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51話 王太子である僕。
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「父上、何故なんですか?」
突然父上に廃嫡を言い渡された。
「お前はいずれこの国の王になるために勉強に励み、努力を重ねた。そう言いたいのか?」
「もちろんです。僕は努力をしてきました。ブロアとの婚約破棄のせいで僕に回ってくる大量の仕事もきちんとこなしてきました。なのに、なぜ?」
「大量の仕事?お前に回している仕事など、王族がこなさなければいけない仕事のうちの十分の一にしかすぎない量だ。それくらいしかこなせないお前が意見する立場ではない」
「十分の一?あれで?」
「さらに言えば、お前の妻であるロザンナ妃は子育てが大変だからとまともに仕事もできないでいるだろう。お茶会やパーティーでの社交だけして、執務もまともに出来ない妃など不必要だ」
なんで今頃になって父上はこんなことを言い出したんだ。
「ですが、廃嫡なんて……この国の王子は僕一人です。僕が廃嫡になればこの国が困るんです。ロザンナだって慣れない子育てを頑張ってくれています。
僕はブロアのことは諦めていません。僕とロザンナでは足りないところを補うためにブロアを連れ帰ろうとしたんです。何故父上はブロアと僕が接近出来ないように禁止令など出したんですか?
ブロアが側妃にさえなればこの国は安定します。そして僕を廃嫡などしないで済むはずなんです」
「お前は……なんて愚かなことを……自分で言っていて恥ずかしいとは思わないのか?他力本願でこの国を守るのか?王としてこの国を守ることが、お前にはどれだけ大変かわかっていない」
「わかっているからこそブロアが必要なんです。黙って仕事を完璧にこなせる女。文句ひとつ言わない、利用できる駒を僕のそばに置くことで僕の価値は上がる。僕が愛する妻であるロザンナ。仕事をこなせる優秀な側妃。二人がいてくれれば僕は安泰なんですよ」
「よくもそんなことを………ブロアが無能だと言い続けたのはお前だろう?そんなブロアが今更優秀だと?お前がブロアに対しての評価を下げ、無能、悪女と知らしめたのだろう」
「それは…王太子である僕より婚約者が優秀なんて醜聞でしかありません。ですから少しだけ……その…噂を流しただけです。でも失って初めて気がついたんです。ブロアは排除するべきではなかった。僕のそばに置いてこそ彼女の価値は上がるんです」
「もういい、誰かこいつを摘み出せ!もうお前は息子ではない。この王城には二度と足を踏み入れるな!」
「僕はあなたの唯一の息子ですよ?」
俺は騎士達が外に連れ出そうとするのを抵抗した。
「父上!お願いです!もう一度お考え直しください!」
「この数年、わたしはお前にチャンスを与えた。
『ブロアとの婚約破棄、ロザンナとの結婚、お前は人生の節目で大きな決断をした。これからのそなたの行動がどれだけ大事か、今一度考えて行動せよ』
わたしの言葉を忘れたのか?」
「……そんなこと言われましたか?」
ーーそんなこと覚えてなんかいない。
ーー目の前にいる鬱陶しいだけのブロアを排除できた。愛する女を妃にできた。可愛い子供も産まれた。
僕は必死でここ数年努力をした。
「父上!僕は努力をしました!」
「………お前はこの国を背負うだけの力をつけられたと思っているのか?努力をしたと思っているのか?官僚達にフォローしてもらってなんとか執務をこなしていただけだろう?
