32 / 93
32話 セフィル編 5 ブロアの手紙
しおりを挟む
ブロアにまた恋をした。
幼い頃の淡い初顔を拗らせながらも、王太子殿下の婚約者として過ごすブロアを遠くから見つめることしかできなかった。
いつかはそんな恋心もなくなるだろう。いつかは誰かと実家の伯爵家のためにどこかの誰かと政略結婚をするしかないだろう。
そう思いながらも騎士を目指し騎士になり遠くから見守っていたのに、婚約破棄され悪い噂を流されながらも否定もせずに過ごすブロアが気になっていた。
そんな時、またブロアと再会した。それもブロアが酔っ払いの男に襲われそうになった。
元々細い体がさらに細くなって、少しでも触れれば折れてしまいそうだった。俺が守ってやりたい。
だけど、年下で伯爵の次男でしかない俺では釣り合わない。
わかっているのにいつも目が彼女を探していた。
そんな時、騎士団の剣術の大会で3位になった。団長達は強すぎて参加しない大会とはいえそれなりに大きな大会で、高位貴族達の騎士団から声をかけられる者も多い。中には団長として声をかけられたり、令嬢との婚約の打診を受ける者もいてみんな張り切って大会に臨む。
俺はもちろんブロアのシャトワ公爵に目が留まればいいとわずかな期待はあった。
俺はブロアを守りたくて騎士になりたかった。その夢が叶うかもしれないと、毎回思いながら大会に出ていた。
そして、シャトワ公爵の目に留まった。それもブロアの婚約者として。
夢だと思った。現実ではないと。
だって年下で爵位も下で次男で、俺が婚約できるなんて無理な話だった。
だけど噂でしかない醜聞のせいでブロアの婚約の話は上手くいっていなかったらしい。
本人も婚約に対して意欲的ではないし、男性の方も尻込みして話がまとまらないで終わっていたと聞いた。
俺は父上にすぐに快諾するように言った。
月に一回の顔合わせの時、どんなことを話せばいいのか分からずつい無口になってしまう。だけど彼女は俺が話しやすいようにと騎士団のことや剣術のことを聞いてくれる。
そんな優しさもまた好感が持ててさらに好きになる。
リリアンナのことはずっと父上達にこれ以上は自分は力になれないと言い続けていた。妹のように思ってはいても、彼女からの好意を感じているだけに俺には受け入れられないのだからあまり彼女に会いに行くのはよくない。
醜聞になるし、ブロアの耳に入り気にするかもしれない。
なのに父上も母上も軽く考えていた。
リリアンナは俺が顔を出せば機嫌が良くなる。だからうちの両親に泣きついた。両親もリリアンナのことは娘のように可愛がっているのでなかなか無碍にできなかった。
そしてやっとリリアンナのことも片がついたと思っていたら婚約解消を言われ俺は焦った。
毎日のようにブロアに会いに行くのに追い返されて、やっと会えると思ったらブロアはいない。それも傷を負っていなくなっている。
手紙の内容は……
婚約解消のための書類は弁護士に渡してある。あとは俺のサインを書けば成立するとのこと。違約金のことやお詫びの言葉が書かれていた。
そして探さないでほしい。愛するリリアンナと幸せになってほしいと書かれていた。
「なんで……俺はリリアンナのことなんて愛していない。愛しているのはずっとずっとブロアだけなのに……」
手紙を読んだ俺はブロアの手紙を捨てることもできずに握りしめた。
サイロが……
「やっぱりあなたはお嬢を愛していたんですね?」
「当たり前だ。ずっとずっと忘れられなくて諦められなくて、愛さずにいられない。大切な人なんだ」
幼い頃の淡い初顔を拗らせながらも、王太子殿下の婚約者として過ごすブロアを遠くから見つめることしかできなかった。
いつかはそんな恋心もなくなるだろう。いつかは誰かと実家の伯爵家のためにどこかの誰かと政略結婚をするしかないだろう。
そう思いながらも騎士を目指し騎士になり遠くから見守っていたのに、婚約破棄され悪い噂を流されながらも否定もせずに過ごすブロアが気になっていた。
そんな時、またブロアと再会した。それもブロアが酔っ払いの男に襲われそうになった。
元々細い体がさらに細くなって、少しでも触れれば折れてしまいそうだった。俺が守ってやりたい。
だけど、年下で伯爵の次男でしかない俺では釣り合わない。
わかっているのにいつも目が彼女を探していた。
そんな時、騎士団の剣術の大会で3位になった。団長達は強すぎて参加しない大会とはいえそれなりに大きな大会で、高位貴族達の騎士団から声をかけられる者も多い。中には団長として声をかけられたり、令嬢との婚約の打診を受ける者もいてみんな張り切って大会に臨む。
