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35話 何故ここに?
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「何故あなたがここにいらっしゃるのですか?」
「きみが王城に現れたからだよ」
「それはお父様にお話があったからですわ。あなたには関係のないことです。それにどうしてここがわかったの?」
「君のことを調べてもらったら刺されて屋敷を出たと聞いてね。調べれば簡単にわかったよ」
ーーわたくしの死のことも気づいているの?
「君に早く怪我を治してもらいたいんだ」
「はっ?わたくしの怪我がどうなろうと関係ないでしょう?」
ーーわたくしの姿を見て元気になれと言っているの?どう見てもまだ体調が良くないことはわかるだろうに。
「あるよ!君のせいで僕は仕事をさせられて困っているんだ」
ーーまだそんなことを考えているの?この人は……馬鹿なのかしら?
「そんなのもう随分前からでしょう?何年経ったと思っているのですか?」
「何年?ずっと仕事ばかりさせられて君を連れ戻そうとしたら宰相に止められてずっと連れ戻せなかったんだ。やっと仕事にも慣れて時間を作ることが出来たんだ。君を連れ戻すいいチャンスだと思ったんだ」
ーーこの男はまだそんな馬鹿なことを言っているの?やっぱり馬鹿だわ。
ーー影はわたくしの病気のことを殿下に話さなかったのね。話せば諦めるはずなのに……ううん、この人ならわたくしが死ぬまで笑いながら仕事をさせるかしら?
わたくしは影の存在を探した。
わたくしに常についていた影は二人。交代で常に見張られていた。普段何も言わず何もしない。ただ見ているだけの人。
だけどわたくしが婚約破棄される時、何故か二人は助けてくれた。
婚約破棄をわたくしが有利に出来る証拠を渡してくれたし、後々わたくしが困らないようにわたくしが知っている王族の悪行の証拠を渡してくれた。
彼らに優しさがあって?違うわね。やはり……国王陛下はわたくしが婚約破棄されようと酷い噂がたとうと何も言われなかった。息子のしでかしたことに目をつぶった。
ただ静観されていた。それはわたくしの行動を見ていたのではなく、王太子殿下のことを見ていたのね。
多分一度だけチャンスを与えたのね。やり直しの……彼がこの国の国王としてこの国を背負い導けるのか。
わたくしを捨てて、それでもなお精進してこの国を背負うだけの力を蓄えてきた?
ーー多分周りからの助力頼りだったと思わ。
ロザンナ王太子妃殿下と共に担えるのか。
ーー無理だわ。妃殿下は噂でしか聞いてはいないけどあまり成績も良くなく、見目だけが可愛らしいお方だと聞いているわ。
だから、わたくしを無理矢理でも側妃にと言ったのだもの。お二人とも楽して生きようと思っていたのよね。全ての執務をわたくしに回していかにも自分達が仕事をしているように見せるつもりだったのよね。
この病気にならなくてもわたくしは側妃になっていれば命は短かったでしょうね。
こき使われるだけこき使われて、体がボロボロになるまで働かされて捨てられた気がするわ。
「なんで返事をしない。君は結局悪い噂が出回っていまだに結婚もできていない。婚約者には他に最愛の人がいるんだろう?この前君と出会ってから色々と調べたんだ。君はやはり僕のそばに居るべきだと思う。だから迎えにきたんだ。今は君がどこに居るか誰も知らない。だからこのまま王城に連れ帰り君の怪我を治してあげるよ、そして誰にも知られず僕のそばにいてほしい」
「結構ですわ。わたくしはわたくしのために生きるのです。貴方とはもう違う道を歩いております。わたくしに関わらないでいただきたいですわ」
「さっきも言ったよね?君がいてくれなければ僕の負担はずっと続くんだ。僕が間違っていたよ。君を正妃にしてロザンナを愛妾にすればよかった。お腹に子供ができたと聞いてついロザンナを選んでしまった。それが失敗だった」
「貴方はロザンナ様を愛していらっしゃったのでしょう?そう仰っていたではないですか?」
「若気の至りだ。愛などで政務は行えない、やはり優秀な人間が一人はいてくれなければ滞ってしまう。僕はね、常にこの国のトップでいたいんだよ。そのためには君のような使える駒が必要なんだ」
殿下はわたくしの首に手をかけた。
「ははっ、僕でも君の首を一捻りして殺せそうだね?死にたくなければ僕についてこい、君は一生僕のために生きるんだ。まあ、女としてたまには抱いてやるよ。ロザンナだけじゃ最近飽きてきたからね」
わたくしの首に顔を近づけてきて、わたくしの首を舐めた。
全身が鳥肌で気持ちが悪い。
「わたくしは今動ける状態ではありませんの。傷が治らないのですわ。それよりもこのことは陛下はご存知なのでしょうか?以前も申しましたが貴方の影はずっとあなたのことを見ておりますわよ?」
「影が何を出来ると言うんだ?見ているだけだ。お前にはもう影はいない。だからお前はもう影に助けられることはないんだ」
ーーこの人はやはり馬鹿なのだろう。
「きみが王城に現れたからだよ」
「それはお父様にお話があったからですわ。あなたには関係のないことです。それにどうしてここがわかったの?」
「君のことを調べてもらったら刺されて屋敷を出たと聞いてね。調べれば簡単にわかったよ」
ーーわたくしの死のことも気づいているの?
