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54話 とても会いたかった……
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ミリナの屋敷では穏やかな時間が流れていた。
車椅子に乗ってだけど散歩はとても楽しい。砂浜も楽しいけど歩きやすく舗装された海岸をゆっくり散歩するのも楽しい。
もう一人で歩くことはできないけど海を近くに感じて過ごせる日々に感謝しながら生きている。
「先生……わたくし……そろそろこの場所から離れて、最後の場所を探したいの」
「最後の?」
「ええ、ミリナたちにお世話になっているのはとても感謝しているの。でも、わたくしが死んでしまう姿を彼女に見せたくないの。今の元気な姿を覚えていて欲しいわ」
「元気って……十分体調悪そうだが…」
先生が苦笑しながらも考え込んだ。
「この国には全く知り合いもいない……少し考えさせてくれ」
「先生、ごめんなさい。また我儘を言ってしまって。どこか宿に泊まりましょう。そして人を雇ってお世話をしてくれる人を探して欲しいの」
もうあまり時間がない。ちゃんと話せて笑っていられる今ここを出ないと……
先生に負担をかけてしまうことはわかってる。でもだからと言ってここにずっとは居られない。
旅に出るために持っていた宝石を売った。お金ならまだ十分に残ってる。
わたくしが亡くなっても、先生たちに迷惑料が払えるくらいに。
窓から見える海。この部屋で死んでいくのも素敵。だけど、まだ子供のミリナにわたくしの死に行く姿だけは見せられない。
「ブロアさん!お話ししましょう!」
元気なミリナが笑顔で入ってくる。
どんなに体調が悪くてもミリナが部屋にやってくるとわたくしまで笑顔になる。
こんな可愛い妹がいたら毎日が楽しかっただろう。
あと少しだけ、幸せな気持ちでいさせてもらおう。つい欲が出てしまう。
もういつ死んでもいいと思っているはずなのに。
ミリナの家は商売人。
エイリヒさんにはお世話になっているので、きちんとお金を支払っている。
「お金なんて要りません」
そう言われて「それではここでお世話になるわけにはいきません」と出て行こうとした。
全く見も知らないわたくしにそこまでしてくださることに、感謝はしているけど、図々しくここにいることはできない。
「ブロア様……あなたが王太子殿下の婚約者だった頃、私達はあなたに助けられたのです」
そう言って、話してくれた。
わたくしがした仕事。当たり前のことを淡々とこなしていた。それがこうして人のために、国のために役立っていた。
そのことが嬉しかった。だからこそエイリヒさん達に甘えさせてもらいここにまだいる。
でもそれもそろそろ終わらせなきゃ。ミリナの笑顔を守りたい。笑顔のままお別れしたい。
ミリナと話をしていたら先生が慌てて部屋に入って来た。
「先生、どうしました?いつも冷静な先生が?」
キョトンとしたわたくしとミリナ。
「サイロとウエラが訪ねて来ました」
「えっ?」
言葉の意味はわかっているのに、信じられなくて………固まってしまった。
ミリナは「誰?」と、先生に聞いていた。
「お嬢!」
「ブロア様!」
二人の声が………
ーーどうしてここがわかったの?
わかるわけがない。それに、やっとわたくしから解放されて二人の立場も良くなったはずなのに……
「ブロア様、二人はここまでやって来たんですよ」
「…………ええ」
声が出ない。…………会いたかった。
もう会うことはないと……ずっと考えないようにしていた二人。
あの屋敷でわたくしのことを人として接してくれた人たち。
二人がいたから壊れなかった。二人がいたから息をすることができた。
それくらい大事な二人。だから離れたのに……
何故?どうしてわたくしを追いかけて来てくれたの?