俺はもちろんブロアのシャトワ公爵に目が留まればいいとわずかな期待はあった。
俺はブロアを守りたくて騎士になりたかった。その夢が叶うかもしれないと、毎回思いながら大会に出ていた。
そして、シャトワ公爵の目に留まった。それもブロアの婚約者として。
夢だと思った。現実ではないと。
だって年下で爵位も下で次男で、俺が婚約できるなんて無理な話だった。
だけど噂でしかない醜聞のせいでブロアの婚約の話は上手くいっていなかったらしい。
本人も婚約に対して意欲的ではないし、男性の方も尻込みして話がまとまらないで終わっていたと聞いた。
俺は父上にすぐに快諾するように言った。
月に一回の顔合わせの時、どんなことを話せばいいのか分からずつい無口になってしまう。だけど彼女は俺が話しやすいようにと騎士団のことや剣術のことを聞いてくれる。
そんな優しさもまた好感が持ててさらに好きになる。
リリアンナのことはずっと父上達にこれ以上は自分は力になれないと言い続けていた。妹のように思ってはいても、彼女からの好意を感じているだけに俺には受け入れられないのだからあまり彼女に会いに行くのはよくない。
醜聞になるし、ブロアの耳に入り気にするかもしれない。
なのに父上も母上も軽く考えていた。
リリアンナは俺が顔を出せば機嫌が良くなる。だからうちの両親に泣きついた。両親もリリアンナのことは娘のように可愛がっているのでなかなか無碍にできなかった。
そしてやっとリリアンナのことも片がついたと思っていたら婚約解消を言われ俺は焦った。
毎日のようにブロアに会いに行くのに追い返されて、やっと会えると思ったらブロアはいない。それも傷を負っていなくなっている。
手紙の内容は……
婚約解消のための書類は弁護士に渡してある。あとは俺のサインを書けば成立するとのこと。違約金のことやお詫びの言葉が書かれていた。
そして探さないでほしい。愛するリリアンナと幸せになってほしいと書かれていた。
「なんで……俺はリリアンナのことなんて愛していない。愛しているのはずっとずっとブロアだけなのに……」
手紙を読んだ俺はブロアの手紙を捨てることもできずに握りしめた。
サイロが……
「やっぱりあなたはお嬢を愛していたんですね?」
「当たり前だ。ずっとずっと忘れられなくて諦められなくて、愛さずにいられない。大切な人なんだ」
345
お気に入りに追加
4,212
あなたにおすすめの小説

冷遇する婚約者に、冷たさをそのままお返しします。
ねむたん
恋愛
貴族の娘、ミーシャは婚約者ヴィクターの冷酷な仕打ちによって自信と感情を失い、無感情な仮面を被ることで自分を守るようになった。エステラ家の屋敷と庭園の中で静かに過ごす彼女の心には、怒りも悲しみも埋もれたまま、何も感じない日々が続いていた。
事なかれ主義の両親の影響で、エステラ家の警備はガバガバですw

手放したくない理由
ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。
しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。
話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、
「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」
と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。
同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。
大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
婚約者を想うのをやめました
かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。
「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」
最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。
*書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる