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57話 どうしてなの?
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一瞬だった。頬の痛みはもちろん、今もズキズキとする。だけど口の中が切れて血の味がする。
わたくしの肩をまた掴み、睨みながらわたくしを見下ろす……
「宰相閣下……」
「お前はまだそんな言い方しかできないのか!」
たくさんの人が行き交う賑やかな屋台の通路。足を止めてジロジロと見ている人達。
お父様の近くには、顔見知りの官僚が数人、少し離れた場所に居た。
ふふ、こんな時も冷静に周りを見れるなんて……お父様は怒りのため、真っ赤になりわたくしを掴んだまま、体がプルプルと震えていた。
どれだけお怒りなのかしら?
わたくしを探して回っていたわけではないわね。
官僚達と共にアリーゼ国から、バルン国に視察に来ているのね。
わたくしって運がいいのかしら?
思わずクスッと笑ってしまった。
さらに手に力が入って、わたくしの肩は痛みが走る。
でも、わたくしの体はもう痛みなんてどうでもいいところまで来ている。先生の薬がなければこんな風に観光なんて出来ていない。無理やり薬で体調を良くしているだけ。
痛みすらさほど辛く感じない。
でも熱いお茶を飲むのは辛いかもね。
「何を笑っているんだ?お前はわかっているのか?セフィルとの婚約解消を告げ、いつの間にか屋敷から消えた。それも家令のルッツがお前を刺して大きな事件に巻き込まれた我が公爵家が今なんと言われているのかわかっているのか?それに、王太子殿下は廃嫡された」
わたくしが刺されたことを心配はしないのね?わかってはいたけど……
公爵家の名誉や名声にしか興味がない人。自分の地位が少しでも脅かされることを嫌うこの人は、わたくしのことを娘とすら思っていないのだろう。
王太子から婚約を破棄され、やっと新しく出来たセフィルと婚約を解消しようとするわたくし。さらに公爵家の内情が表沙汰になり、この人はわたくしが憎くてたまらないのだろう。
王太子殿下の廃嫡もわたくしのせいなのかしら?
わたくしは返事をすることなくお父様を見つめた。
「アリーゼ国はしばらく混乱が続く。新しい王太子殿下が発表されたが、まだまだ仕事に慣れていない。わたし達がお支えしなければならない。お前はアリーゼ国に混乱を招いた張本人だと言う自覚はないのか?」
「……わたくしが?」
思わず小さな声で呟いた。
その言葉を耳にしたお父様はカッとなった。
「自覚すらないのか!」
肩から手を離し、手をまた振り上げた。
「おやめください」
サイロがお父様の手を掴んだ。
「サイロ!お前が何故ここにいる?お前は屋敷にいたはずだ」
「退職願いを出しました」
「………手を離せ!」
「ブロア様を叩くのはおやめください!」
「お前は誰に命令しているのかわかっているのか!!」
「サイロ、いいの。手を離しなさい」
これ以上お父様の怒りをサイロへ向けてはいけない。サイロが捕らえられてしまう。
周りにいた官僚の他に両国の騎士達も護衛として少し離れた場所でわたくし達を見ている。中には知った顔の騎士もいる。
わたくしが簡単に捕らえられることはないだろう。だけどサイロはただの騎士。それも今はどこにも所属していないただの外国人でしかない。
「しかし……手を離せばブロア様が!」
「ええい、手を離せ!」
お父様は乱暴にサイロの手を振り払うと、何も出来ないサイロに乱暴に「退け」と言って体ごと押しのけた。
サイロは抵抗することができずにお父様にされるがままテーブルにぶつかり転んだ。
その時………サイロのポケットから布が落ちた………
その布から見えたのは……
「これはなんだ?」
お父様が拾ったのは……
わたくしの肩をまた掴み、睨みながらわたくしを見下ろす……
「宰相閣下……」
「お前はまだそんな言い方しかできないのか!」
たくさんの人が行き交う賑やかな屋台の通路。足を止めてジロジロと見ている人達。
お父様の近くには、顔見知りの官僚が数人、少し離れた場所に居た。
ふふ、こんな時も冷静に周りを見れるなんて……お父様は怒りのため、真っ赤になりわたくしを掴んだまま、体がプルプルと震えていた。
どれだけお怒りなのかしら?
わたくしを探して回っていたわけではないわね。
官僚達と共にアリーゼ国から、バルン国に視察に来ているのね。
わたくしって運がいいのかしら?
思わずクスッと笑ってしまった。
さらに手に力が入って、わたくしの肩は痛みが走る。
でも、わたくしの体はもう痛みなんてどうでもいいところまで来ている。先生の薬がなければこんな風に観光なんて出来ていない。無理やり薬で体調を良くしているだけ。
痛みすらさほど辛く感じない。
でも熱いお茶を飲むのは辛いかもね。
「何を笑っているんだ?お前はわかっているのか?セフィルとの婚約解消を告げ、いつの間にか屋敷から消えた。それも家令のルッツがお前を刺して大きな事件に巻き込まれた我が公爵家が今なんと言われているのかわかっているのか?それに、王太子殿下は廃嫡された」
わたくしが刺されたことを心配はしないのね?わかってはいたけど……
公爵家の名誉や名声にしか興味がない人。自分の地位が少しでも脅かされることを嫌うこの人は、わたくしのことを娘とすら思っていないのだろう。
王太子から婚約を破棄され、やっと新しく出来たセフィルと婚約を解消しようとするわたくし。さらに公爵家の内情が表沙汰になり、この人はわたくしが憎くてたまらないのだろう。
王太子殿下の廃嫡もわたくしのせいなのかしら?
わたくしは返事をすることなくお父様を見つめた。
「アリーゼ国はしばらく混乱が続く。新しい王太子殿下が発表されたが、まだまだ仕事に慣れていない。わたし達がお支えしなければならない。お前はアリーゼ国に混乱を招いた張本人だと言う自覚はないのか?」
「……わたくしが?」
思わず小さな声で呟いた。
その言葉を耳にしたお父様はカッとなった。
「自覚すらないのか!」
肩から手を離し、手をまた振り上げた。
「おやめください」
サイロがお父様の手を掴んだ。
「サイロ!お前が何故ここにいる?お前は屋敷にいたはずだ」
「退職願いを出しました」
「………手を離せ!」
「ブロア様を叩くのはおやめください!」
「お前は誰に命令しているのかわかっているのか!!」
「サイロ、いいの。手を離しなさい」
これ以上お父様の怒りをサイロへ向けてはいけない。サイロが捕らえられてしまう。
周りにいた官僚の他に両国の騎士達も護衛として少し離れた場所でわたくし達を見ている。中には知った顔の騎士もいる。
わたくしが簡単に捕らえられることはないだろう。だけどサイロはただの騎士。それも今はどこにも所属していないただの外国人でしかない。
「しかし……手を離せばブロア様が!」
「ええい、手を離せ!」
お父様は乱暴にサイロの手を振り払うと、何も出来ないサイロに乱暴に「退け」と言って体ごと押しのけた。
サイロは抵抗することができずにお父様にされるがままテーブルにぶつかり転んだ。
その時………サイロのポケットから布が落ちた………
その布から見えたのは……
「これはなんだ?」
お父様が拾ったのは……
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