それも疲れたとすぐサボり周りに仕事をさせてばかりいた。
大切な決断をお前に任せて仕舞えばこの国は終わってしまう。もう次の王太子になる者の準備は出来上がった。お飾りの王太子はいらなくなったんだ」
床に座り込んでいた僕に父上は冷たい目で見下ろしていた。
「お疲れ様。お前の息子はわたしにとっても可愛い孫。だが、いずれその王族の血が揉め事を引き起こさないとも限らない。禍根を残さないように、孫には次の子孫が生まれることがないよう処置をしている。
そしてお前と孫の王位継承権を剥奪した。これからは平民として親子三人楽しく暮らしなさい。生きて行くための衣食住は整えてある。お前が一生働かなくても平民として暮らせるようにしておいた」
「平民?公爵か侯爵の爵位くらいはいただけるのでは?」
ーー僕が平民?そんな……………
「お前に貴族位を?そんな価値がどこにある?」
父上はこれ以上話すことはないと、部屋から僕を引き摺り出した。
親子三人、目隠しをされ馬車に無理やり乗せられた。
そこは………
突然父上に廃嫡を言い渡された。
「お前はいずれこの国の王になるために勉強に励み、努力を重ねた。そう言いたいのか?」
「もちろんです。僕は努力をしてきました。ブロアとの婚約破棄のせいで僕に回ってくる大量の仕事もきちんとこなしてきました。なのに、なぜ?」
「大量の仕事?お前に回している仕事など、王族がこなさなければいけない仕事のうちの十分の一にしかすぎない量だ。それくらいしかこなせないお前が意見する立場ではない」
「十分の一?あれで?」
「さらに言えば、お前の妻であるロザンナ妃は子育てが大変だからとまともに仕事もできないでいるだろう。お茶会やパーティーでの社交だけして、執務もまともに出来ない妃など不必要だ」
なんで今頃になって父上はこんなことを言い出したんだ。
「ですが、廃嫡なんて……この国の王子は僕一人です。僕が廃嫡になればこの国が困るんです。ロザンナだって慣れない子育てを頑張ってくれています。
僕はブロアのことは諦めていません。僕とロザンナでは足りないところを補うためにブロアを連れ帰ろうとしたんです。何故父上はブロアと僕が接近出来ないように禁止令など出したんですか?
ブロアが側妃にさえなればこの国は安定します。そして僕を廃嫡などしないで済むはずなんです」
「お前は……なんて愚かなことを……自分で言っていて恥ずかしいとは思わないのか?他力本願でこの国を守るのか?王としてこの国を守ることが、お前にはどれだけ大変かわかっていない」
「わかっているからこそブロアが必要なんです。黙って仕事を完璧にこなせる女。文句ひとつ言わない、利用できる駒を僕のそばに置くことで僕の価値は上がる。僕が愛する妻であるロザンナ。仕事をこなせる優秀な側妃。二人がいてくれれば僕は安泰なんですよ」
「よくもそんなことを………ブロアが無能だと言い続けたのはお前だろう?そんなブロアが今更優秀だと?お前がブロアに対しての評価を下げ、無能、悪女と知らしめたのだろう」
「それは…王太子である僕より婚約者が優秀なんて醜聞でしかありません。ですから少しだけ……その…噂を流しただけです。でも失って初めて気がついたんです。ブロアは排除するべきではなかった。僕のそばに置いてこそ彼女の価値は上がるんです」
「もういい、誰かこいつを摘み出せ!もうお前は息子ではない。この王城には二度と足を踏み入れるな!」
「僕はあなたの唯一の息子ですよ?」
俺は騎士達が外に連れ出そうとするのを抵抗した。
「父上!お願いです!もう一度お考え直しください!」
「この数年、わたしはお前にチャンスを与えた。
『ブロアとの婚約破棄、ロザンナとの結婚、お前は人生の節目で大きな決断をした。これからのそなたの行動がどれだけ大事か、今一度考えて行動せよ』
わたしの言葉を忘れたのか?」
「……そんなこと言われましたか?」
ーーそんなこと覚えてなんかいない。
ーー目の前にいる鬱陶しいだけのブロアを排除できた。愛する女を妃にできた。可愛い子供も産まれた。
僕は必死でここ数年努力をした。
「父上!僕は努力をしました!」
「………お前はこの国を背負うだけの力をつけられたと思っているのか?努力をしたと思っているのか?官僚達にフォローしてもらってなんとか執務をこなしていただけだろう?
それも疲れたとすぐサボり周りに仕事をさせてばかりいた。
大切な決断をお前に任せて仕舞えばこの国は終わってしまう。もう次の王太子になる者の準備は出来上がった。お飾りの王太子はいらなくなったんだ」
床に座り込んでいた僕に父上は冷たい目で見下ろしていた。
「お疲れ様。お前の息子はわたしにとっても可愛い孫。だが、いずれその王族の血が揉め事を引き起こさないとも限らない。禍根を残さないように、孫には次の子孫が生まれることがないよう処置をしている。
そしてお前と孫の王位継承権を剥奪した。これからは平民として親子三人楽しく暮らしなさい。生きて行くための衣食住は整えてある。お前が一生働かなくても平民として暮らせるようにしておいた」
「平民?公爵か侯爵の爵位くらいはいただけるのでは?」
ーー僕が平民?そんな……………
「お前に貴族位を?そんな価値がどこにある?」
父上はこれ以上話すことはないと、部屋から僕を引き摺り出した。
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そこは………
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