「君に早く怪我を治してもらいたいんだ」
「はっ?わたくしの怪我がどうなろうと関係ないでしょう?」
ーーわたくしの姿を見て元気になれと言っているの?どう見てもまだ体調が良くないことはわかるだろうに。
「あるよ!君のせいで僕は仕事をさせられて困っているんだ」
ーーまだそんなことを考えているの?この人は……馬鹿なのかしら?
「そんなのもう随分前からでしょう?何年経ったと思っているのですか?」
「何年?ずっと仕事ばかりさせられて君を連れ戻そうとしたら宰相に止められてずっと連れ戻せなかったんだ。やっと仕事にも慣れて時間を作ることが出来たんだ。君を連れ戻すいいチャンスだと思ったんだ」
ーーこの男はまだそんな馬鹿なことを言っているの?やっぱり馬鹿だわ。
ーー影はわたくしの病気のことを殿下に話さなかったのね。話せば諦めるはずなのに……ううん、この人ならわたくしが死ぬまで笑いながら仕事をさせるかしら?
わたくしは影の存在を探した。
わたくしに常についていた影は二人。交代で常に見張られていた。普段何も言わず何もしない。ただ見ているだけの人。
だけどわたくしが婚約破棄される時、何故か二人は助けてくれた。
婚約破棄をわたくしが有利に出来る証拠を渡してくれたし、後々わたくしが困らないようにわたくしが知っている王族の悪行の証拠を渡してくれた。
彼らに優しさがあって?違うわね。やはり……国王陛下はわたくしが婚約破棄されようと酷い噂がたとうと何も言われなかった。息子のしでかしたことに目をつぶった。
ただ静観されていた。それはわたくしの行動を見ていたのではなく、王太子殿下のことを見ていたのね。
多分一度だけチャンスを与えたのね。やり直しの……彼がこの国の国王としてこの国を背負い導けるのか。
わたくしを捨てて、それでもなお精進してこの国を背負うだけの力を蓄えてきた?
ーー多分周りからの助力頼りだったと思わ。
ロザンナ王太子妃殿下と共に担えるのか。
ーー無理だわ。妃殿下は噂でしか聞いてはいないけどあまり成績も良くなく、見目だけが可愛らしいお方だと聞いているわ。
だから、わたくしを無理矢理でも側妃にと言ったのだもの。お二人とも楽して生きようと思っていたのよね。全ての執務をわたくしに回していかにも自分達が仕事をしているように見せるつもりだったのよね。
この病気にならなくてもわたくしは側妃になっていれば命は短かったでしょうね。
こき使われるだけこき使われて、体がボロボロになるまで働かされて捨てられた気がするわ。
「なんで返事をしない。君は結局悪い噂が出回っていまだに結婚もできていない。婚約者には他に最愛の人がいるんだろう?この前君と出会ってから色々と調べたんだ。君はやはり僕のそばに居るべきだと思う。だから迎えにきたんだ。今は君がどこに居るか誰も知らない。だからこのまま王城に連れ帰り君の怪我を治してあげるよ、そして誰にも知られず僕のそばにいてほしい」
「結構ですわ。わたくしはわたくしのために生きるのです。貴方とはもう違う道を歩いております。わたくしに関わらないでいただきたいですわ」
「さっきも言ったよね?君がいてくれなければ僕の負担はずっと続くんだ。僕が間違っていたよ。君を正妃にしてロザンナを愛妾にすればよかった。お腹に子供ができたと聞いてついロザンナを選んでしまった。それが失敗だった」
「貴方はロザンナ様を愛していらっしゃったのでしょう?そう仰っていたではないですか?」
「若気の至りだ。愛などで政務は行えない、やはり優秀な人間が一人はいてくれなければ滞ってしまう。僕はね、常にこの国のトップでいたいんだよ。そのためには君のような使える駒が必要なんだ」
殿下はわたくしの首に手をかけた。
「ははっ、僕でも君の首を一捻りして殺せそうだね?死にたくなければ僕についてこい、君は一生僕のために生きるんだ。まあ、女としてたまには抱いてやるよ。ロザンナだけじゃ最近飽きてきたからね」
わたくしの首に顔を近づけてきて、わたくしの首を舐めた。
全身が鳥肌で気持ちが悪い。
「わたくしは今動ける状態ではありませんの。傷が治らないのですわ。それよりもこのことは陛下はご存知なのでしょうか?以前も申しましたが貴方の影はずっとあなたのことを見ておりますわよ?」
「影が何を出来ると言うんだ?見ているだけだ。お前にはもう影はいない。だからお前はもう影に助けられることはないんだ」
ーーこの人はやはり馬鹿なのだろう。
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