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66話 宰相閣下 ⑤
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視察から帰ってきて部屋でくつろいでいてふと思い出した。
「サイロは牢に入ったままなのか?」
部下に聞くと、「はい」と答えた。
もう、アリーゼ国へ向かっているであろうブロア。
「ブロアは?」
「ブロア様はただいま、アリーゼ国へ向けて出発の準備をしております」
「準備?そんなものはどうとでもなるだろう?さっさと馬車に乗せて屋敷へ連れ帰れ!主治医達も連れて帰ったら全員、わたしが帰るまで部屋から出すな!わかったな!」
「はい!かしこまりました」
部下が部屋を出ていく後ろ姿を見送った。
またイライラがおさまらない。
思い出さなければよかった。
「サイロはどこの牢に入っているんだ?」
わたしは視察のためバルン国の王城に泊まっていた。
そのため、サイロがどこに捕えられているのか場所がよくわからない。
「王城内にある騎士団の牢です」
バルン国の護衛騎士が答えた。
「そこに今から行こう」
バルン国の騎士はすぐに案内してくれた。
サイロは牢の中でただじっと座っていた。
わたしを見ても動揺することもなく、許しを乞おうともせず、淡々としていた。その態度にまたイライラする。
他人の物を盗んでおいて反省しないのか。
「サイロ、お前はブロアが姿を消した後も公爵家に残っていたと聞いている。なのに何故この国にいるんだ?ブロアがどこへ行ったか知らないとカイランには答えたと聞いている。それに、ネックレスはルッツが持っていたはず、捕まったルッツはどこにやったか答えようとしない。なのに何故お前が知っているんだ?」
わたしの問いに答えようとしないサイロ。
「サイロの取り調べで何かはいたのか?」
騎士達に尋ねると首を横に振る騎士達。
「……鞭は?」
「使っておりません」
「外に出せ、全て白状するまで鞭を打て!」
「し、しかし……そこまでは……ただ持っていただけならば、ブロア様の物を預かっていただけかもしれませんし……」
「それなら、そう正直に答えればいい。サイロ、さっさと話をしろ!使用人のくせして」
牢から出したサイロは鎖で繋がれ、鞭で打たれた。
声をあげようとしない。
「かせ!もっと強く鞭を打て!」
わたしが鞭を打つ。
それでも何も言わない。
背中には鞭の跡。赤く腫れ上がり血が滲んでいる。
「サイロ、お前はブロアの護衛騎士だ。何故ブロアが去った後も屋敷に残った?何故今頃になってこの国にいる?」
「…………宰相閣下は……ブロア様を見て何も思わなかったのですか?」
「はっ?ブロア?」
やっと口を開いたかと思えば、ブロアを見て?そんなのイラついたとしか思えなかった。
他に何があると言うんだ。
「見えていないんですね……」
「見えていない?ブロアは座って笑っていただろう?よくも婚約解消をすると言って逃げ出し、笑っていられたな、あの娘は!」
「そんな姿にしか見えなかったのですか?」
「お前はいったい何が言いたいのだ?ブロアのネックレスはどこから盗んできた?」
「盗んではおりません。ルッツが隠していたので探し出しただけです。ブロア様がネックレスが欲しいと宰相閣下に聞いたら、勝手にもらっていいと仰ったではないですか。手紙も書いたのを覚えていませんか?」
「ルッツに渡すように言ったあの手紙か?だがルッツはブロアに渡していない。どこにやったか白状していないと聞いている」
「別に隠すことではないので、お答えしますよ」
「さっさと吐けば鞭で打たれることもなかっただろう?」
「サマンサがルッツからもらっていたそうですよ」
「サマンサ?……ああ、あの女か……なんでサマンサ?あれはもう解雇になっているはず」
「そうですね、宰相閣下に捨てられ、ブロア様を虐待して、屋敷を辞めさせられました。そのあとはずっとルッツに囲われていたんですよ。元々ルッツとサマンサも関係を持っていましたからね」
「はっ?サマンサとルッツが?」
周りに騎士達がいることを忘れ、わたしは腕を振り上げ思わずサイロを叩いていた。
今回は不意打ちだった。サイロは一瞬痛みで顔を歪めたが声を出さずに耐えた。
生意気な態度と言葉。
わたしをイライラさせるサイロ。
「サイロは牢に入ったままなのか?」
部下に聞くと、「はい」と答えた。
もう、アリーゼ国へ向かっているであろうブロア。
「ブロアは?」
「ブロア様はただいま、アリーゼ国へ向けて出発の準備をしております」
「準備?そんなものはどうとでもなるだろう?さっさと馬車に乗せて屋敷へ連れ帰れ!主治医達も連れて帰ったら全員、わたしが帰るまで部屋から出すな!わかったな!」
「はい!かしこまりました」
部下が部屋を出ていく後ろ姿を見送った。
またイライラがおさまらない。
思い出さなければよかった。
「サイロはどこの牢に入っているんだ?」
わたしは視察のためバルン国の王城に泊まっていた。
そのため、サイロがどこに捕えられているのか場所がよくわからない。
「王城内にある騎士団の牢です」
バルン国の護衛騎士が答えた。
「そこに今から行こう」
バルン国の騎士はすぐに案内してくれた。
サイロは牢の中でただじっと座っていた。
わたしを見ても動揺することもなく、許しを乞おうともせず、淡々としていた。その態度にまたイライラする。
他人の物を盗んでおいて反省しないのか。
「サイロ、お前はブロアが姿を消した後も公爵家に残っていたと聞いている。なのに何故この国にいるんだ?ブロアがどこへ行ったか知らないとカイランには答えたと聞いている。それに、ネックレスはルッツが持っていたはず、捕まったルッツはどこにやったか答えようとしない。なのに何故お前が知っているんだ?」
わたしの問いに答えようとしないサイロ。
「サイロの取り調べで何かはいたのか?」
騎士達に尋ねると首を横に振る騎士達。
「……鞭は?」
「使っておりません」
「外に出せ、全て白状するまで鞭を打て!」
「し、しかし……そこまでは……ただ持っていただけならば、ブロア様の物を預かっていただけかもしれませんし……」
「それなら、そう正直に答えればいい。サイロ、さっさと話をしろ!使用人のくせして」
牢から出したサイロは鎖で繋がれ、鞭で打たれた。
声をあげようとしない。
「かせ!もっと強く鞭を打て!」
わたしが鞭を打つ。
それでも何も言わない。
背中には鞭の跡。赤く腫れ上がり血が滲んでいる。
「サイロ、お前はブロアの護衛騎士だ。何故ブロアが去った後も屋敷に残った?何故今頃になってこの国にいる?」
「…………宰相閣下は……ブロア様を見て何も思わなかったのですか?」
「はっ?ブロア?」
やっと口を開いたかと思えば、ブロアを見て?そんなのイラついたとしか思えなかった。
他に何があると言うんだ。
「見えていないんですね……」
「見えていない?ブロアは座って笑っていただろう?よくも婚約解消をすると言って逃げ出し、笑っていられたな、あの娘は!」
「そんな姿にしか見えなかったのですか?」
「お前はいったい何が言いたいのだ?ブロアのネックレスはどこから盗んできた?」
「盗んではおりません。ルッツが隠していたので探し出しただけです。ブロア様がネックレスが欲しいと宰相閣下に聞いたら、勝手にもらっていいと仰ったではないですか。手紙も書いたのを覚えていませんか?」
「ルッツに渡すように言ったあの手紙か?だがルッツはブロアに渡していない。どこにやったか白状していないと聞いている」
「別に隠すことではないので、お答えしますよ」
「さっさと吐けば鞭で打たれることもなかっただろう?」
「サマンサがルッツからもらっていたそうですよ」
「サマンサ?……ああ、あの女か……なんでサマンサ?あれはもう解雇になっているはず」
「そうですね、宰相閣下に捨てられ、ブロア様を虐待して、屋敷を辞めさせられました。そのあとはずっとルッツに囲われていたんですよ。元々ルッツとサマンサも関係を持っていましたからね」
「はっ?サマンサとルッツが?」
周りに騎士達がいることを忘れ、わたしは腕を振り上げ思わずサイロを叩いていた。
今回は不意打ちだった。サイロは一瞬痛みで顔を歪めたが声を出さずに耐えた。
生意気な態度と言葉。
わたしをイライラさせるサイロ。
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