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59話 みんなごめんなさい……
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その布から見えたのは……
「これはなんだ?」
お父様が何かを拾った。
「何故サイロが持っている?それはルッツが盗まれたと言っていたネックレスだろう?わたしがジェリーヌに贈ったものだ」
家令のルッツが盗まれたと言った?
あの男はわたくしには渡さないと言っていた。あれは自分のものだと。わたくしには相応しくないと言ったのよ。
「それは……」
サイロが口籠もった。
多分、サイロは屋敷を出る時に何処にあるか探し出したのね。わたくしに渡そうとしないのは……自分の物にしたいからじゃないわ。
わたくしがそのネックレスを見てしまえば……
『生きる』ことを諦めてしまうからかも……海が見たかった。そしてお母様のネックレスを胸に抱きながら死にたかった。その夢を叶えるのはまだ早いと思ってくれたのね……
ふとウエラを見ると真っ青になってガタガタ震えていた。
お父様が怖いのだろう。多分彼女だけは真実を知っているはず。
ウエラにどう声を掛けようかと迷っていた。サイロは何も言わない。このままでは盗人だと思われてしまうわ。
サイロがわたくしを見た。
言葉を発さずに口だけ動かす。
『サマンサが持っていたので返してもらった。本当はいつ渡そうか悩んでいた』
ーーやっぱり。
そして、サイロはわたくしを見て笑った。
「俺は貴方の護衛騎士として過ごせて幸せです」
ーー何馬鹿なことを言ってるの!やめて!
その言葉の後、お父様は
「こいつを捕まえろ!」と叫んだ。
すぐに騎士達がサイロの身体を押さえ込んだ。
わたくしはやっと言葉が出た。
震える唇をなんとか動かした。
「………やめて!サイロはわたくしのためにお母様のネックレスを持ってきてくれたの……家令は嘘しか言わない。あんな男の言うことなんて聞かないで………」
わたくしの言葉はお父様には届かない。怒りで周りが見えていない。
サイロはそのまま近くにいた騎士に捕らえられて、連れて行かれた。
残されたわたくしを見たお父様は冷たく吐き捨てた。
「何をグズグズしているんだ。帰るぞ」
ーー帰る?何処に?
茫然としているわたくしに向かって、また、腕を掴むお父様。
「ほら、立ちなさい!」
わたくしはお父様に腕を掴まれそのまま椅子から転げ落ちた。わたくしがもう歩くことができないなんてこの人は知らない。
ガタッ……
たくさんの人がこちらを見ていた。
シーンと静まり返った周囲。
先程まで楽しい人々の笑い声が聞こえていたのに……
ミリナは何が起きたのかわからず、涙をポロポロ流したと思ったらしゃくり上げて泣いた。
先生は「おやめください!閣下!」とわたくしに近づきお父様から庇うように言った。
「お前はわたしの期待を裏切り、なぜ、ブロアと共に姿を消したんだ?」
先生を巻き込んだのはわたくし。先生の立場が悪くなるのをわかっていて、あの屋敷から逃げるのを手伝ってもらった。
「宰相閣下……先生は悪くないわ。わたくしがお願いしたの……」
「ブロア様は体調が思わしくありません。今の状態で連れ帰るのはやめてください」
「……こんなところで遊んでいると言うのに体調が悪い?ふん!だからなんだ!おい、この娘は体調が悪いらしい。誰かこいつを抱えて馬車に乗せろ!そのままアリーゼ国へ連れ帰れ!」
そう言うと、先生とウエラ、ヨゼフに目を向けて「こいつらも捕まえて縄で縛れ!帰ってから罰を受けさせる」と、吐き捨てた。
わたくしは、騎士に抱きかかえられて馬車に乗せられた。
「ブロアさん!」
泣きながら追いかけてくるミリナ。
強く拳を握って何もできずに固まったままのエイリヒさん。
二人にはとても悪いことをしてしまった。あの二人にまで後々被害がないことを祈るしかない。
ああ、わたくしにもう少し力があれば……
「これはなんだ?」
お父様が何かを拾った。
「何故サイロが持っている?それはルッツが盗まれたと言っていたネックレスだろう?わたしがジェリーヌに贈ったものだ」
家令のルッツが盗まれたと言った?
あの男はわたくしには渡さないと言っていた。あれは自分のものだと。わたくしには相応しくないと言ったのよ。
「それは……」
サイロが口籠もった。
多分、サイロは屋敷を出る時に何処にあるか探し出したのね。わたくしに渡そうとしないのは……自分の物にしたいからじゃないわ。
わたくしがそのネックレスを見てしまえば……
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ふとウエラを見ると真っ青になってガタガタ震えていた。
お父様が怖いのだろう。多分彼女だけは真実を知っているはず。
ウエラにどう声を掛けようかと迷っていた。サイロは何も言わない。このままでは盗人だと思われてしまうわ。
サイロがわたくしを見た。
言葉を発さずに口だけ動かす。
『サマンサが持っていたので返してもらった。本当はいつ渡そうか悩んでいた』
ーーやっぱり。
そして、サイロはわたくしを見て笑った。
「俺は貴方の護衛騎士として過ごせて幸せです」
ーー何馬鹿なことを言ってるの!やめて!
その言葉の後、お父様は
「こいつを捕まえろ!」と叫んだ。
すぐに騎士達がサイロの身体を押さえ込んだ。
わたくしはやっと言葉が出た。
震える唇をなんとか動かした。
「………やめて!サイロはわたくしのためにお母様のネックレスを持ってきてくれたの……家令は嘘しか言わない。あんな男の言うことなんて聞かないで………」
わたくしの言葉はお父様には届かない。怒りで周りが見えていない。
サイロはそのまま近くにいた騎士に捕らえられて、連れて行かれた。
残されたわたくしを見たお父様は冷たく吐き捨てた。
「何をグズグズしているんだ。帰るぞ」
ーー帰る?何処に?
茫然としているわたくしに向かって、また、腕を掴むお父様。
「ほら、立ちなさい!」
わたくしはお父様に腕を掴まれそのまま椅子から転げ落ちた。わたくしがもう歩くことができないなんてこの人は知らない。
ガタッ……
たくさんの人がこちらを見ていた。
シーンと静まり返った周囲。
先程まで楽しい人々の笑い声が聞こえていたのに……
ミリナは何が起きたのかわからず、涙をポロポロ流したと思ったらしゃくり上げて泣いた。
先生は「おやめください!閣下!」とわたくしに近づきお父様から庇うように言った。
「お前はわたしの期待を裏切り、なぜ、ブロアと共に姿を消したんだ?」
先生を巻き込んだのはわたくし。先生の立場が悪くなるのをわかっていて、あの屋敷から逃げるのを手伝ってもらった。
「宰相閣下……先生は悪くないわ。わたくしがお願いしたの……」
「ブロア様は体調が思わしくありません。今の状態で連れ帰るのはやめてください」
「……こんなところで遊んでいると言うのに体調が悪い?ふん!だからなんだ!おい、この娘は体調が悪いらしい。誰かこいつを抱えて馬車に乗せろ!そのままアリーゼ国へ連れ帰れ!」
そう言うと、先生とウエラ、ヨゼフに目を向けて「こいつらも捕まえて縄で縛れ!帰ってから罰を受けさせる」と、吐き捨てた。
わたくしは、騎士に抱きかかえられて馬車に乗せられた。
「ブロアさん!」
泣きながら追いかけてくるミリナ。
強く拳を握って何もできずに固まったままのエイリヒさん。
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ああ、わたくしにもう少し力があれば……
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