚約破棄をきっかけに動き出す。
★完結保証★
全19話執筆済み。4万字程度です。
前半がティアラside、後半がアイラスsideになります。
表紙画像は作中で登場するサンブリテニアです。

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。
ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。
事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる