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48話 サイロ編 ②
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俺は夜中にこっそりと家令が暮らしていた部屋に忍び込んだ。
ネックレスはまだ見つかっていない。家令もどこにやったか白状していない。取り調べは家令の今までの罪を暴き出すことに気を取られ、ネックレスのことは多分忘れ去られている。
ブロア様を刺して逃亡するもすぐに捕まっている。だからまだ家令の部屋に残されているかもしれない。
そう思いこれまでも夜中にこっそりと忍び込み音を立てないように探し回った。
「ふっ……まるで泥棒だな。見つかったらそれこそ捕まるかな?」
だけどチャンスはこれがもう最後になる。何度となく探したが見つけられなかった。でももう一度だけ……すぐに見つかる場所に隠すわけがない。
ーー俺ならどこに?あの、抜け目のない家令ならどこに隠す?
逃げてもまた取りに来られる場所……
家令の女?
それは……旦那様の愛人だった侍女のサマンサ。クビになって今は街外れの小さな家で暮らしていると聞いた。
俺は早朝、ウエラと公爵家をこっそりと出た。
少し離れた場所に馬車を用意しておいた。
そして乗り込むとすぐにサマンサの家に向かいう。早朝だからとサマンサに遠慮もせずに家の玄関を叩いた。
「こんな早い時間に…あなた達失礼だと思わないの?」
不機嫌なサマンサに俺は脅かすように言った。
「サマンサさんは家令のルッツと、実はいい関係なんですよね?」
「な、何が?」
「ここにももうすぐ手が回りあなたを捕まえにくると思います」
「わたしは関係ないわ」
「調べればすぐにわかるでしょう?あなたがルッツと今までやってきたこと。かなりのお金を隠し持っているんでしょう?奥様の宝石もいつの間にかあなたのものになっていますよね?」
「し、知らないわ。わたしは何にも知らないの」
「俺があなたについて知っていることを警備隊員に話したらどうなるでしょうね?あなたも牢屋入りですかね?それとも全財産没収?それが嫌なら奥様の大切にされていたネックレスを渡してもらいたい」
「はっ?あれはわたしのものよ!ジェリーヌ様が付けていた時、どうしても欲しかった。やっと手に入れたの」
「あなたは……旦那様の愛人だった、そしてルッツの恋人……屋敷を追われて小さな家で暮らしているというのに、部屋の中は豪華な家具や食器、絵画まで……捕まれば全て没収されるでしょうね」
「これは全てわたしのものなの!うるさい!出て行きなさい!」
「ネックレスを渡せ」
俺はサマンサの首に剣を近づけ脅した。
ウエラは「サ、サイロさん……」驚き止めようとしたが俺は首を振った。
「殺せるわけないわよ!け、警備隊を呼ぶわよ!」
「呼べばいい、後ろ暗いあんたが呼べるなら。人のものを盗んでおいて盗まれたなんて言えるのか?ほら、早くネックレスを出せ。他のものなんて要らない。ネックレスだけはブロア様に返せ」
「い、嫌よ!あれはわたしのものよ!やっと手に入れたの。色仕掛けでルッツを落して貢がせたのよ。好きでもない男に抱かれたご褒美なんだから!」
「はっ?何言ってるんだ、おばさんのくせに!あんたなんか抱きたいと思うのはヨボヨボのジジイたちだけだろう!」
「よ、よくも……そんな酷いこと言えるわね?剣を人の首に突き立てて!犯罪よ!」
「別にあんたを殺すのなんか屁でもないんだが……ネックレスを渡さないならあんたに用はない。すぐに警備隊に引き渡すしかない」
「ボロボロにされて一生泣き続ければいい」
「ボロボロにされる………?」
「あんた知らないのか?あんたみたいな罪を犯した女は収容所で男たちの慰み者になるか娼館で娼婦として一生働いて賠償金を払い続けるかしかないんだ」
「ネ…ネッ…クレス……を返せば見逃してくれるの?」
「ああ、もちろんさ。さっさと渡してくれ」
「わかったわ」やっと素直になったサマンサは奥の部屋からネックレスを持ってきた。
俺はそのネックレスを受け取ると、さっさとこの家を出た。
その後一時間後には王立騎士団の騎士たちがサマンサを捕らえに来るだろう。
俺はずっとブロア様の護衛騎士として王城に通った。
執務をこなすブロア様は俺がずっとそばに居ると仕事が集中出来なくなると言って、日中俺は仕事がなくなる。仕方ないので騎士団と一緒に鍛錬をしたり手合わせをしたりして過ごした。おかげで、王立騎士団の騎士たちの何人かと親しくなった。
その知人の一人にサマンサの今までやってきたことを書き記した手紙を、この家に入る前に、届けてもらえるようにと新聞配達の青年に頼んでおいた。
サマンサも逃げ出したいだろうが、何も持たずすぐには逃げ出さないだろう。
一時間後には騎士たちがサマンサを捕まえるだろう。その情けない姿を見て嘲笑ってやりたかった。
ブロア様は人の罪をすぐに許してしまう。だが俺だったら……死んだ方がいいと思うくらい徹底して罪を暴き出して、もう明るい時間は、普通に外を歩けないようにしてやる。
石を投げつけられればいいのに。死ぬほど辛い目に遭えばいい。
ネックレスはまだ見つかっていない。家令もどこにやったか白状していない。取り調べは家令の今までの罪を暴き出すことに気を取られ、ネックレスのことは多分忘れ去られている。
ブロア様を刺して逃亡するもすぐに捕まっている。だからまだ家令の部屋に残されているかもしれない。
そう思いこれまでも夜中にこっそりと忍び込み音を立てないように探し回った。
「ふっ……まるで泥棒だな。見つかったらそれこそ捕まるかな?」
だけどチャンスはこれがもう最後になる。何度となく探したが見つけられなかった。でももう一度だけ……すぐに見つかる場所に隠すわけがない。
ーー俺ならどこに?あの、抜け目のない家令ならどこに隠す?