「ブロア様……」
扉から飛び込んできたウエラはわたくしの姿を見るなり一目散に抱きついて来た。
「ブロア様……会いたかったです」
わんわん泣き出したウエラ。
「ウエラ……なんだかボロボロじゃない」
苦笑してしまう。
髪の毛も乱れているし、服もヨレヨレ。
多分……急いでここまで来たんだろう。
顔もなんだか汚れてる……
かなり疲れ切って見える。
頭をよしよしと撫でてあげると、
「ブロア様……もっと」
と、子供のようなことを言い出した。
「はいはい」
ウエラが満足するまで頭を撫でた。
サイロは黙って立ったまま、わたくし達を見つめていた。
そのサイロも、かなり服も汚れて何日もゆっくり寝ていなかったのだろう。目の下にはクマが出来ていた。
「サイロ……お疲れ様」
「お嬢……こそ、生きていてくれてよかった……」
「ミリナ……お願いがあるの……二人にシャワーとお食事。それと休めるお部屋を用意してもらえるかしら?」
「もちろんです!うちは部屋だけはたくさんありますから!二人はブロアさんにとって大切な人たちなんですね?」
「ええ………とても………とても………大切な二人なの……」
二人がシャワーを浴びて、新しい服に着替えてスッキリした姿を見せたのは数時間後。
車椅子に乗ってだけど散歩はとても楽しい。砂浜も楽しいけど歩きやすく舗装された海岸をゆっくり散歩するのも楽しい。
もう一人で歩くことはできないけど海を近くに感じて過ごせる日々に感謝しながら生きている。
「先生……わたくし……そろそろこの場所から離れて、最後の場所を探したいの」
「最後の?」
「ええ、ミリナたちにお世話になっているのはとても感謝しているの。でも、わたくしが死んでしまう姿を彼女に見せたくないの。今の元気な姿を覚えていて欲しいわ」
「元気って……十分体調悪そうだが…」
先生が苦笑しながらも考え込んだ。
「この国には全く知り合いもいない……少し考えさせてくれ」
「先生、ごめんなさい。また我儘を言ってしまって。どこか宿に泊まりましょう。そして人を雇ってお世話をしてくれる人を探して欲しいの」
もうあまり時間がない。ちゃんと話せて笑っていられる今ここを出ないと……
先生に負担をかけてしまうことはわかってる。でもだからと言ってここにずっとは居られない。
旅に出るために持っていた宝石を売った。お金ならまだ十分に残ってる。
わたくしが亡くなっても、先生たちに迷惑料が払えるくらいに。
窓から見える海。この部屋で死んでいくのも素敵。だけど、まだ子供のミリナにわたくしの死に行く姿だけは見せられない。
「ブロアさん!お話ししましょう!」
元気なミリナが笑顔で入ってくる。
どんなに体調が悪くてもミリナが部屋にやってくるとわたくしまで笑顔になる。
こんな可愛い妹がいたら毎日が楽しかっただろう。
あと少しだけ、幸せな気持ちでいさせてもらおう。つい欲が出てしまう。
もういつ死んでもいいと思っているはずなのに。
ミリナの家は商売人。
エイリヒさんにはお世話になっているので、きちんとお金を支払っている。
「お金なんて要りません」
そう言われて「それではここでお世話になるわけにはいきません」と出て行こうとした。
全く見も知らないわたくしにそこまでしてくださることに、感謝はしているけど、図々しくここにいることはできない。
「ブロア様……あなたが王太子殿下の婚約者だった頃、私達はあなたに助けられたのです」
そう言って、話してくれた。
わたくしがした仕事。当たり前のことを淡々とこなしていた。それがこうして人のために、国のために役立っていた。
そのことが嬉しかった。だからこそエイリヒさん達に甘えさせてもらいここにまだいる。
でもそれもそろそろ終わらせなきゃ。ミリナの笑顔を守りたい。笑顔のままお別れしたい。
ミリナと話をしていたら先生が慌てて部屋に入って来た。
「先生、どうしました?いつも冷静な先生が?」
キョトンとしたわたくしとミリナ。
「サイロとウエラが訪ねて来ました」
「えっ?」
言葉の意味はわかっているのに、信じられなくて………固まってしまった。
ミリナは「誰?」と、先生に聞いていた。
「お嬢!」
「ブロア様!」
二人の声が………
ーーどうしてここがわかったの?
わかるわけがない。それに、やっとわたくしから解放されて二人の立場も良くなったはずなのに……
「ブロア様、二人はここまでやって来たんですよ」
「…………ええ」
声が出ない。…………会いたかった。
もう会うことはないと……ずっと考えないようにしていた二人。
あの屋敷でわたくしのことを人として接してくれた人たち。
二人がいたから壊れなかった。二人がいたから息をすることができた。
それくらい大事な二人。だから離れたのに……
何故?どうしてわたくしを追いかけて来てくれたの?
「ブロア様……」
扉から飛び込んできたウエラはわたくしの姿を見るなり一目散に抱きついて来た。
「ブロア様……会いたかったです」
わんわん泣き出したウエラ。
「ウエラ……なんだかボロボロじゃない」
苦笑してしまう。
髪の毛も乱れているし、服もヨレヨレ。
多分……急いでここまで来たんだろう。
顔もなんだか汚れてる……
かなり疲れ切って見える。
頭をよしよしと撫でてあげると、
「ブロア様……もっと」
と、子供のようなことを言い出した。
「はいはい」
ウエラが満足するまで頭を撫でた。
サイロは黙って立ったまま、わたくし達を見つめていた。
そのサイロも、かなり服も汚れて何日もゆっくり寝ていなかったのだろう。目の下にはクマが出来ていた。
「サイロ……お疲れ様」
「お嬢……こそ、生きていてくれてよかった……」
「ミリナ……お願いがあるの……二人にシャワーとお食事。それと休めるお部屋を用意してもらえるかしら?」
「もちろんです!うちは部屋だけはたくさんありますから!二人はブロアさんにとって大切な人たちなんですね?」
「ええ………とても………とても………大切な二人なの……」
二人がシャワーを浴びて、新しい服に着替えてスッキリした姿を見せたのは数時間後。
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