逃げてもまた取りに来られる場所……
家令の女?
それは……旦那様の愛人だった侍女のサマンサ。クビになって今は街外れの小さな家で暮らしていると聞いた。
俺は早朝、ウエラと公爵家をこっそりと出た。
少し離れた場所に馬車を用意しておいた。
そして乗り込むとすぐにサマンサの家に向かいう。早朝だからとサマンサに遠慮もせずに家の玄関を叩いた。
「こんな早い時間に…あなた達失礼だと思わないの?」
不機嫌なサマンサに俺は脅かすように言った。
「サマンサさんは家令のルッツと、実はいい関係なんですよね?」
「な、何が?」
「ここにももうすぐ手が回りあなたを捕まえにくると思います」
「わたしは関係ないわ」
「調べればすぐにわかるでしょう?あなたがルッツと今までやってきたこと。かなりのお金を隠し持っているんでしょう?奥様の宝石もいつの間にかあなたのものになっていますよね?」
「し、知らないわ。わたしは何にも知らないの」
「俺があなたについて知っていることを警備隊員に話したらどうなるでしょうね?あなたも牢屋入りですかね?それとも全財産没収?それが嫌なら奥様の大切にされていたネックレスを渡してもらいたい」
「はっ?あれはわたしのものよ!ジェリーヌ様が付けていた時、どうしても欲しかった。やっと手に入れたの」
「あなたは……旦那様の愛人だった、そしてルッツの恋人……屋敷を追われて小さな家で暮らしているというのに、部屋の中は豪華な家具や食器、絵画まで……捕まれば全て没収されるでしょうね」
「これは全てわたしのものなの!うるさい!出て行きなさい!」
「ネックレスを渡せ」
俺はサマンサの首に剣を近づけ脅した。
ウエラは「サ、サイロさん……」驚き止めようとしたが俺は首を振った。
「殺せるわけないわよ!け、警備隊を呼ぶわよ!」
「呼べばいい、後ろ暗いあんたが呼べるなら。人のものを盗んでおいて盗まれたなんて言えるのか?ほら、早くネックレスを出せ。他のものなんて要らない。ネックレスだけはブロア様に返せ」
「い、嫌よ!あれはわたしのものよ!やっと手に入れたの。色仕掛けでルッツを落して貢がせたのよ。好きでもない男に抱かれたご褒美なんだから!」
「はっ?何言ってるんだ、おばさんのくせに!あんたなんか抱きたいと思うのはヨボヨボのジジイたちだけだろう!」
「よ、よくも……そんな酷いこと言えるわね?剣を人の首に突き立てて!犯罪よ!」
「別にあんたを殺すのなんか屁でもないんだが……ネックレスを渡さないならあんたに用はない。すぐに警備隊に引き渡すしかない」
「ボロボロにされて一生泣き続ければいい」
「ボロボロにされる………?」
「あんた知らないのか?あんたみたいな罪を犯した女は収容所で男たちの慰み者になるか娼館で娼婦として一生働いて賠償金を払い続けるかしかないんだ」
「ネ…ネッ…クレス……を返せば見逃してくれるの?」
「ああ、もちろんさ。さっさと渡してくれ」
「わかったわ」やっと素直になったサマンサは奥の部屋からネックレスを持ってきた。
俺はそのネックレスを受け取ると、さっさとこの家を出た。
その後一時間後には王立騎士団の騎士たちがサマンサを捕らえに来るだろう。
俺はずっとブロア様の護衛騎士として王城に通った。
執務をこなすブロア様は俺がずっとそばに居ると仕事が集中出来なくなると言って、日中俺は仕事がなくなる。仕方ないので騎士団と一緒に鍛錬をしたり手合わせをしたりして過ごした。おかげで、王立騎士団の騎士たちの何人かと親しくなった。
その知人の一人にサマンサの今までやってきたことを書き記した手紙を、この家に入る前に、届けてもらえるようにと新聞配達の青年に頼んでおいた。
サマンサも逃げ出したいだろうが、何も持たずすぐには逃げ出さないだろう。
一時間後には騎士たちがサマンサを捕まえるだろう。その情けない姿を見て嘲笑ってやりたかった。
ブロア様は人の罪をすぐに許してしまう。だが俺だったら……死んだ方がいいと思うくらい徹底して罪を暴き出して、もう明るい時間は、普通に外を歩けないようにしてやる。
石を投げつけられればいいのに。死ぬほど辛い目に遭えばいい。
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